2025年5月12日月曜日

コナン・ドイル作「緑柱石の宝冠」<小説版>(The Beryl Coronet by Conan Doyle )- その4

英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年5月号に掲載された挿絵(その7) -
スレッドニードルストリートにあるホールダー&スティーヴンスン銀行の頭取を務めている
アレクサンダー・ホールダーから、
5万ポンドの融資の担保として、とある高貴な人物から預かった宝冠の一部が
ストリーサム地内の自宅から盗まれ、
彼の一人息子であるアーサー・ホールダーが犯人として、
警察に捕まったことを聞いたシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、
アレクサンダー・ホールダー邸を訪れ、
同居する養女のメアリーからも、昨夜の話を聞くのであった。
画面左側から、シャーロック・ホームズ、
そして、アレクサンダー・ホールダー
の養女であるメアリー・ホールダー。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「緑柱石の宝冠(The Beryl Coronet)」の場合、アレクサンダー・ホールダー(Alexander Holder)と名乗る男性が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れて、緊急の相談事にかかる説明を始める。


スレッドニードルストリート(Threadneedle Street → 2014年10月30日付ブログで紹介済)にあるホールダー&スティーヴンスン銀行(banking firm of Holder & Stevenson - シティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)内では2番目に大きな民間銀行)の頭取を務めているアレクサンダー・ホールダーは、5万ポンドの融資の担保として、「世界中にその名前が知られていて、英国で最も上流で、高貴で、かつ身分の高い方の一人(it was a name which is a household word all over the earth - one of the highest, noblest, most exalted names in England)」から預かった貴重な緑柱石の宝冠を、銀行からテムズ河(River Thames)の南岸のストリーサム地区(Streatham → 2017年12月2日付ブログで紹介済)内の自宅へと持ち帰ると、自分の寝室の隣りにある衣装部屋(dressing-room)の書き物机(bureau)の中に宝冠を入れて、鍵をかけ、更に、家の戸締りの確認も、自分自身で行った。


その夜の午前2時頃、家の中で何かの物音がして、目を覚ましたアレクサンダー・ホールダーは、隣りの衣装部屋で足音がするのを聞いた。

彼がベッドからそっと抜け出して、衣装部屋を覗き込むと、そこには、シャツとズボンだけの格好で、靴も履いていない一人息子のアーサー・ホールダー(Arthur Holder)が、宝冠を両手に持って立っていたのである。アレクサンダー・ホールダーの目には、アーサーは、宝冠を捻るか、あるいは、曲げるかのような動作をしていた。

アレクサンダー・ホールダーが大声で咎めると、驚いたアーサーは、宝冠を手から取り落として、死人のように真っ青な顔で父親を振り返った。

アーサーが落とした宝冠を、アレクサンダー・ホールダーが急いで拾い上げ、確認したところ、緑柱石が3個付いていた金具ごと、折り取られていたのである。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年5月号に掲載された挿絵(その8) -
アレクサンダー・ホールダー邸から
ベーカーストリート221B への戻ったホームズは、
自分の部屋へ入り、数分後に、浮浪者の身なりでに出て来ると、
何処かへ出かけて行った。

アレクサンダー・ホールダーの話を聞き終えたホームズとジョン・H・ワトスンは、アレクサンダー・ホールダーと一緒に、ストリーサム地区にある彼の自宅へと赴くことに決めた。

アレクサンダー・ホールダー邸に着いたホームズは、家の中へ直ぐには入らないで、ワトスンとアレクサンダー・ホールダーの2人を玄関口に残したまま、まず最初に、家の周りや敷地内の厩舎へと続く小道等を念入りに調べ始める。

外での調べを終えて、家の中に入って来たホームズは、アレクサンダー・ホールダーの兄の娘で、兄が亡くなった後、彼の養女となっているメアリー(Mary)からも、昨夜の話を聞いた。


その後、ホームズは、2階へと上がり、アレクサンダー・ホールダーから鍵を借り受けると、衣装部屋の書き物机の中から問題の緑柱石の宝冠を取り出す。

ホームズが、宝冠の金具が折り取られていた部分に力を入れて曲げようとしたが、指の力が強いホームズを持ってしても、相当手間がかかりそうだった。ホームズ曰く、「宝冠の金具を折り取ると、拳銃を撃ったような音がする筈。そうだとすると、衣装部屋の隣りの部屋で居て、眠りが浅いあなた(アレクサンダー・ホールダー)に全然聞こえなかったと言うのは、説明がつかない。」とのこと。


再度、外の調査を終えたホームズが、アレクサンダー・ホールダーに対して、「明日の午前9時から午前10時の間に、ベーカーストリート221B へお越しいただければ、事件について、もっと詳しい御説明ができると思います。」と告げる。ホームズが既に事件の全容を解き明かしていることは、ワトスンの目には明らかだった。

ベーカーストリート221B に戻ったホームズは、自分の部屋へ入ると、数分後には、浮浪者に変装して出て来た。数時間して、ホームズは、一旦、戻って来たが、身なりを整えると、再び何処かへ出かけて行った。

事件の解決は、目前であった。


ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)を主人公のシャーロック・ホームズ役に据えて、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が TV ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)を制作しているものの、残念ながら、「緑柱石の宝冠」に関しては、映像化されていない。


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