1895年4月23日(土)、音楽の家庭教師をしているヴァイオレット・スミス嬢(Miss Violet Smith)が、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を相談に訪れたところから、物語が始まる。
他の事件を抱えていたホームズは、翌週の月曜日(同年4月25日)、ヴァイオレット・スミス嬢が住み込みの音楽の家庭教師をしているチルタン屋敷(Chiltern Grange)が所在するサリー州(Surrey)のファーナム(Farnham)へ、ジョン・H・ワトスンを単独で現地調査に赴かせたが、残念ながら、ホームズが期待するような情報を得ることはできなかった。
翌日(同年4月26日(火))の朝、ヴァイオレット・スミス嬢からの手紙が届いた。
その手紙によると、チルタン屋敷の主人であるカラザース氏(Mr. Carruthers)から求婚されたが、彼女には、既に婚約者(コヴェントリー(Coventry)で電気技師をしているシリル・モートン(Cyril Morton))が居るため、彼の申し出を断ったことで、屋敷での立場が微妙になった、とのことだった。
ヴァイオレット・スミス嬢の手紙を読んだホームズは、その日の午後、一人でサリー州へ出かけると、夜遅く、唇が切れ、額に変色した瘤(コブ)ができた顔をして、ベイカーストリート221Bへと戻って来たのである。
驚くワトスンに対して、ホームズは、自分の冒険について、愉快そうに笑いながら話し出した。
ファーナム駅(Farham Station)に着いたホームズは、パブへ入り、口の軽い主人から、ファーナム駅からチルタン屋敷へと向かう途中に建つチャーリントン屋敷(Charlington Hall)の賃借人であるウィリアムスン氏(Mr. Williamson)について、望むことを全て語ってもらった。
ホームズがパブの主人から聞き込んだ情報によると、
(1)ウィリアムスン氏は、現在、聖職者であるか、もしkは、以前、聖職者だったという噂あり。
(2)チャーリントン屋敷の滞在中、ウィリアムスン氏は、とても聖職者とは思えないような事件を、幾つか起こしていた。
(3)週末になると、物騒な連中が、チャーリントン屋敷を訪れており、ウッドリー氏(Mr. Woodley - カラザース氏の知人)は、その一人。
と言うことだった。
そこへ、近くでビールを飲んでいたウッドリー氏が、威圧的な態度で近寄って来て、ホームズを罵った後、突然、殴り掛かってきた。その結果、パブをリングにして、ホームズの左ストレートとウッドリー氏の強打によるボクシング試合となったのである。
勿論、ボクシング試合は、ホームズの勝利に終わり、ウッドリー氏は、荷車でチャーリントン屋敷へ運ばれる結果となった。
その週の木曜日(同年4月28日)、ヴァイオレット・スミス嬢から、更に、手紙が届いた。
カラザース氏からの求婚を断ったことで、屋敷に居づらくなったことに加えて、不快に感じるウッドリー氏(ホームズの左ストレートを何発も受けたため、顔が大きく変形)がまた姿を現したため、次の土曜日(同年4月30日)で、住み込みの家庭教師の職を辞するとのことだった。
ヴァイオレット・スミス嬢の周りで、何かよからぬ悪企みが進んでいる気配を感じたホームズは、時間を割いて、ワトスンを伴い、土曜日の朝、ファーナム駅へと向かった。
ファーナム駅に着いたホームズとワトスンの二人は、駅からチルタン屋敷までの約6マイルの道を歩き始めた。
チルタン屋敷へ徒歩で向かう二人は、荒野と新緑の森の間を曲がりくねる道の遠くの方から、カラザース氏が最近手に入れた馬車がこちらの方へ向かって来るのが見えた。
余裕をもって、ファーナム駅に着いたホームズであったが、ヴァイオレット・スミス嬢が、いつもよりも早い列車で、ファーナムからロンドンへ戻るつもりであることが判ったホームズは、少し慌てた。
高台を過ぎると、馬車は見えなくなってしまったが、二人が先を急ぐと、ホームズの懸念が的中して、空の馬車を引いた馬が、手綱を引き摺ったまま、曲がり角を回って、姿を現し、二人の方へと近づいて来たのである。
ホームズとワトスンの二人が駆け付ける前に、ヴァイオレット・スミス嬢は、何者かによって連れ去られてしまった後だったのだ。
果たして、彼女は、何処へ連れ去られたのか?
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