2025年5月1日木曜日

コナン・ドイル作「緑柱石の宝冠」<小説版>(The Beryl Coronet by Conan Doyle )- その2

英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年5月号に掲載された挿絵(その2) -
スレッドニードルストリートにあるホールダー&スティーヴンスン銀行
(シティー内では2番目に大きな民間銀行)の頭取を務めている
アレクサンダー・ホールダーは、
とある高貴な人物から、5万ポンドの融資の担保として、
英国で最も貴重な国宝の一つと言われる
39個の緑柱石で飾られた宝冠を預かり、困惑する。

英国の作家であるミシェル・バークビー(Michelle Birkby)作の長編「ベイカー街の女たち(The House at Baker Street → 2025年3月30日 / 4月2日 / 4月10日 / 4月26日付ブログで紹介済)」(2016年)において、容疑者の一人となるサー・ジョージ・バーンウェル(Sir George Burnwell)が登場するサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「緑柱石の宝冠(The Beryl Coronet)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、11番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1892年5月号に掲載された。

同作品は、同年の1892年に発行されたホームズシリーズの第1短編集「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」に収録されている。


「緑柱石の宝冠」の場合、前日に降った雪がまだ地面に厚く積もっているものの、明るく爽やかな2月の朝に、その物語が始まる。


シャーロック・ホームズが出窓から通りを見下ろしていたところ、スレッドニードルストリート(Threadneedle Street → 2014年10月30日付ブログで紹介済)にあるホールダー&スティーヴンスン銀行(banking firm of Holder & Stevenson - シティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)内では2番目に大きな民間銀行)の頭取を務めているアレクサンダー・ホールダー(Alexander Holder)と名乗る紳士が、ホームズの元を訪れる。ホームズの部屋に入って来たアレクサンダー・ホールダーの目には、苦悩と絶望が色がありありと浮かんでいた。じっとしていられないアレクサンダー・ホールダーの様子を見たホームズは、手を叩き、宥めるような口調で話しかけて、彼を落ち着かせようと努める。

一刻を争うアレクサンダー・ホールダーは、ホームズに対して、事件の内容を話し始めた。


昨日の朝、アレクサンダー・ホールダーは、とある高貴な人物の訪問を受ける。その人物は、世界中にその名前が知られていて、英国で最も上流で、高貴で、かつ身分の高い方の一人(it was a name which is a household word all over the earth - one of the highest, noblest, most exalted names in England)だった。

その高貴な人物は、「急に5万ポンドの現金が必要になった(I should have £ 50,000 at once.)ので、来週の月曜日まで金を借りたい。」と申し出た。

アレクサンダー・ホールダーがこれを了承すると、その高貴な人物は、5万ポンドの融資を受ける担保として、39個の緑柱石(Beryl Coronet)で飾られた宝冠を彼に預けた。この宝冠は、英国で最も貴重な国宝の一つ(One of the most precious possessions of the empire)だった。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年5月号に掲載された挿絵(その3) -
とある高貴な人物から、5万ポンドの融資の担保として、
緑柱石で飾られた宝冠を預かったアレクサンダー・ホールダーは、
銀行の金庫で保管することに不安を覚え、
肌身離さぬよう、ストリーサムにある自宅へと持ち帰った。
そして、彼は、息子のアーサーと養女のメアリーの2人に対して、
宝冠のことをさり気なく話した。
画面右側から、アレクサンダー・ホールダー、
彼の一人息子であるアーサー・ホールダー、
そして、彼の養女であるメアリー・ホールダー。

挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)

貴重な宝冠を預かることになったアレクサンダー・ホールダーは、一旦、宝冠を金庫に保管して、仕事に戻ったが、夜になると、このまま仕事場に置いたまま帰宅するのを躊躇。

銀行の金庫も絶対に安全とは言えないため、アレクサンダー・ホールダーは、肌身離さぬように注意するべく、貴重な宝冠を自宅へ持ち帰ることにした。


アレクサンダー・ホールダーの自宅は、テムズ河(River Thames)の南岸のストリーサム地区(Streatham → 2017年12月2日付ブログで紹介済)にあった。

彼の自宅の場合、馬丁(groom)と給仕(page boy)は別棟で寝起きしている上に、住み込みの女中達は信頼できる人物だった。

彼らを別にすると、アレクサンダー・ホールダーの家族は、


(1)一人息子のアーサー・ホールダー(Arthur Holder)



(2)アレクサンダー・ホールダーの兄の娘で、兄が亡くなった後、彼の養女となったメアリー・ホールダー(Mary Holder)


の2人だけ。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1892年5月号に掲載された挿絵(その4) -
アレクサンダー・ホールダーは、
とある高貴な人物から、5万ポンドの融資の担保として預かった宝冠を、
自分の寝室の隣りにある衣装部屋の書き物机の中に入れて、鍵をかけた後、
家の戸締りの確認も、自分自身で行った

帰宅したアレクサンダー・ホールダーは、アーサーとメアリーの2人に対して、とある高貴な人物から預かった貴重な宝冠のことをさり気なく話す。

アーサーとメアリーの2人は、宝冠を見たいと言ったが、アレクサンダー・ホールダーは、彼らの要望を断った。

その後、アレクサンダー・ホールダーは、自分の寝室の隣りにある衣装部屋(dressing-room)の書き物机(bureau)の中に宝冠を入れて、鍵をかけると、更に、家の戸締りの確認も、自分自身で行ったのである。


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