2024年3月4日月曜日

横溝正史作「獄門島」(Death on Gokumon Island by Seishi Yokomizo)- その1

英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から
2022年に刊行されている
 Pushkin Vertigo シリーズの一つである

横溝正史作「獄門島」の表紙
(Cover design by Anna Morrison)

「獄門島(Death on Gokumon Island)」は、日本の推理作家である横溝正史(Seishi Yokomizo:1902年ー1981年)による長編推理小説で、金田一耕助(Kosuke Kindaichi)シリーズの一つである。


「獄門島」は、1947年(昭和22年)1月から1948年(昭和23年)10月にかけて、雑誌「宝石」に17回連載された。

作者の横溝正史が「獄門島」の筆を執ったのは、1946年(昭和21年)10月で、最終篇を脱稿したのが、1948年8月なので、足掛けで言うと、3年、実年月で言えば、1年10ヶ月の長期連載となった。


「獄門島」は、「本陣殺人事件(The Honjin Murders)」に引き続き、雑誌「宝石」に連載された金田一耕助シリーズの第2作目に該る。

「本陣殺人事件」の場合、第二次世界大戦前の話で、「獄門島」の場合、金田一耕助が第二次世界大戦から復員した直後と言う時代設定になっている。作者の横溝正史による執筆ベースで言うと、「獄門島」は、「本陣殺人事件」の直ぐ後になっているが、物語ベースで言うと、「本陣殺人事件」と「獄門島」の間に、短編「百日紅(さるすべり)の下にて」が入る。


作者の横溝正史によると、金田一耕助の登場は、当初、前作の「本陣殺人事件」だけの予定であったが、「本陣殺人事件」の執筆中に、雑誌「宝石」の編集長から「次の作品を書いてほしい。」と言う依頼があり、全く別の探偵を考えるのが面倒だったため、「本陣殺人事件」限りの予定だった金田一耕助をそのまま「獄門島」の探偵として使い続けた、とのこと。


なお、ロンドンのキルバーン(Kilburn)生まれのスコットランド人で、児童文学作家、劇作家、そして、詩人として有名なアラン・アレクサンダー・ミルン(Alan Alexander Milne:1882年ー1956年)作「赤い館の秘密(The Red House Mystery → 2024年2月25日 / 2月29日 / 3月2日付ブログで紹介済)」(1921年に発表+1922年に単行本化)に登場する素人探偵(private sleuthhound)のアントニー・ギリンガム(Antony Gillingham)を、横溝正史が金田一耕助のモデルにしたことで知られている。


また、米国の推理作家である S・S・ヴァン・ダイン(S. S. Van Dine - 本名:美術評論家のウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright:1888年ー1939年))が1929年に発表した長編推理小説で、素人探偵であるファイロ・ヴァンス(Philo Vance)シリーズ12長編のうち、第4作目に該る「僧正殺人事件(The Bishop Murder Case → 2024年2月7日 / 2月11日 / 2月15日 / 2月19日付ブログで紹介済)」は、マザーグース(Mother Goose)に基づく童謡連続殺人事件をテーマにしており、横溝正史は、同じような作品を執筆したいと考えていたが、二番煎じと批判される可能性があったので、諦めかけていた。

そんな最中、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」を発表して、S・S・ヴァン・ダイン作「僧正殺人事件」と同じようなことをやったので、横溝正史は、「自分も挑戦してみよう。」と思い立った、とのこと。

「獄門島」の場合、俳句を用いた見立て殺人事件を描いているが、これは、「僧正殺人事件」や「そして誰もいなくなった」のように、俳句に代わる童謡が日本において見つからなかったからである。


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