2025年2月20日木曜日

アガサ・クリスティー作「杉の柩」<英国 TV ドラマ版>(Sad Cypress by Agatha Christie )- その4

日本の株式会社 早川書房から出ている
クリスティー文庫18「杉の柩」の表紙
 < Photograph : HIROAKI OTA / amana images
Cover Design : Hayakawa Design >

英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第51話(第9シリーズ)として、2003年12月26日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作杉の柩(Sad Cypress)」(1940年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。


(17)

<原作>

ピーター・ロード医師(Dr. Peter Lord - ローラ・ウェルマン(Mrs. Laura Welman - 富豪の未亡人)の主治医)からの依頼を受けたエルキュール・ポワロは、勾留中のエリノア・カーライル(Elinor Carlisle - ローラ・ウェルマンの姪)と面会するために、マーズデン警部(Inspector Marsden)に仲介を頼んでいる。

<英国 TV ドラマ版>

マーズデン警部に仲介を頼んだのかどうかについては言及されていないものの、エルキュール・ポワロは、勾留中のエリノア・カーライルと無事面会できている。


(18)

<原作>

エルキュール・ポワロは、勾留中のエリノア・カーライルと面会する前に、事件の関係者達への訪問を既に済ませている。

<英国 TV ドラマ版>

エルキュール・ポワロは、勾留中のエリノア・カーライルとの面会を済ませてから、事件の関係者達への訪問を始めている。


(19)

<原作>

依頼者であるピーター・ロード医師を除くと、エルキュール・ポワロによる事件の関係者達への訪問は、以下の順番。

*ジェシー・ホプキンズ(Jessie Hopkins - ローラ・ウェルマンの看護婦)

*エマ・ビショップ(Emma Bishop - ウェルマン家の召使頭)

テッド・ビグランド(Ted Bigland - 農場を営むルファス・ビグランドの息子で、ヘンダースンが経営する自動車整備工場に勤務する青年

*ロディー・ウェルマン(Roddy Welman - ローラ・ウェルマンの亡き夫の甥 / エリノア・カーライルの従兄で、彼女の元婚約者)

*エドマンド・セドン(Edmund Seddon - ローラ・ウェルマンの弁護士)

*アイリーン・オブライエン(Eileen O’Brien - ローラ・ウェルマンの看護婦)

ホーリック(Horlick - ウェルマン家の庭師)

<英国 TV ドラマ版>

依頼者であるピーター・ロード医師を除くと、エルキュール・ポワロによる事件の関係者達への訪問は、以下の順番。

*ジェシー・ホプキンズ

*テッド・ホーリック(Ted Horlick - ウェルマン家の庭師)

*ロディー・ウィンター(Roddy Winter)

*アイリーン・オブライエン

原作におけるテッド・ビグランドとホーリックの2人が、英国 TV ドラマ版の場合、テッド・ホーリックと言う一人の人物に統合されている。

エリノア・カーライルの婚約者は、原作の場合、ロディー・ウェルマンになっているが、英国 TV ドラマ版の場合、ロディー・ウィンターに変更されている。

また、英国 TV ドラマ版の場合、原作に比べると、ウェルマン家の召使頭であるエマ・ビショップの出番は、非常に少ない。


(20)

<原作>

海外(フランス等)へ出ていたロディー・ウェルマンは、自分のアリバイとして、当初、「8月1日に英国へ戻って来た。」と嘘をついていたが、パスポートの記録を調べたエルキュール・ポワロに対して、「ロンドンに居るメアリー・ジェラード(Mary Gerrard - ウェルマン家の門番の娘)に会うために、早めに戻って来た。」ことを白状する。

<英国 TV ドラマ版>

ロディー・ウィンターは、エルキュール・ポワロ に対して、最初から、「メアリー・ジェラードにプロポーズするために、早めに英国へ戻って来た。」と告げている。


(21)

<原作>

エリノア・カーライルに対して、メアリー・ジェラード毒殺事件にかかる判決が下される前に、真犯人が明らかにされ、無罪となる。

<英国 TV ドラマ版>

真犯人が明らかにされる前に、エリノア・カーライルに対して、メアリー・ジェラード毒殺事件にかかる有罪判決が下されて、絞首刑が宣告される。


(22)

<原作>

エルキュール・ポワロが勾留中のエリノア・カーライルと面会するのは、1回のみ。

<英国 TV ドラマ版>

エルキュール・ポワロが勾留中のエリノア・カーライルと面会するのは、有罪判決前と有罪判決後の2回。


(23)

<原作>

法廷において、メアリー・ジェラードを毒殺した真犯人が明らかにされ、事件は解決する。

<英国 TV ドラマ版>

エルキュール・ポワロ は、ハンターベリー邸(Hunterbury)に、事件の関係者であるピーター・ロード医師、ロディー・ウィンター、アイリーン・オブライエン、そして、ジェシー・ホプキンズを呼んで、メアリー・ジェラードを毒殺した真犯人が明らかにする。


(24)

<原作>

メアリー・ジェラードを毒殺した真犯人は、法廷から逃げた後、行方不明となり、その後、警察に逮捕されたのかどうかについては、言及されていない。

<英国 TV ドラマ版>

メアリー・ジェラードを毒殺した真犯人は、エルキュール・ポワロを毒殺しようとしたが、ポワロに見抜かれてしまい、彼の殺害計画は不成功に終わる。そこへ踏み込んだ来たマーズデン警部を初めとする警察に逮捕される。


そして、絞首刑が執行される直前に、エリノア・カーライルの無罪放免を勝ち得たエルキュール・ポワロ は、彼女に対して、「Wanting a death is not a crime.」と告げた後、刑務所の前で待っていたピーター・ロード医師に彼女を託して、物語は終わりを迎える。


          

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