| 下から「ホガースの階段(Hogarth Staircase)」と呼ばれる 吹き抜け階段を見上げたところ - アーサー・ヘイスティングス中尉と旧友のジョン・キャヴェンティッシュの2人が 上から降りて来る場面が、この角度で撮影されている。 <筆者撮影> |
| 吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「善きサマリア人」(右側)と 「ベテスダの池」(左側) <筆者撮影> |
物語の冒頭、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス中尉(Lieutenant Arthur Hastings - アガサ・クリスティーの原作では、大尉(Captain)となっている)は、病院において、他の負傷兵に混じり、戦争記録映画を見ている。
そこへ、彼の旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish)が訪ねて来る。そして、ジョン・キャヴェンディッシュは、ヘイスティングス中尉をスタイルズ セントメアリー村(Styles St. Mary)のスタイルズ荘(Styles Court)へ招待した。
| 吹き抜け階段の途中から見たクリスマスツリー <筆者撮影> |
ジョン・キャヴェンディッシュがヘイスティングス中尉に対して、「義理の母のエミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop / スタイルズ荘の持ち主)が、20歳も年下のアルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop)と再婚した。」等、スタイルズ荘における内情を説明する場面は、セントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital → 2014年6月14日付ブログで紹介済)の北翼(North Wing)にある「ホガースの階段(Hogarth Staircase)」と呼ばれる吹き抜け階段において撮影されている。
| 吹き抜け階段を真下から見上げたところ <筆者撮影> |
「バーツ北翼(Barts North Wing)」と呼ばれる建物は、その内装の劣化が激しかったため、数年間に及ぶ改修工事を経て、2025年10月6日に一般公開された。
| 吹き抜け階段にあるシャンデリアのアップ <筆者撮影> |
「スタイルズ荘の怪事件」の撮影に使用された吹き抜け階段には、ロココ(Rococo)時代の英国の画家であるウィリアム・ホガース(William Hogarth:1697年ー1764年)による聖書を題材にした2つの巨大な壁画が描かれていて、ヘイスティングス中尉と旧友のジョン・キャヴェンディッシュの2人が吹き抜け階段を降りて来る際、画面上で確認できる。
| 吹き抜け階段の天井のアップ <筆者撮影> |
(1)右側の壁:「善きサマリア人(The Good Samaritan)」(1737年)
サマリア人善意で救命行為を行なっている場面が描かれている。
| 吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「善きサマリア人」 <筆者撮影> |
(2)左側の壁:「ベテスダの池(The Pool of Bethesda)」(1736年)
万病を治す聖なる池において、病人が傷を癒している場面が描かれている。
| 吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「ベテスダの池」 <筆者撮影> |
幼少期より貧窮生活に苦しんだウィリアム・ホガースは、画家として、当時の世相を痛烈に風刺する連作絵画を制作し、世間に知られるようになったが、セントバーソロミュー病院北翼の吹き抜け階段の壁画に関しては、病院と言う性格上、聖書を題材にした内容となっている。
なお、ウィリアム・ホガースは、セントバーソロミュー病院の理事も務めている。

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