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日本の出版社である講談社から 江戸川乱歩推理文庫の1冊(第18巻)として 1989年に第1刷が発行された 江戸川乱歩作「緑衣の鬼」の文庫本の表紙 |
主にデヴォン州(Devon)を舞台にした田園小説、戯曲や詩作で既に名を成した英国の作家であるイーデン・ヘンリー・フィルポッツ(Eden Henry Phillpotts:1862年ー1960年 → 2022年2月6日 / 2月13日付ブログで紹介済)が1922年に発表した推理小説「赤毛のレドメイン家(The Red Redmaynes → 2022年6月12日+2025年4月20日 / 4月21日 / 4月23日付ブログで紹介済)」の筋書きをベースに、明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家 / 怪奇・恐怖小説家 / アンソロジストである江戸川乱歩(1894年ー1965年)が、日本向けに翻案 / 脚色 / 再構成して、「講談倶楽部」の1936年(昭和11年)1月号から12月号まで連載した長編小説「緑衣の鬼」の場合、ある初秋の夜、探偵小説家の大江 白蛇(おおえ はっこう → 「赤毛のレドメイン家」におけるスコットランドヤードの刑事であるマーク・ブレンドン(Mark Brendon)に該当)と帝国日日新聞の警視庁詰めの社会部記者で、大江 白蛇の友人でもある折口 幸吉(おりぐち こうきち)の2人が、人出ざかりの銀座通りを散策しているところから、その物語が始まる。
創立20周年の大売出しを行なっている M 百貨店の屋上に設置されている探照灯が、夜間営業の景気付けに、東京の空を照らしまわっていた。探照灯係による悪戯なのか、あるいは、通りを素通りして行く群集の注意を引くためなのか、屋上のサーチライトは、空ばかりではなく、銀座の舗道を時々舐めるように通っていった。
屋上のサーチライトが再び銀座の舗道を照らした際、丁度、一人の若い女性が通りかかった。ビルの壁を照らしたサーチライトの中に、短剣を持った巨人の手の影が突然現れた。丁度通りかかった若い女性は、刺すように自分に迫ってきた刃物を持った手の影を見てると、気を失い、倒れてしまう。大江 白蛇と折口 幸吉の2人は、その現場を目撃する。
大江 白蛇と折口 幸吉がその場に駆け付けて、気を失って倒れている若い女性を助け起こすと、なんと、その女性は、折口 幸吉の妹 伸子(のぶこ)の女学校時代の友人である笹本 芳枝(ささもと よしえ - 旧姓:絹川 → 「赤毛のレドメイン家」におけるジェニー・ペンディーン(Jenny Pendean - 旧姓:レドメイン(Redmayne))に該当)であった。
大江 白蛇と折口 幸吉の2人は、念の為、笹本 芳枝を自宅まで送って行った。
彼女の家は、代々木の外れ、まだ昔ながらの武蔵野の雑木林がまだ残っている物寂しい場所にある樹木に囲まれた2階建ての洋館だった。
洋館に戻った笹本 芳枝から、大江 白蛇と折口 幸吉は、彼女の夫の童話作家である笹本 静雄(ささもと しずお → 「赤毛のレドメイン家」におけるマイケル・ペンディーン(Michael Pendean - 元貿易商 / ジェニー・ペンディーンの夫)に該当)を紹介される。
笹本 静雄は、自分達は何者かに付け狙われていると言う。
丁度その時、その部屋の窓に、怪人物の影が映る。裾広がりのマントの影、モジャモジャの頭髪、怪物の横顔がクッキリと映って、その唇が異様に曲がったかと思うと、老人の笑い声が、悪魔の凱歌でもあるように、薄気味悪く聞こえてきたのである。
翌日、笹本邸を訪ねた折口 幸吉は、倒れている笹本 静雄をそこで発見する。彼に近付こうとした折口 幸吉は、突然、誰かに後ろから殴られて、昏倒してしまう。
少し遅れて笹本邸へとやって来た大江 白蛇によって、気を失っていた折口 幸吉は介抱されるが、不思議なことに、倒れている笹本 静雄の姿はどこにもなく、更に、笹本 芳枝も、何者かに拉致されていた。
大江 白蛇は、笹本 芳枝の伯父である夏目 菊次郎(なつめ きくじろう - 夏目三兄弟の次男 / 数社の会社の大株主で、名義上の重役も務める / 配当生活者 → ベンディゴー・レドメイン(Bendigo Redmayne - ジョン・レドメインの三男 / 貨物船の元船長 / 現在、引退して、デヴォン州(Devon)に居住)に該当)の息子である夏目 太郎(なつめ たろう → ロバート・レドメイン(Robert Redmayne - ジョン・レドメインの四男 / 元大尉)に該当)が、現在行方不明であることに加えて、笹本 芳枝に対して、思いを寄せていたことを知る。
笹本 静雄を殺害した上に、笹本 芳枝を拉致した犯人として、夏目 太郎を怪しいと考えた大江 白蛇は、彼の家を訪ねてみると、彼の部屋は緑一色と言う異常さだった。夏目 太郎は、緑色を偏愛しており、服装や所持品を全て緑色としていたのである。

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