ヴィクトリア朝時代は、いろいろと制約があり、事件の記録者であるジョン・H・ワトスン、著者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)、そして、出版社である「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」も、事件の内容について、不適切な箇所を削除せざるを得ず、事実通りには発表できなかった。
そこで、作家で、映画 / テレビのプロデューサーでもあるニコラス・サーコム(Nicholas Sercombe)が、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンが解決した事件に関して、実際に起きた通りに執筆の上、発表すると言う形式を採ったのが、本作品である。
そして、ロンドン在住のイラストレーターであるジュリエット・スネイプ(Juliet Snape)が、イラストを描いている。
ニコラス・サーコムによるシリーズは、2019年から、以下の作品が発表されている。
<シャーロック・ホームズの不適切な箇所が削除されていない冒険(The Unexpurgated Adventures of Sherlock Holmes)>
(1)「A Balls-up in Bohemia(→ 2024年5月21日 / 5月24日付ブログで紹介済)」→ 原作の「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia → 2022年12月18日+2023年8月6日 / 8月9日 / 8月19日付ブログで紹介済)」をベースにしている。
(2)「The Mysterious Case of Mr. Gingernuts」→ 原作の「赤毛組合(The Red-Headed League → 2022年9月25日 / 10月9日 / 10月11日 / 10月16日
付ブログで紹介済)」をベースにしている。
(3)「The Case of the Randy Stepfather」→ 原作の「A Case of Identity(花婿失踪事件)」をベースにしている。
(4)「My First Proper Rural Murder」→ 原作の「ボスコム谷の謎(The Boscombe Valley Mystery)」をベースにしている。
(5)「The Oranges of Death」→ 原作の「五つのオレンジの種(The Five Orange Pips)」をベースにしている。
(6)「The Man with the Hairy Face」→ 原作の「唇のねじれた男(The Man with the Twisted Lip)」をベースにしている。
(7)「A Gander at the Blue Carbuncle」→ 原作の「青いガーネット(The Blue Carbuncle → 2025年1月1日 / 1月2日 / 1月3日 / 1月4日付ブログで紹介済)」をベースにしている。
(8)「The Speckled Band Speculation」→ 原作の「まだらの紐(The Speckled Band)」をベースにしている。
(9)「The Adventure of the Engineer’s Tongue」→ 原作の「技師の親指(The Engineer’s Thumb)」をベースにしている。
(10)「The Mysterious Marriage of the Gay Bachelor」→ 原作の「独身貴族(The Noble Bachelor)」をベースにしている。
(11)「The Secret Predicament of the Stupid Banker」→ 原作の「緑柱石の宝冠(The Beryl Coronet → 2025年4月29日 / 5月1日 / 5月8日 / 5月12日付ブログで紹介済)」をベースにしている。
(12)「The Adventure of the Psychedelic Trees」→ 原作の「ぶな屋敷(The Copper Beeches → 2022年7月31日 / 8月15日 / 8月21日 / 8月25日付ブログで紹介済)」をベースにしている。
<シャーロック・ホームズの不適切な箇所が削除されていない回想(The Unexpurgated Memoirs of Sherlock Holmes)>
(13)「The Relish of Rampant Rod」→ 原作の「シルヴァーブレイズ(Silver Blaze)」をベースにしている。
(14)「The Memoir of the Gruesome Packet」→ 原作の「ボール箱事件(The Cardboard Box)」
(15)「The Terror of the Yellow Face」→ 原作の「黄色い顔(The Yellow Face)」をベースにしている。
今回は、ニコラス・サーコムによる第11作目に該る「愚かな銀行家の公にできない苦境(The Secret Predicament of the Stupid Banker)」(2021年)について、紹介したい。
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英国の Harry King Films Limited から、Eva Books として 2021年に刊行されている ニコラス・サーコム作「愚かな銀行家の公にできない苦境」の裏表紙 (Cover illustration by Juliet Snape) |
ニコラス・サーコム作「愚かな銀行家の公にできない苦境」の場合、コナン・ドイルによる原作「緑柱石の宝冠」と同様に、事件の主要な関係者は、以下の4人である。
(1)アレクサンダー・ホールドアップ(Alexander Holdup):スレッドニードルストリート(Threadneedle Street → 2014年10月30日付ブログで紹介済)にあるホールドアップ&スティーヴンスン銀行(banking firm of Holdup & Stevenson)の頭取
なお、コナン・ドイルによる原作では、スレッドニードルストリートにあるホールダー&スティーヴンスン銀行(banking firm of Holder & Stevenson - シティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)内では2番目に大きな民間銀行)の頭取を務めているアレクサンダー・ホールダー(Alexander Holder)となっている。
(2)アーサー・ホールドアップ(Arthur Holdup):アレクサンダー・ホールドアップの一人息子
なお、コナン・ドイルによる原作では、アーサー・ホールダー(Arthur Holder)となっている。
(3)メアリー・ホールドアップ(Mary Holdup):アレクサンダー・ホールドアップの兄の娘で、父親の死後、アレクサンダー・ホールドアップの養女となっている。
なお、コナン・ドイルによる原作では、メアリー・ホールダー(Mary Holder)となっている。
(4)サー・ゲイロン・シュウィンガー(Sir Gaylon Schwinger):アーサー・ホールドアップの悪友
なお、コナン・ドイルによる原作では、サー・ジョージ・バーンウェル(Sir George Burnwell → 2025年5月14日付ブログで紹介済)となっている。

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