英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。
(21)オリエント急行(Orient Express)
緑色の列車が、オリエント急行の車輌。 |
当時、ロンドン近郊の田園都市であるサニングデール(Sunningdale)に住んでいたアガサ・クリスティーは、同年12月3日、住み込みのメイドに対して、行き先を告げず、「外出する。」と伝えると、当時珍しかった自動車を自分で運転して、自宅を出たまま、行方不明となってしまう。
「アクロイド殺し」がベストセラー化したことにより、有名人となった彼女の失踪事件は、世間の興味を非常に掻き立てた。警察は、彼女の行方を探すとともに、彼女が事件に巻き込まれた可能性も視野に入れて、捜査を進め、夫のアーチボルドも疑われることになった。マスコミは格好のネタに飛び付き、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-193年)やピーター・デス・ブリードン・ウィムジイ卿(Lord Peter Death Bredon Wimsey)シリーズの作者であるドロシー・L・セイヤーズ(Dorothy Leigh Sayers:1893年ー1957年)等が、マスコミから求められて、コメントを出している。
11日後、彼女は、保養地(Harrogate)のホテル(The Swan Hydropathic Hotel)に別人(夫アーチボルドの愛人であるナンシー・ニール(Nancy Neele)と同じ姓のテレサ・ニール(Teresa Neele))の名義で宿泊していたことが判り、保護された。
上記の通り、1926年に、アガサ・クリスティーは、キャリア面において、ベストセラー作家の仲間入りを果たすとともに、プライベート面においても、失踪事件を起こして、世間からの脚光を浴びてしまう。
上記の失踪事件を経て、1928年に、アガサ・クリスティーは、夫のアーチボルドと離婚することになる。
同年の秋、ディナーパーティーにおいて、他の出席者から勧められたオリエント急行に乗って、アガサ・クリスティーは、中東旅行へと出発して、トリエステ(Trieste)、ベオグラード(Belgrade)、イスタンブール(Istanbul)、アレッポ(Aleppo)、ダマスカス(Damascus)、そして、バグダッド(Baghdad)まで足を伸ばした。その後、メソポタミア文明の首都と見做されていたウル(Ur)の発掘現場(1925年-1931年)も訪問して、考古学者のレオナード・ウーリー(Leonard Woolley)夫妻と知り合う。
この時の経験が、後に「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1934年)に結実するのである。
英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」の ペーパーバック版の表紙 |
(22)ミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)
アガサ・クリスティーの左腕の後ろにあるのが、 ミス・ジェイン・マープル像。 |
「牧師館の殺人」は、書籍として出版された順番で言うと、ミス・マープルの初登場作品である。ただし、厳密には、1927年12月から雑誌に掲載された短編の方が、ミス・マープルの初登場作品であるものの、「牧師館の殺人」に遅れること、10年後の1930年に短編集「The Thirteen Problems(ミス・マープルと13の謎)<米題: The Tuesday Club Murders(火曜クラブ)」として出版されている。
(23)野鳥観察(Birdwatching)
ミス・マープルが、野鳥観察に使う双眼鏡(ピンク色) |
ミス・マープルが編み物に使う編み物棒(赤色) |
ロンドン郊外のセントメアリーミード村(St. Mary Mead)に住む白毛の老嬢であるミス・マープルは、ガーデンニング、野鳥観察や編み物等を趣味としており、それらを隠れ蓑にして、「人間の本性の観察」を行い、村で起きることは何でも御見通しで、最も名探偵らしくない名探偵なのである。
(25)キバナノクリンザクラ酒(Cowslip Wine)
オリエント急行の車両の前にあるのが、 ミス・マープルが友人達をもてなす際に出す 自家製のキバナノクリンザクラ酒が入った瓶。 |
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