2022年12月4日日曜日

アガサ・クリスティー作「チムニーズ館の秘密」<グラフィックノベル版>(The Secret of Chimneys by Agatha Christie )- その2

数年ぶりに英国の土を踏んだアンソニー・ケイドは、
ロンドンのブリッツホテルに宿泊したが、
スティルプティッチ伯爵(Count Stylptitch)の回顧録を手に入れたい人物が、
次々とアンソニーの前に姿を現わす。


南アフリカの町ブラワヨ(Bulawayo - 現在のジンバブエ共和国南西部に所在する都市)にある旅行社に案内役として勤務しているアンソニー・ケイド(Anthony Cade - 愛称:トニー(Tony))は、旧友のジェイムズ・マグラス(James McGrath - 愛称:ジミー(Jimmy))に、偶然、再会する。その際、アンソニー・ケイドは、ジェイムズ・マグラスから、2つの依頼を受けた。


(1)

パリにおいて、暴漢達に襲われている最中、ジェイムズが助けた人物で、最近亡くなったヘルツォスロヴァキア(Herzoslovakia)の元総理であるスティルプティッチ伯爵(Count Stylptitch)の回顧録を、ロンドンのある出版社に届けること


(2)

ヴァージニア・レヴェル(Virginia Revel)という女性に、彼女自身のスキャンダル絡みの手紙を返すこと


ジェイムズに劣らぬ冒険家であったアンソニーは、ジェイムズの申し出には、興味を唆られるだけの謎を秘めていたので、取引に応じることに決めた。スティルプティッチ伯爵の関係者から提示されていた1千ポンドの報酬のうち、250ポンドの分け前をもらう条件で、ジェイムズからの依頼を引き受けたアンソニーは、ロンドンへと向かい、出発した。


数年ぶりに英国の土を踏んだアンソニー・ケイドは、ジェイムズ・マグラスの名前を用いて、ロンドンのブリッツホテル(Blitz Hotel)に宿泊した。すると、アンソニーは、次々に怪しげな客の来訪を受けるのであった。


アンソニー・ケイドの前に姿を見せた最初の人物は、
ヘルツォスロヴァキア王政支持派のロンドン代表であるロロプレッティジル男爵だった。


1人目は、ヘルツォスロヴァキア王政支持派のロンドン代表であるロロプレッティジル男爵(Baron Lolopretizyl)であった。

ロロプレッティジル男爵によると、現在、英国政府による支持の下、ミカエル・オボロヴィッチ王子(Prince Michael Obolovitch)の即位計画が進んでいる、とのこと。従って、政治的に重大なスキャンダルが記されていると思われるスティルプティッチ伯爵の回顧録が出版の上、世間に公表されると、その計画に支障を来たす恐れがあった。そのため、ロロプレッティジル男爵は、アンソニーに対して、1500ポンドで回顧録を譲ってほしいと頼んだが、アンソニーは、「一度引き受けた仕事は、最後まで遂行する義務がある。」と答え、ロロプレッティジル男爵の申し出を断った。


2番目にアンソニー・ケイドの前に姿を見せたのは、
ヘルツォスロヴァキア王政反対派であるレッド・ハンド党の党員だった。


2人目は、ヘルツォスロヴァキア王政反対派であるレッド・ハンド党(The Comrades of the Red Hand)の党員だった。

彼は、ピストルを用い、アンソニーを脅迫して、スティルプティッチ伯爵の回顧録を奪おうとしたが、アンソニーは、彼を撃退する。


最後には、アンソニー・ケイドが宿泊したブリッツホテルの給仕である
ジュセッペ・マヌエリが、彼の部屋へ忍び込んで来た。

3人目で、最後の人物は、(ブリッツ)ホテルの給仕であるジュセッペ・マヌネリ(Giuseppe Manuelli)だ。

深夜、ジュセッペがアンソニーの部屋に忍び込んで来たが、目を覚ましたアンソニーは、ジュセッペと格闘したものの、取り逃がしてしまった。スティルプティッチ伯爵の回顧録は無事だったが、ヴァージニア・レヴェルの手紙は、奪われてしまった。


アンソニー・ケイドの部屋から手紙を盗み出した
ブリッツホテルの給仕であるジュセッペ・マヌエリは、
それを持って、ヴァージニア・レヴェルの元を訪れて、恐喝を行なった。


翌日、ヴァージニア・レヴェルの元を、ジュセッペ・マヌネリが、アンソニーから奪った手紙を持参し、恐喝者として訪れた。ジュセッペから見せられた手紙の内容を見て、自分の身に覚えがないヴァージニア・レヴェルは、恐喝者とのやりとりを楽しみつつ、彼に手持ちの小金(現金)を渡すと、もう一度来るように言い渡すと、一旦帰らせた。


ヴァージニア・レヴェルの従兄弟で、
英国外務省の高官であるジョージ・ロマックスが、彼女の元を訪れ、
スティルプティッチ伯爵の回顧録を保有しているアンソニー・ケイドを、
チムニーズ館においてもてなすよう、依頼する


ジュセッペ・マヌネリと入れ替わるように、ヴァージニア・レヴェルの従兄弟で、英国外務省の高官であるジョージ・ロマックス(George Lomax)が、彼女の元を訪れた。

ヘルツォスロヴァキアにおいて発見されたと噂される油田の利権獲得のために、ミカエル・オボロヴィッチ王子擁立を支持する英国政府としても、スティルプティッチ伯爵の回顧録は、その計画を頓挫させかねないもので、その存在は軽視できなかった。

そこで、ジョージ・ロマックスは、以前、ヘルツォスロヴァキア大使館に勤務していた亡き夫と一緒に、同国に滞在していたことがあるヴァージニア・レヴェルに対して、スティルプティッチ伯爵の回顧録を保有しているジェイムズ・マグラス(実際には、アンソニー・ケイド)を、チムニーズ館(Chimneys)においてもてなすよう、依頼するのであった。


こうして、スティルプティッチ伯爵の回顧録を付け狙う人物達が、チムニーズ館へと集結する。


フランスの作家であるフランソワ・リヴィエール(Francois Riviere:1949年ー)が構成を、そして、スイスの SF 作家兼グラフィックアーティストであるローレンス・スーナー(Laurence Suhner:1968年ー)が作画を担当したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「チムニーズ館の秘密(The Secret of Chimneys)」(1925年)のグラフィックノベル版は、いろいろな登場人物が入り乱れるにもかかわらず、46ページの分量の中に、うまくまとめられている。


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