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| 英国の The Orion Publishing Group Ltd. から2020年に出ている ジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」から抜粋。 テムズ河(River Thames)を遡る船の上に、 元ミラノ大公のプロスペロウ(左側の人物)と 彼の娘のミランダ(右側の人物)が乗船している。 <筆者撮影> |
米国の小説家/詩人で、かつ、雑誌編集者で、名探偵の C・オーギュスト・デュパン(C. Auguste Dupin → 2017年12月4日付ブログで紹介済)を生み出していたエドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe:1809年ー1849年 → 2022年12月31日付ブログで紹介済)が米国の雑誌である「グラハムズ マガジン(Graham's Magazine)」の1842年5月号に発表した短編「赤死病の仮面(The Masque of the Red Death → 2025年11月25日 / 11月30日 / 12月3日付ブログで紹介済)」の場合、ある国において、「赤死病(Red Death - ひとたび罹患すると、まず最初に、胃に焼けるような痛みを感じ、続いて、眩暈が起こり、最後には、全身から血が吹き出して、死に至ると言う非常に恐ろしい疫病)」と呼ばれる疫病が至るところで蔓延している状況から、その物語が始まる。
「赤死病」により国内の半分の人々が亡くなると、勇敢で賢明な国王プロスペロウ(Prince Prospero)は、疫病の魔の手から逃れるために、健康な臣下達と友人達の千人を引き連れて、都市を離れると、森の中に所在し、周囲を高くて強固な城壁が取り巻く城砦の奥に立て籠もる。
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| 英国の Penguin Books Ltd. から2008年に出版された Penguin Readers シリーズの1冊である エドガー・アラン・ポー作 「黒猫とその他の物語(The Black Cat and Other Stories)」の表紙 Cover illustration by Julian De Narvaez |
エドガー・アラン・ポー作の短編「赤死病の仮面」に登場する国王プロスペロウの名前は、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)作の戯曲「テンペスト(The Tempest)」(1610年ー1611年頃)に出てくる魔術師のプロスペロウに因んでいるものと思われる。
実際、ウィリアム・シェイクスピア作の戯曲「テンペスト」において、「赤い疫病」にかかる言及が為されている。
戯曲「テンペスト」は、ウィリアム・シェイクスピアが単独で執筆した最後の作品と言われており、1611年11月1日に宮廷で初演された。
なお、「テンペスト」とは、「嵐」を意味している。
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| 英国の The Orion Publishing Group Ltd. から2020年に出ている ジグソーパズル「シェイクスピアの世界」(1000ピース) |
ミラノ大公(Duke of Milan)だったプロスペロウ(Prospero)は、12年前に、邪悪な弟のアントーニオ(Antonio)により、その座を奪われて追放された後、娘のミランダ(Miranda)と一緒に、絶海の孤島に隠れ住んでいた。プロスペロウは、孤島での長い生活の間に、魔法を習得して、妖精や悪鬼等を思いのままに操ることができるようになっていた。
ある日、ナポリ王(King of Naples)のアロンゾー(Alonso)とミラノ大公のアントーニオを乗せた船が、孤島の近くを通りかかった際、プロスペロウは、彼の手下である妖精のエアリエル(Ariel)に命じて、魔法で大嵐を起こして、難破させた。そして、彼らを孤島へと漂着させて、復讐に着手しようとしたのである。
難破した船には、他に、ナポリ王の弟セバスチャン(Sebastian)、ナポリ王の息子ファーディナンド(Ferdinand)、そして、ナポリ王の顧問官ゴンザーロー(Gonzalo)等も、乗船していた。
父であるナポリ王の一行と離れ離れになった王子のファーディナンドは、ミランダに出会い、2人は一目で恋に落ちる。ファーディナンドは、ミランダの父であるプロスペロウから課せられた試練を勝ち抜いて、彼女との結婚を許されることになる。
一方、ミラノ大公の地位から更に上を目指すアントーニオは、ナポリ王の弟セバスチャンを唆して、ナポリ王のアロンゾーの殺害を計画していた。
更に、孤島に棲む怪物キャリバン(Caliban)は、プロスペロウに服従していたが、叛旗を翻して、同じく孤島へ漂着したナポリ王の執事ステファーノ(Stephano)と道化師トリンキュロ(Trinculo)を自分の味方へとつけ、プロスペロウを殺そうと考えていた。
しかし、どちらの計画も、エアリエルによって、未然に防がれた。
プロスペロウは、魔法によって、ナポリ王のアロンゾーとミラノ大公のアントーニオ達を錯乱状態へと一旦は陥れるが、更なる復讐を思い止まった。そして、アントーニオが過去の罪を悔い改めることを以って、プロスペロウは、全てを水に流して、赦すことに決めた。
アントーニオ達と和解したプロスペロウは、ナポリ王のアロンゾー達をナポリへと送り、そこで、ファーディナンドとミランダの結婚式を挙行するとともに、魔法の力を捨て去って、エアリエルを自由の身とするのであった。
「テンペスト」は、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲の中でも、非常に人気がある作品で、2012年のロンドン・オリンピック閉会式において、物語の舞台となる魔法の島を模したセットが出てきたり、そこで戯曲の一部が朗読されたりした。
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| BBC ブロードキャスティングハウスのオリジナル部分 <筆者撮影> |
英国のTV会社 ITV1 が放映していたエルキュール・ポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「戦勝記念舞踏会事件(The Affair at the Victory Ball)」(1991年)において、撮影に使用された BBC ブロードキャスティングハウス(BBC Broadcasting House → 2015年11月8日付ブログで紹介済)は、ロンドンの中心部オックスフォードサーカス(Oxford Circus)の北側、リージェンツパーク(Regent’s Park → 2016年11月19日付ブログで紹介済)へ向かって北上するリージェントストリート(Regent Street)が名前を変えるランガムプレイス(Langham Place)とポートランドプレイス(Portland Place)の中間辺りに建っている。
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| BBC ブロードキャスティングハウスの外壁に設置されている プロスペロウとエアリエルの彫像 <筆者撮影> |
BBC ブロードキャスティングハウスの外壁には、ウィリアム・シェイクスピア作の戯曲「テンペスト」を題材にした彫像が設置されている。
彫像の2人は、主人公のプロスペロウとエアリエル(空気の精)である。エアリエルが選ばれたのは、ラジオの電波が空気を通って伝わるからではないかと言われている。







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