2023年3月9日木曜日

綾辻行人作「十角館の殺人」<小説版>(The Decagon House Murders by Yukito Ayatsuji )- その3

1986年3月26日(水)、大分県O市K大学の推理小説研究会(Mystery Club)の一行が、S半島のJ岬の沖合いに浮かぶ角島(Tsunojima)と呼ばれる無人の孤島を訪れた。一行のメンバーは、以下7名。


(1)ポウ(Poe)- 医学部4回生

(2)カー(Carr)- 法学部3回生

(3)エラリイ(Ellery)- 法学部3回生で、会誌「死人島(Dead Island)」の現編集長

(4)ヴァン(Van)- 理学部3回生

(5)アガサ(Agatha)- 薬学部3回生

(6)オルツィ(Orczy)- 文学部2回生

(7)ルルウ(Leroux)- 文学部2回生で、会誌「死人島」の次期編集長


彼らは、欧米の有名な推理作家達に因んだニックネームで呼ばれている。


角島には、半年前の1985年9月20日に、凄惨な四重殺人事件が発生の上、全焼した「青屋敷(Blue Mansion)」の跡と十角形という奇妙なデザインの「十角館(Decagon House)」が残るだけだった。

事件後、不動産業者である(ヴァンの)伯父が角島を購入したことを聞いたヴァンが、自分が所属する推理小説研究会に話を伝え、会誌「死人島」の次期編集長であるルルウが、角島に唯一残っている「十角館」での1週間の合宿を提案したのである。

食料等を含む合宿の事前準備作業のため、ヴァンが一足早く角島に前入りしており、残りの6名が後から島に到着した。


「十角館」のフロア図 -
玄関ホールの左側に、ヴァン、オルツィとポウが、
玄関ホールの右側に、エラリイ、アガサ、カー、そして、ルルウが配置された。


角島に前入りしていたヴァンが既に玄関ホールのすぐ左側の部屋を使用していたので、各人の部屋は、「玄関ホール」から時計回りに、「ヴァン」、「オルツィ」、「ポウ」、「洗面所(Washroom)/ 浴室(Bath)/ トイレ(Toilet)」、「台所(Kitchen)」、「ルルウ」、「カー」、「アガサ」、そして、「エラリイ」と取り決められた。


合宿1日目の夕食が終わり、寛ぐ推理小説研究会のメンバー達であったが、合宿の事前準備作業で疲れたのか、体調不良を理由に、ヴァンは早めに部屋へと退く。

そんな推理小説研究会の一行の頭上には、暗雲が垂れ込め始めていた。


合宿2日目の朝(午前8時)、よく眠れなかったオルツィがホール(Hall)へと出て来ると、テーブルの上に、「第1の被害者(The First Victim)」、「第2の被害者(The Second Victim)」、「第3の被害者(The Third Victim)」、「第4の被害者(The Fourth Victim)」、「最後の被害者(The Last Victim)」、「探偵(The Detective)」と「殺人者( The Murderer)」と書かれたプレートが置かれていた。

一体、誰がこれらのプレートを置いたのか?そして、その意図は、何なのか?


合宿2日目の朝、自室から出て来た
オルツィは、ホールのテーブルの上に
不可解なプレートを発見して、
驚くと、アガサを起こしに行った。


いよいよ、角島にやって来た推理小説研究会の一行に対して、惨劇の幕があがることになる。


合宿3日目の朝、絞殺されたオルツィが、彼女の部屋において、発見される。彼女の部屋のドアに、「第1の被害者」というプレートが掛けられていたのである。

不可解なことに、オルツィの左手首が、彼女の遺体から切断されており、どこにも見当たらなかった。これは、建築家で、「青屋敷」/「十角館」の設計者でもある中村青司(Seiji Nakamura)の妻である中村和枝(Kazue Nakamura)の状況と酷似していた。

残った推理小説研究会のメンバー達は、自分達の中にオルツィを殺害した犯人が居るのではないかと考えて、各人推理を始めたものの、外部の第三者による犯行の可能性も否定できない状況であった。


更に、同日の昼、残った推理小説研究会のメンバー達が昼食後のコーヒーを飲んでいると、カーが毒殺されるという事件が発生する。

その後、エラリイによる発案に基づいて、更に1名少なくなった推理小説研究会のメンバー達が「青屋敷」の全焼跡の調査に赴く。彼らは、屋敷の全焼跡において、地下室への入口を発見する。彼らが地下室を調べたところ、地下室へと降りる階段にテグスが張られていたこと、また、地下室の床に掃き清めたような痕跡があること等から、外部の第三者がこの地下室に潜んでいた可能性が濃厚となったのである。


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