ビル・ブラッグ氏が描く ミス・マープルシリーズの長編第8作目である 「鏡は横にひび割れて」の一場面 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、9番目を紹介したい。
(9)「鏡は横にひび割れて(The Mirror Crack’d from Side to Side)」(1962年)
「鏡は横にひび割れて」は、1962年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第8作目である。
気管支炎に罹患して、身体がひどく衰弱したミス・マープルのことを心配したヘイドック医師(Dr. Haydock)の進言もあり、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West)が手配したミス・ナイト(Miss Knight)が、ミス・マープルに対して、付き添いの介護をしている。
ミス・ナイトに加えて、セントメアリーミード村(St. Mary Mead)の新住宅地へ、夫のジム・ベイカー(Jim Baker)と一緒に引っ越して来たのが、チェリー・ベイカー(Cherry Baker)が、通いのメイドとして働いている。チェリー・ベイカーが、ミス・マープルのコテージ内の清掃を、また、彼女の夫のジム・ベイカーが、その他諸々の雑事を担当する。
そんな彼らの監視下をなんとか逃れたミス・マープルは、セントメアリーミード村内を散歩中に転んでしまうが、新住宅地の住民で、セントジョン野戦病院協会(St. John Ambulance)の幹事を務めるヘザー・バドコック(Mrs. Heather Badcock)に助けてもらった。
二人で紅茶を飲んでいる最中、ミス・マープルは、バドコック夫人から、「ゴシントンホール(Gossington Hall - ミス・マープルの親友であるドリー・バントリー(Dolly Bantry)が所有していた邸宅)」を購入して、最近、セントメアリーミード村に引っ越して来た米国の映画女優であるマリーナ・グレッグ(Marina Gregg)に、以前、会ったことがある。」という話を聞かされた。
セントメアリーミード村に引っ越して来たマリーナ・グレッグと彼女の夫で、映画監督であるジェイスン・ラッド(Jason Rudd)は、野戦病院協会支援のためのパーティーを開催する。
そのパーティーには、以下の人物が招待されていた。
(1)バントリー夫人
(2)ローラ・ブルースター(Lola Brewster - 米国の映画女優で、マリーナの元夫と結婚)
(3)アードウィック・フェン(Ardwyck Fenn - マリーナの友人で、以前、マリーナと交際していた過去がある)
(4)ヘザー・バドコック
(5)アーサー・バドコック(Arthur Badcock - ヘザーの夫)
パーティーの席上、バドコック夫人は、マリーナを捕まえると、長い昔話を始めた。
バドコック夫人によると、数年前にマリーナがバミューダ(Bermuda)を訪れた際、当時そこで働いていた自分と会ったことがある、とのことだった。その時、バドコック夫人は病気だったが、マリーナの大ファンだったため、病床を推して、マリーナに会いに行き、彼女からサインをもらったと言う。
バドコック夫人とマリーナの二人の会話を近くで聞いていたバントリー夫人は、バドコック夫人が話している間、マリーナが非常に奇妙な表情を浮かべていたことに気付いた。
そうこうしていると、バドコック夫人が突然倒れて、死亡してしまったのである。
スコットランドヤードのダーモット・クラドック主任警部(Chief Inspector Dermot Craddock)/ ウィリアム・ティドラー部長刑事(Sergeant William Tiddler)、そして、地元警察のフランク・コーニッシュ警部(Inspector Frank Cornish)が捜査を担当する。
検死解剖の結果、バドコック夫人の死因は、推奨量の6倍もの精神安定剤を摂取したことによるもので、その精神安定剤は、マリーナが持っていたダイキリ(daiquiri)のグラス内に混入されており、自分の飲み物をこぼしたバドコック夫人に対して、マリーナがそのグラスを手渡したのであった。
ということは、実際には、マリーナ・グレッグの命が狙われていて、バドコック夫人は、その巻き添えに会ったということなのか?
警察の捜査が進む中、更に、二人の人物が殺されることになる。
カレンダーには、野戦病院協会支援のパーティーの席上、米国の映画女優であるマリーナ・グレッグと同協会の幹事であるヘザー・バドコックが会話をしているシーンが描かれている。
Harper Collins Publishers 社から出版されている「鏡は横にひび割れて」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、バドコック夫人が飲んで死亡する原因となった推奨量の6倍もの精神安定剤が混入されたダイキリのグラスの形に切り取られているものが使用されている。
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