| 東京創元社から、創元推理文庫の一冊として出版されている ジョン・ディクスン・カー作 「カー短編全集6 ヴァンパイアの塔」の表紙 カバー イラスト: 志村 敏子 カバーデザイン:東京創元社装幀室 |
「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家である。彼は、シャーロック・ホームズシリーズで有名なサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の伝記を執筆するとともに、コナン・ドイルの息子であるエイドリアン・コナン・ドイル(Adrian Conan Doyle:1910年ー1970年)と一緒に、ホームズシリーズにおける「語られざる事件」をテーマにした短編集「シャーロック・ホームズの功績(The Exploits of Sherlock Holmes)」(1954年)を発表している。
ジョン・ディクスン・カーは、1944年に、「男性は、どこまで自分の妻 / 婚約者を信用しているか?」をテーマにして、英国の BBC 用にラジオドラマ「ヴァンパイアの塔(Vampire Tower)」を執筆している。
彼は、プロットの展開は同じであるが、米国の CBS 用にラジオドラマ「Will You Walk into My Parlor?」を執筆している。ただし、登場人物の名前は、前述の「ヴァンパイアの塔」とは異なっている上に、台詞のほとんどが書き直されている。
ラジオドラマ「ヴァンパイアの塔」の舞台として、
年代:1930年代(第二次世界大戦前)のとある夏の午後
場所:英国ケント州(Kent)
に設定されている。
当主サー・ハーヴィ・ドレイクが住むレントンホールの敷地内では、慈善バザーが開催されており、売店やテントが並んでいた。ただ、空には黒雲が立ち込めて、夏の嵐の到来を告げる風がテントをはためかせているせいか、人の姿はほとんど見当たらなかった。
そんな中、サー・ハーヴィ・ドレイク自らが主宰する射撃場の方へ向かって歩む人物が2人居た。一人は、サー・ハーヴィ・ドレイクの甥であるアラン・ドレイクで、もう一人は、アランの婚約者であるバーバラ・モレルだった。
サー・ハーヴィ・ドレイクとアラン・ドレイクの2人は、射撃を嫌がるバーバラ・モレルにライフル(ウィンチェスター61 / 32口径)を撃たせたが、残念ながら、動揺する彼女が発射したライフルの銃弾は、屋根の電球を撃ち抜き、ガラスが粉々に砕け散っただけだった。
破れかぶれになったバーバラ・モレルを宥めようとするサー・ハーヴィ・ドレイクとアラン・ドレイクの2人は、彼女が当初向かおうとしていた運勢占いのテントへ一人で行かせた。
運勢占いのテントに居たのは、内務省所属の病理学者であるジョージ・グリモー博士で、警察長であるジョン・セルデン少佐の元を訪れた際に、サー・ハーヴィ・ドレイクがジョージ・グリモー博士に占い師になってくれるように依頼したのだった。
運勢占いのテント内には灯がついており、テーブルを間に挟んで、ジョージ・グリモー博士とバーバラ・モレルの2人が向かい合う姿が、影絵芝居を見ているようだった。
少しすると、ジョージ・グリモー博士から何かを言われたバーバラ・モレルが、突然、飛び上がり、後ずさると、彼に向かって指を突き付けた。そして、彼女はテントから逃げ出そうとした。
テントから駆け出してきたバーバラ・モレルのことを心配したアラン・ドレイクだったが、彼女は怯えた様子を取り繕った。そこで、アラン・ドレイクは、持っていたライフルを彼女に預けると、運勢占いのテントへ一人で赴いた。
テント内のジョージ・グリモー博士を問い詰めるアラン・ドレイクに対して、ジョージ・グリモー博士は、「君は、バーバラ・モレルなる女性の正体を判っていない。」と告げた。ジョージ・グリモー博士が、更に、「彼女の正体は…」と続けた時、ライフルの発射音がして、銃弾がテントを貫いた。そして、テーブルがひっくり返り、ジョージ・グリモー博士が地面に倒れた。
テントの外では、ライフルを持ったバーバラ・モレルが、「アランは私にライフルを持たせるべきじゃなかった。うっかり、引き金に触ってしまった。」と、大声を上げていた。
運勢占いのテント内で、ジョージ・グリモー博士は、バーバラ・モレルに対して、どういったことを告げて、怯えさせたのか?
また、ジョージ・グリモー博士が、アラン・ドレイクに対して、彼女の正体を話そうとした際、テント越しにライフルでジョージ・グリモー博士を撃ったバーバラ・モレルの行為は、単なる事故なのか、それとも、殺意を持った故意なのだろうか?
ジョン・ディクスン・カーは、ラジオドラマ「ヴァンパイアの塔」をベースに、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズの長編第15作目として、「死が二人をわかつまで / 毒殺魔(Till Death Do Us Part)」を1944年に発表している。
なお、ギディオン・フェル博士シリーズの長編第15作目「死が二人をわかつまで / 毒殺魔」については、今後、御紹介する予定。

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