英国の TV 会社 ITV 社が制作して、「Agatha Christie’s Poirot」の第59話(第11シリーズ)として、2008年9月21日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「鳩のなかの猫(Cat Among the Pigeons)」(1959年)の TV ドラマ版について、引き続き、原作との差異点を列挙する。
メドウバンク校(Meadow School)の室内競技場(Sports Pavilion)内において、体育教師のグレイス・スプリンガー(Grace Springer)が殺害されたことに伴い、多くの父兄が、自分達の娘達をメドウバンク校から連れ出し始め、学校の評判が大きく傷付けられる。
生徒が少なくなった学校の外で、庭師のアダム・グッドマン(Adam Goodman - 本当は、英国政府の公安課に所属)とアン・シャプランド(Ann Shapland - オノリア・バルストロード(Honoria Bulstrode - メドウバンの創設者兼校長)の秘書)がダンスを踊っていると、レティス・チャドウィック(Lettice Chadwick - メドウバンク校創設以来のバルストロード校長の盟友で、数学教師)の悲鳴が聞こえてきた。
アダム・グッドマンとアン・シャプランドの2人が、悲鳴が聞こえてきた室内競技場へと駆けつけると、そこには、砂袋で背後から頭を殴られたアイリーン・リッチ(Eileen Rich - 英文学教師)が倒れていたのである。
(11)
<原作>
室内競技場において、後頭部を砂袋で強打され、第2の被害者となるのは、エレノア・ヴァンシッタート(Eleanor Vansittart - 歴史とドイツ語の教師で、バルストロード校長の後継者最有力候補)である。
<英国 TV ドラマ版>
エレノア・ヴァンシッタートは、英国 TV ドラマ版には登場しない。そのため、第2の被害者に関しては、エレノア・ヴァンシッタートではなく、別の教師(アイリーン・リッチ)が襲われることになるが、原作とは異なり、亡くなることはなく、負傷で済むことになる。
室内競技場内において、英文学教師のアイリーン・リッチが更に襲われたため、更に多くの父兄が、自分達の娘達をメドウバンク校から連れ戻す結果となった。
(12)
<原作>
父兄が自分達の娘達をメドウバンク校から連れ戻し始めるのは、歴史とドイツ語の教師で、バルストロード校長の後継者最有力候補と見做されていたエレノア・ヴァンシッタートが、室内競技場において、後頭部を砂袋で強打され、第2の被害者となってからである。
<英国 TV ドラマ版>
体育教師のグレイス・スプリンガーが殺害された時点で、既に多くの父兄が、自分達の娘達をメドウバンク校から連れ戻し始めている。
室内競技場内において、後頭部を砂袋で強打され、怪我を負ったアイリーン・リッチに対して、エルキュール・ポワロが尋ねたところ、彼女は、
・新学期前に休職していたのは、未婚のまま妊娠したので、海外へ行って、出産するため。
・残念ながら、流産のため、子供は亡くなった。
と、休職期間中のことを初めて話すのであった。アイリーン・リッチとしては、未婚の母親であることを隠したかった訳である。
アンジェール・ブランシュ(Angèle Blanche - フランス語教師)が、公衆電話から誰かを脅迫している場面が挿入される。
(13)
ポワロは、ロンドンのクラブにおいて、シャイスタ王女(Princess Shaista - 中東のラマット王国(Ramat)の王女。アリ・ユースフ(Prince Ali Yusuf)の従妹で、ユースフ国王の婚約者)に化けていた女性を発見する。
本物のシャイスタ王女は、メドウバンク校に入学する前に、スイスに居たのだが、そこで既に誘拐されていたのである。
<原作>
ジュリア・アップジョン(Julia Upjohn - メドウバンク校の女学生で、ジェニファー・サットクリフ(Jennifer Sutcliffe)の親友)から、事件の相談を受けたポワロが、メドウバンク校へとやって来ると、「シャイスタ王女の膝をよく見たことがありますか?」という当を得た質問を、いきなり発する。ポワロがこの質問を発した時点で、ポワロは、シャイスタ王女に実際に会ったことはない。
<英国 TV ドラマ版>
室内競技場内において、体育教師のグレイス・スプリンガーが襲われて、第1の被害者になった際、シャイスタ王女も事情聴取の対象となっていて、ポワロも、警察による聴取に立ち会っていた。その際、ポワロは、近くにある筒をワザと倒し、テーブル下に屈み込んだ時に、シャイスタ王女の膝を確認して、彼女の実年齢が「14 - 15歳」ではなく、「24 - 25歳」だと、既に見抜いていたのである。このように、原作とは異なり、ポワロがシャイスタ王女が偽者であることを直感で判ったのではなく、キチンと推理の過程を描いている。
夜、待ち合わせの場所である川沿いの納屋の前で、アンジェール・ブランシュが誰かを待っていると、突然、後頭部を砂袋で強打され、第3の被害者となる。
(14)
そして、メドウバンク校の事件関係者を前にして、ポワロによる謎解きが始まる。
第2の被害者が異なることを除けば、基本的に、英国 TV ドラマ版の流れは、原作と同じである。
メドウバンク校の再生を目指すオノリア・バルストロード校長は、アイリーン・リッチを、自分の後継者候補かつパートナーに指名する。
(15)
<原作>
事件を無事解決して、メドウバンク校を去るポワロは、今回の功労者であるジュリア・アップジョンに、御褒美として、エメラルドを渡す。
<英国 TV ドラマ版>
ポワロがジュリア・アップジョンに御褒美として渡すのは、エメラルドではなく、彼女がジェニファー・サットクリフのテニスラケットの柄から見つけた赤いルビーの一つである。
ポワロから赤いルビーを受け取ったジュリア・アップジョンが、陽の光にルビーを透かす場面で、英国 TV ドラマ版は終わりを迎える。
0 件のコメント:
コメントを投稿