2025年12月15日月曜日

<第2000回> セントバーソロミュー病院 / 北翼(St. Bartholomew's Hospital / North Wing)- その1

下から「ホガースの階段(Hogarth Staircase)」と呼ばれる
吹き抜け階段を見上げたところ -
アーサー・ヘイスティングス中尉と旧友のジョン・キャヴェンティッシュの2人が
上から降りて来る場面が、この角度で撮影されている。
<筆者撮影>

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「スタイルズ荘の怪事件The Mysterious Affair at Styles → 2023年12月3日 / 12月6日付ブログで紹介済)」(1920年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第20話(第2シリーズ)かつアガサ・クリスティー生誕100周年記念スペシャルとして、1990年9月16日に放映されている。

吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「善きサマリア人」(右側)と
「ベテスダの池」(左側)
<筆者撮影>

物語の冒頭、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス中尉(Lieutenant Arthur Hastings - アガサ・クリスティーの原作では、大尉(Captain)となっている)は、病院において、他の負傷兵に混じり、戦争記録映画を見ている。

そこへ、彼の旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish)が訪ねて来る。そして、ジョン・キャヴェンディッシュは、ヘイスティングス中尉をスタイルズ セントメアリー村(Styles St. Mary)のスタイルズ荘(Styles Court)へ招待した。


吹き抜け階段の途中から見たクリスマスツリー
<筆者撮影>

ジョン・キャヴェンディッシュがヘイスティングス中尉に対して、「義理の母のエミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop / スタイルズ荘の持ち主)が、20歳も年下のアルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop)と再婚した。」等、スタイルズ荘における内情を説明する場面は、セントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital → 2014年6月14日付ブログで紹介済)の北翼(North Wing)にある「ホガースの階段(Hogarth Staircase)」と呼ばれる吹き抜け階段において撮影されている。


吹き抜け階段を真下から見上げたところ
<筆者撮影>


「バーツ北翼(Barts North Wing)」と呼ばれる建物は、その内装の劣化が激しかったため、数年間に及ぶ改修工事を経て、2025年10月6日に一般公開された。


吹き抜け階段にあるシャンデリアのアップ
<筆者撮影>

スタイルズ荘の怪事件」の撮影に使用された吹き抜け階段には、ロココ(Rococo)時代の英国の画家であるウィリアム・ホガース(William Hogarth:1697年ー1764年)による聖書を題材にした2つの巨大な壁画が描かれていて、ヘイスティングス中尉と旧友のジョン・キャヴェンディッシュの2人が吹き抜け階段を降りて来る際、画面上で確認できる。


吹き抜け階段の天井のアップ
<筆者撮影>


(1)右側の壁:「善きサマリア人(The Good Samaritan)」(1737年)

サマリア人善意で救命行為を行なっている場面が描かれている。


吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「善きサマリア人」
<筆者撮影>

(2)左側の壁:「ベテスダの池(The Pool of Bethesda)」(1736年)

万病を治す聖なる池において、病人が傷を癒している場面が描かれている。


吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「ベテスダの池」
<筆者撮影>

幼少期より貧窮生活に苦しんだウィリアム・ホガースは、画家として、当時の世相を痛烈に風刺する連作絵画を制作し、世間に知られるようになったが、セントバーソロミュー病院北翼の吹き抜け階段の壁画に関しては、病院と言う性格上、聖書を題材にした内容となっている。


なお、ウィリアム・ホガースは、セントバーソロミュー病院の理事も務めている。


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