英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2020年に出版された サム・シチリアーノ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」の表紙(部分) |
読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆☆☆(3.0)
本作品における事件の依頼人であるイザベル・ストーン(Isabel Stone)が置かれている状況や彼女の義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉(Captain Grimbold Pratt)のひととなり等、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「まだらの紐(The Speckled Band)」をベースにしているのではないかと思われる。また、彼らが住んでいるのが、サリー州(Surrey)レザーヘッド(Leatherhead)の近くであり、これも「まだらの紐」の設定に似ている。
ただし、「まだらの紐」の場合、ジュリア・ストーナー(Julia Stoner)とヘレン・ストーナー(Helen Stoner)の双子であるのに対して、本作品の場合、イザベル・ストーンは一人娘であること、また、「まだらの紐」の場合、グリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott)が、「チーター(cheetah)」と「ヒヒ(baboon)」を飼っていたが、本作品の場合、グリムボルド・プラット大尉は、「虎(tiger)」と「狼(wolf)」を飼っている等、相違点も見られる。
(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)
米国ユタ州ソルトレークシティー出身の作家であるサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)が本作品以前に発表した「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日 / 9月19日 / 9月26日付ブログで紹介済)」(2013年)、「白蛇伝説(The White Worm → 2021年10月17日 / 10月21日付ブログで紹介済)」(2016年)やおよび「月長石の呪い(The Moonstone’s Curse → 2022年8月28日 / 9月28日 / 10月1日付ブログで紹介済)」(2017年)において、シャーロック・ホームズは、事件の依頼人である恋人達が恐怖に震える中、ずーっと手を拱いている上に、堂々巡りを繰り返すばかりで、非常に悪い印象しかない。本作品の場合も、前作品と同様に、なかなか話が進展しないものの、前作品に見受けられたような変な堂々巡りはなくなり、以前のようなフラストレーションはあまり溜まらない。
(3)ホームズ / ヘンリー・ヴェルニール医師の活躍について ☆☆☆(3.0)
前述の通り、ホームズは、事件の依頼人である恋人達が恐怖に震える中、ずーっと手を拱いている上に、堂々巡りを繰り返すばかりの名探偵らしくないことは、今回ないものの、グリムボルド・プラット大尉の屋敷に滞在して、情報収集のためもあるが、彼の食事や散歩等に帯同したり、一緒に会話を続けたりと、なかなか話が進展しない。以前の作品に比べると、悪印象は減ったが、名探偵らしい活躍を十分に発揮できているとは、正直ベース、言えない。
(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)
事件や背景の設定について、コナン・ドイル作「まだらの紐」をベースにしているように、読者に認識させ、物語の展開に関しても、「まだらの紐」のように進むものと、読者が推測するよう、作者のサム・シチリアーノは、意図的に罠を仕掛けているのだろうか?実際のところ、「まだらの紐」のようには、物語は展開せず、異なる方向へと至る。もし、作者のサム・シチリアーノが、意図的に読者をミスリードしているのだとすると、今回は、今までの作品対比、まあまあ改善していると言える。
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