英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。
今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。
(77)チェスの駒(chess piece)
アガサ・クリスティーが座る椅子の左側にある本棚の一番上の棚の上に、 「ビッグ4」において出てくるチェスの駒が置かれている。 |
英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ 「ビッグ4」のペーパーバック版の表紙 - この場合も、チェスの駒が使用されている。 |
エルキュール・ポワロの友人で、相棒でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)は、妻と一緒に暮らす牧場があるアルゼンチンから、一年半ぶりに英国へと戻って来た。突然の来訪でポワロを驚かせようと思っていたヘイスティングス大尉であったが、ポワロのフラットを訪れてみると、奇妙な偶然の一致と言うか、ポワロは南米へと出発しようとしていたところだった。
驚くヘイスティングス大尉に対して、ポワロは、「生涯で初めて、お金の誘惑に負けて、世界一の富豪で、「米国の石鹸王」と呼ばれるエイブ・ライランド(Abe Ryland)からの依頼を受け、ブラジルのリオへと向かうのだ。」と説明する。ポワロによると、南米における調査は、彼が最近興味を持つようになった「ビッグ4(Big Four)」と呼ばれる国際的な犯罪集団が関与しているらしい。
ポワロとヘイスティングス大尉がそんな会話をしているところへ、全身泥だらけの男性が突然転がり込んできて、意識を失ってしまう。
二人が男性にブランディーを少し飲ませると、男性は少し意識を取り戻すが、何らかのショックを受けているようで、ポワロの名前と住所を繰り返すだけだった。更に、二人が男性に紙と鉛筆を渡すと、男性は「4」という数字をいくつも書き始めると、次のようなことを早口で捲し立てた。
(1)リー・チャン・エン(Li Chang Yen)は、「ビッグ4」の頭脳で、ナンバーワンである。
(2)ナンバーツーは、米国人で、ドルのマークで表される。
(3)ナンバースリーは、フランス人女性であるが、それ以外は不明。
(4)そして、ナンバーフォーは、破壊者(Destroyer)である。
そう言うと、男性は、再度、意識を失ってしまった。
汽船連絡列車に乗って、南米へと向かわなければならないポワロは、意識を失った男性の世話を家政婦のピアスン夫人(Mrs. Pearson)に任せると、ヘイスティングス大尉を伴い、急いで駅へと出発する。
汽船連絡列車に乗車したものの、フラットに突然転がり込んできた男性のことが気になって落ち着かないポワロは、ヘイスティングス大尉を促して、一時停車した列車から飛び降りると、ロンドンへと急いで引き返した。
フラットへと戻って来た二人であったが、驚くべきことに、謎の訪問客である男性は、既に死亡していた。
こうして、ポワロとヘイスティングス大尉の二人にとって、「ビッグ4」との長い対決の幕が、切って落とされたのである。
なお、本作品において、チェスの駒が出てくるのは、以下の場面である。
チェスの名人であるサヴァロノフ医師(Dr. Savaronoff)に、米国人の青年で、チェスのチャンピオンであるギルモア・ウィルスン(Gilmour Wilson)が挑戦する。ところが、チェスの試合中、ギルモア・ウィルスンが、突然、死亡した。彼が手に握っていたのが、ビショップの駒だった。
当初、彼の死は自然死と思われていたが、エルキュール・ポワロは、「ビッグ4」のナンバー4によって、殺害されたものと考えるのであった。
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