2025年5月5日月曜日

コナン・ドイル作「瀕死の探偵」<小説版>(The Dying Detective by Conan Doyle )- その1

英国で出版された「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」
1913年12月号に掲載された挿絵(その1) -
ジョン・H・ワトスンがシャーロック・ホームズとの共同生活を解消してから、
2年が経過していた。
ベーカーストリート221B の家主であるハドスン夫人が、
ワトスンの家を訪ねて来る。ホームズが謎の病に罹り、
瀕死の状態に陥っている、とのこと。
ハドスン夫人の依頼を受けて、ワトスンは、
直ぐにホームズの元へと向かい、
熱帯病に詳しい医師を連れて来ようと提案するものの、
何故か、ホームズは一切聞き入れず、
後で自分が指定する人物を読んで来るようにと言い張ったのである。
画面右側から、シャーロック・ホームズ、
そして、ジョン・H・ワトスン。
挿絵:ウォルター・スタンリー・パジェット
(Walter Stanley Paget:1862年 - 1935年)

なお、ウォルター・スタンリー・パジェットは、
シャーロック・ホームズシリーズのうち、

第1短編集の「シャーロック・ホームズの冒険

(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1892年)、

第2短編集の「シャーロック・ホームズの回想

(The Memoirs of Sherlock Holmes)」(1893年)、

第3短編集の「シャーロック・ホームズの帰還

(The Return of Sherlock Holmes)」(1905年)および

長編第3作目の「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」

「ストランドマガジン」1901年8月号から1902年4月号にかけて連載された後、

単行本化)の挿絵を担当したシドニー・エドワード・パジェット

(Sidney Edward Paget:1860年 - 1908年)の弟である。


英国の作家であるミシェル・バークビー(Michelle Birkby)作の長編「ベイカー街の女たち(The House at Baker Street → 2025年3月30日 / 4月2日 / 4月10日 / 4月26日付ブログで紹介済)」(2016年)の場合、他のパスティーシュとは異なり、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンではなく、2人が下宿するベーカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の家主であるハドスン夫人(Mrs. Hudson)と呼ばれているマーサ・ハドスン(Martha Hudson)と、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)を経てワトスン夫人(Mrs. Watson)となったメアリー・ワトスン(Mary Watson)の2人が主人公となり、ホームズとワトスンは脇役へとまわる。

なお、ハドスン夫人のファーストネームが「マーサ」となっているのは、コナン・ドイル作「最後の挨拶(His Last Bow → 2021年6月3日付ブログで紹介済)」に登場する老婦人のマーサは、ハドスン夫人であると言う作者ミシェル・バークビーによる想定に基づいている。


マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンは、ホームズの元を訪れるものの、相談内容の詳細を明らかにできなかったため、依頼を断られてしまったローラ・シャーリー(Mrs. Laura Shirley)に対して、手を差し伸べるところから、物語が動き出す。

マーサ・ハドスンとメアリー・ワトスンの2人は、ホームズとは異なり、事件捜査の専門家ではないものの、ホームズの捜査手法をある程度理解しているので、


*ベーカーストリート不正規隊(Baker Street Irregulars)のリーダーであるウィギンズ(Wiggins)

*ベーカーストリート221B の給仕であるビリー(Billy)

*ホームズが「あの女性(ひと)」と呼ぶアイリーン・ノートン(Irene Norton - 旧姓:アドラー(Adler))


のサポートを受けつつ、調べを進めていく。

そして、最後に、彼女達は、事件の背後に潜む強請屋(ゆすりや)の正体を明らかにする。犯人の強請屋は、自分の立場を使って得た情報を利用して、金銭目的ではなく、自分の支配力を誇示したいがために、大勢の女性を食い物にしていた上に、自分の正体を知る人物達を殺害までしていたのである。


物語の終盤(エピローグの前)、マーサ・ハドスンは、スコットランドヤードのレストレイド警部(Inspector Lestrade)に対して、「近頃のホームズさんは波止場で長時間過ぎすことが多いようですから(He’s been spending a lot of time at the docks lately.)」と話しているのに加えて、ホームズに対して、「ああいう場所へ行くときには、怖い病気がうつるかもしれないのでお気をつけくださいましね(I understand you can catch some very nasty diseases down there.)」と忠告している。

このハドスン夫人の発言は、「瀕死の探偵(The Dying Detective)」事件を念頭に置いていると言える。


「瀕死の探偵」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、43番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1913年12月号に、また、米国の「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1913年11月22日号に掲載された。

同作品は、1917年に発行されたホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶(His Last Bow)」に収録されている。


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