シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人が、 グリムズビー・ロイロット博士の魔の手から、ヘレン・ストーナーを救うべく、 列車でサリー州のレザーヘッドへと向かう途中、 その脇の道を、黒ずくめの男につけられたヴィオレット・スミス嬢の自転車が進んで行く。 |
チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)が発表したサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」のグラフィックノベル版は、
(1)「プロローグ(Prologue)」
(2)「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)
(3)「まだらの紐(The Speckled Band)」
(4)「ボヘミア国王の名にかけて(In the name of the King)」
(5)「エピローグ(Epilogue)」
の章によって構成されている。
シャーロック・ホームズは、ボヘミア国王(King of Bohemia)からの依頼に基づいて、アイリーン・アドラー(Irene Adler)からの写真奪還に着手する前に、先にヘレン・ストーナー(Helen Stoner)から依頼された「まだらの紐」事件を解決するために、ジョン・H・ワトスンを伴い、サリー州(Surrey)のレザーヘッド(Leatherhead)へと赴く。
その際、ホームズとワトスンを乗せた列車がレザーヘッドへと向かって進む線路の横の道を、若い女性(ヴァイオレット・スミス(Violet Smith))が乗った自転車の後を、黒ずくめの男が乗った自転車がつけている場面が描かれているが、これは、コナン・ドイル作「孤独な自転車乗り(The Solitary Cyclist)」を彷彿させる。「孤独な自転車乗り」事件の舞台も、サリー州のファーナム(Farnham)付近なので、年代的な問題は別にして、地理的には、問題ないと言える。
「孤独な自転車乗り」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、28番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1904年1月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1903年12月26日号に掲載された。
また、同作品は、1905年に発行されたホームズシリーズの第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」に収録された。
(1)自転車乗りがどちらを指すのか、不明なパターン → 「孤独な自転車乗り」
このパターンには、河出書房新社版、ハヤカワ・ミステリ文庫版、ちくま文庫版、講談社文庫版や創元推理文庫版等が含まれる。
(2)ヴァイオレット・スミスを指すパターン → 「美しき自転車乗り」
このパターンには、新潮社文庫版、光文社文庫版や角川文庫版等が含まれる。
(3)黒ずくめの男を指すパターン → 「怪しい自転車乗り」
このパターンに属する例は少ないが、コナン・ドイルの原作上、黒ずくめの男の正体であるカラザース氏(Mr. Carruthers)を「a solitary cyclist」と表現する場面があるため、このパターンを補強する要因となって居る。
日本語の訳一つで、本作品のタイトルから受ける印象が微妙に異なってくるので、なかなか面白い。ちなみに、本稿のタイトルは、「solitary」の単語の意味通り、「孤独な自転車乗り」としてある。
「孤独な自転車乗り」事件は、コナン・ドイルの原作によると、1895年4月23日(土)、ヴァイオレット・スミス嬢が、ベイカーストリート221Bのホームズの元を訪れるところから始まる。
なお、実際には、1895年4月23日は、土曜日ではなく、火曜日である。
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