英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2020年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 綾辻行人作「十角館の殺人」の英訳版の表紙 (Cover design & illustration by Jo Walker) |
「十角館の殺人(The Decagon House Murders)」は、日本の小説家 / 推理作家である綾辻行人(Yukito Ayatsuji:1960年ー)の作家デビュー作品に該る長編推理小説である。
本作品は、「館シリーズ」の第1作目に該り、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」と同様に、角島(Tsunojima)と呼ばれる無人の孤島に建つ十角館(Decagon House)において、1週間の合宿のためにやって来た大学の推理小説研究会(Mystery Club)の一行が、謎の連続殺人に巻き込まれ、一人、そして、一人と殺害されていく筋立てになっている。
「十角館の殺人」は、1987年9月5日、講談社の講談社ノベルスとして出版されると、日本のミステリー界に大きな影響を与えるとともに、新本格推理小説ブームを巻き起こしたのである。
本作品は、1991年9月15日に文庫化(講談社文庫)され、そして、2007年10月16日に、文庫の新装改訂版が出ている。更に、2017年9月6日には、限定愛蔵版が出版されている。
英国では、プーシキン出版(Pushkin Press)から、2020年に英訳版が出版されている。
なお、プーシキン出版からは、本作品以外に、日本の推理作家である横溝正史(1902年ー1981年)による金田一耕助シリーズ作品や日本の推理小説家 / 小説家である島田荘司氏(1948年ー)による御手洗潔シリーズ作品等の英訳版も出ている。
1986年3月26日(水)、大分県O市K大学の推理小説研究会の一行が、S半島のJ岬の沖合いに浮かぶ角島と呼ばれる無人の孤島を訪れた。一行のメンバーは、以下の通り。
(1)ポウ(Poe)- 医学部4回生
(2)カー(Carr)- 法学部3回生
(3)エラリイ(Ellery)- 法学部3回生で、会誌「死人島(Dead Island)」の現編集長
(4)ヴァン(Van)- 理学部3回生
(5)アガサ(Agatha)- 薬学部3回生
(6)オルツィ(Orczy)- 文学部2回生
(7)ルルウ(Leroux)- 文学部2回生で、会誌「死人島」の次期編集長
彼らは、欧米の有名な推理作家達に因んだニックネームで呼ばれている。
角島には、半年前の1985年9月20日に、凄惨な四重殺人事件が発生の上、全焼した「青屋敷(Blue Mansion)」の跡と十角形という奇妙なデザインの「十角館(Decagon House)」が残るだけだった。
事件後、不動産業者である(ヴァンの)伯父が角島を購入したことを聞いたヴァンが、自分が所属する推理小説研究会に話を伝え、会誌「死人島」の次期編集長であるルルウが、角島に唯一残っている「十角館」での1週間の合宿を提案したのである。
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