ビル・ブラッグ氏が描く ミス・マープルシリーズの長編第11作目である 「復讐の女神」の一場面 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、12番目を紹介したい。
(12)「復讐の女神(Nemesis)」(1971年)
「復讐の女神」は、1971年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第11作目である。
ミス・マープルシリーズの長編の発表順としては、次の「スリーピングマーダー(Sleeping Murder → 2022年12月1日付ブログで紹介済)」(1976年)が最後の作品であるが、同作は、アガサ・クリスティーにより、ずーっと以前に執筆されているため、執筆順としては、実質的に、「復讐の女神」が最後の作品となる。
ミス・ジェイン・マープルが、以前、体調を崩したため、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West)の手配により、カリブ海のサントノーレ島(St. Honore)にあるリゾートホテル「ゴールデンパーム(Golden Palm)」において転地療養していた際に遭遇した殺人事件(カリブ海の秘密(A Caribbean Mystery → 2023年1月4日付ブログで紹介済)」(1964年))を通して知り合いになった実業家であるジェイスン・ラフィール(Jason Rafiel)が、最近亡くなった。
まもなく、ミス・マープルの元に、ジェイスン・ラフィールの弁護士経由、彼からの手紙が届く。ジェイスン・ラフィールとしては、ミス・マープルに、ある犯罪を調べてほしい、とのことだったが、彼がミス・マープルに調べてほしい犯罪がどういったものなのかについて、具体的な手掛かりをほとんど残していなかった。
仮に、ミス・マープルが、ジェイスン・ラフィールの希望通り、その犯罪を解決することができた場合、彼から2万ポンドを相続できることになっていた。
ジェイスン・ラフィールの依頼通りに、犯罪を調べるにしても、具体的な手掛かりに乏しいミス・マープルは、彼が生前に手配した英国の有名な邸宅や庭園を巡るツアーに参加することから始めるしか、他にも手がなかった。
このツアーには、ミス・マープル以外に、15名の参加者が居り、その中には、エリザベス・テンプル(Elizabeth Temple)やミス・クック(Miss Cooke)が含まれていた。エリザベス・テンプルは、引退した学校の校長で、その学校の生徒で、ジェイスン・ラフィールにとって不名誉な息子であるマイケル・ラフィール(Michael Rafiel)と婚約していたヴェリティー・ハント(Verity Hunt)の話について、ミス・マープルに対して、聞かせてくれる。また、ミス・クックは、ミス・マープルが住むロンドン郊外のセントメアリーミード村(St. Mary Mead)において最近見かけたことがある女性だった。
更に、ジェイスン・ラフィールは、生前、知り合いの未亡人であるラヴィニア・グリン(Lavinia Glynne)に対して、手紙を書いていて、英国の有名な邸宅や庭園を巡るツアーの中で、最も体力的に厳しい数日間を、ミス・マープルが彼女の住むマナーハウスにおいて過ごすことができるよう、依頼していたのであった。どうやら、これが、ジェイスン・ラフィールがミス・マープルに残した2番目の手掛かりであると言えた。
ラヴィニア・グリンからの招待を受けて、ミス・マープルは、彼女が住むマナーハウスに滞在する。そして、そこで、ミス・マープルは、ラヴィニア、彼女の姉であるクロチルド・ブラッドベリースコット(Clotilde Bradbury-Scott)と妹であるアンシア・ブラッドベリースコット(Anthea Bradbury-Scott)の3姉妹に出会うことになる。
マナーハウスに滞在するミス・マープルが、屋敷の敷地内を見学していた際、崩れた温室を覆っているポリゴナム・バルドシュアニカム(polygonum baldschuanicum)の花が今にも咲こうとしていることに気付いた。
ミス・マープルが尋ねると、屋敷の使用人が、
・マイケル・ラフィールの婚約者だったヴェリティー・ハントは、彼女の両親が亡くなった後、ブラッドベリースコット3姉妹が住むこのマナーハウスに引き取られて、生活しており、特に長女のクロチルドに非常に懐いていた。
・しかし、その後、ヴェリティーは惨殺されてしまい、マイケルが、彼女を殺害した犯人として逮捕されて、刑務所に収監されている。
という話を聞かせてくれた。
屋敷の使用人から話を聞いたミス・マープルは、ジェイスン・ラフィールが彼女に調べてほしい犯罪とは、正にこのことだと理解したのである。
カレンダーには、マナーハウスの敷地内を見学していたミス・マープルが、温室内を覆い、今にも咲こうとしているポリゴナム・バルドシュアニカムの花を眺めているシーンが描かれている。
ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストでは、ポリゴナム・バルドシュアニカム(日本名は、「ナツユキカズラ」だと思われる)の花の色は「黄色」で描かれているが、実際には、「白色」が正当である。
筆者が保有する株式会社北隆館発行の「学生版原色牧野日本植物図鑑」には、 残念ながら、ポリゴナム・バルドシュアニカム(日本名:「ナツユキカズラ」)は記載されていないが、 同じポリゴナム属で、花が白いものを抜粋。 |
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