2023年3月18日土曜日

綾辻行人作「十角館の殺人」<小説版>(The Decagon House Murders by Yukito Ayatsuji ) - その4

英国のプーシキン出版から2020年に出ている
綾辻行人作「十角館の殺人」の英訳版の裏表紙
(Cover design & illustration by Jo Walker)


合宿3日目の1986年3月28日(金)、S半島のJ岬の沖合いに浮かぶ角島(Tsunojima)と呼ばれる無人の孤島を訪れた大分県O市K大学の推理小説研究会(Mystery Club)の一行7名であったが、何者かによって、オルツィ(Orczy - 文学部2回生)は絞殺され、そして、カー(Carr - 法学部3回生)は毒殺された。


一方、その頃、本島では、K大学推理小説研究会の現 / 元会員や半年前の1985年9月20日に角島で発生した凄惨な四重殺人事件の関係者に宛て、以前、K大学推理小説研究会に所属していた中村千織(Chiori Nakamura - 文学部1回生)の事故死(急性アルコール中毒が要因となって引き起こされた心臓麻痺により急死)について、彼女の父親で、建築家の中村青司(Seiji Nakamura)の名前で、「My daughter Chiori was murdered by akk of you.」と告発する怪文書が送りつけられていた。

その怪文書を送りつけられた1人で、K大学推理小説研究会の元会員である江南孝明(Takaaki Kawaminami)は、中村千織の生存している唯一の肉親で、中村青司の弟(3歳下)である中村紅二郎(Kojiro Nakamura)を訪ねると、高校の社会科教師をしている中村紅二郎も、江南孝明と同様に、怪文書を受け取っていた。江南孝明は、中村紅二郎宅において、中村紅二郎の大学時代の後輩である島田潔(Kiyoshi Shimada)と出会う。

中村紅二郎宅を辞去した後、不思議とウマが合った島田潔と江南孝明2人は、半年前の角島四重殺人事件の真相を一緒に探ろうということになり、独自の調査を開始する。そして、2人は、江南孝明の友人で、K大学推理小説研究会の現会員である守須恭一(Kyoichi Morisu)のアパートを訪ねるのであった。


話は、再び、角島へと戻る。


合宿5日目の朝、化粧を済ませていたアガサ(Agatha - 薬学部3回生)が、洗面所において、毒殺されているのが発見される。

更に、ルルウ(Leroux - 文学部2回生で、会誌「死人島(Dead Island)」の次期編集長)が、半年前に全焼した「青屋敷(Blue Mansion)」の跡地近くで、殴打されて亡くなっているのが見つかる。ルルウは、アガサよりも前に被害に遭ったと考えられた。


英国のプーシキン出版から2020年に出ている
綾辻行人作「十角館の殺人」の英訳版に掲載されている
ルルウの殺害現場図

残されたポウ(Poe - 医学部4回生)、エラリイ(Ellery - 法学部3回生で、会誌「死人島」の現編集長)とヴァン(Van - 理学部3回生)の3人は、殺された4人の事件について、推理を進めていく。その過程で、カーの毒殺事件について、カーを除く他のメンバーは、合宿している「十角館(Decagon House)」と同じ十角形のカップを使っていたが、カーだけは、11角形のカップを手にとったことが判り、その結果、内部犯でも、犯行が可能だったことが明らかとなる。

その最中、煙草を吸ったポウが、煙草にしくまれた毒によって、殺害される。


残ったエラリイとヴァンの2人は、自分達の命を狙った犯人は、中村千織の父親で、「青屋敷」と「十角館」を建てた中村青司で、動機は、事故死した中村千織の復讐のためだと推理する

11角形のカップと同様に、「十角館」には、10部屋以外に、どこかに11番目の秘密の部屋があるのではないかと考えたエラリイは、地下室を見つけ出し、驚いたことに、そこで、半年前の角島四重殺人事件の犯人だと思われていた庭師の吉川誠一(Seiichi Yoshikawa:46歳)の白骨死体を発見したのである。


そして、翌日、「角島の十角館が火事になり、K大学推理小説研究会のメンバー全員が死亡。」という第一報が、島田潔と江南孝明の元に届いた。

島田潔の兄で、大分県警に勤める島田修警部が、島田潔と江南孝明の2人に対して、「K大学推理小説研究会のメンバーは、1体を除くと、死亡後に焼かれており、エラリイ1人だけが、灯油をかぶって焼死していたことが判った。」と説明する。


角島において合宿中だったK大学推理小説研究会のメンバーの身の上に、一体、何が起きたのだろうか?

物語の終盤、ある人物が発する言葉によって、驚愕の事実が判明する。


本作品は、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」に対して挑戦したものであるが、「そして誰もいなくなった」とは全く違った驚天動地のトリックが炸裂する。


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