ビル・ブラッグ氏が描く ミス・マープルシリーズの長編第6作目である 「ポケットにライ麦を」の一場面 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、7番目を紹介したい。
(7)「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」(1953年)
「ポケットにライ麦を」は、1953年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第6作目で、マザーグース(Mother Goose)の童謡の歌詞通りに、殺人事件が発生する「見立て殺人」をテーマにした作品である。
ロンドンにある投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキュー(Rex Fortescue)が、オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝したため、スコットランドヤードのニール警部(Inspector Neele)が、捜査に入った。
検死解剖の結果、レックス・フォーテスキューの体内から、イチイの木(yew tree)から抽出される毒性のアルカロイド(toxic alkaloid)であるタキシン(taxine)が見つかり、死因は、タキシンによる中毒であることが判明した。レックス・フォーテスキューは、朝食でとったマーマレードと一緒に、タキシンを摂取したものと思われた。
更に、レックス・フォーテスキューの着衣を調べたところ、不思議なことに、上着のポケットから、大量のライ麦(rye)が出てきたのである。
当然のことながら、スコットランドヤードによって、レックス・フォーテスキューの後妻であるアディール・フォーテスキュー(Adele Fortescue)が、第一容疑者と見做された。
ケニア(Kenya)において結婚したばかりの次男のランスロット・ フォーテスキュー(Lancelot Fortescue - 愛称:ランス(Lance))と妻のパトリシア・フィーテスキュー(Patricia Fortescue - 愛称:パット(Pat))の二人は、レックス・フォーテスキューの招待に応じて、丁度、ケニアからロンドンへと向かっている最中で、「翌日、英国に帰国する。」という電報がパリから入ったので、警察が空港まで彼らを出迎えに行った。
ランスロットが、妻のパトリシアをロンドンに残して、サリー州(Surrey)ベイドンヒース(Baydon Heath)にあるフォーテスキュー家の邸宅イチイ荘(Yewtree Lodge)に到着した正にその日、義理の母親アディールが、青酸カリ(cyanide)が混入された紅茶を飲んで、死亡した。
更に、その数時間後、メイドのグラディス・マーティン(Gladys Martin)が、イチイ荘の庭において、絞殺死体で発見された。しかも、彼女の鼻には、洗濯バサミが付けられていたのである。
ニール警部は、ヘイ巡査部長(Sergeant Hay)と一緒に、捜査を進めるものの、残念ながら、何の進展も得られなかった。
そこへ、3件の殺人事件の記事を新聞で読んだミス・マープルが、イチイ荘を訪れる。不思議な縁で、亡くなったメイドのグラディスは、以前、マープルの家でメイドとして働いていたからである。
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