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英国のプーシキン出版(Pushkin Press)から 2023年に刊行されている Pushkin Vertigo シリーズの一つである 横溝正史作「悪魔が来りて笛を吹く」の内表紙 (Cover design by Anna Morrison) |
1947年(昭和22年)9月28日、東京都大森の山手地区に所在する割烹旅館である松月館(Pine Moon Inn)にその身を置く金田一耕助(Kosuke Kindaichi)の元を、元子爵(former Viscount)である椿 英輔(Hidesuke Tsubaki - 享年:43歳)の娘 美禰子(Mineko Tsubaki)が訪れる。
同年1月15日に発生した「天銀堂事件(Tengindo murders)」の容疑者として疑われ、警察に取り調べられた椿 英輔元子爵は、その後、失踪。約1ヶ月半後の同年4月14日、長野県の霧ヶ峰(Mount Kirigamine)において、彼の遺体が見つかる。
失踪した椿 英輔元子爵は、娘の美禰子に遺書を残していた。その遺書には、「父は、これ以上の屈辱と不名誉に耐えていくことはできないのだ。これが暴露されると、由緒ある椿の家名も、泥沼の中へ落ちてしまう。ああ、悪魔が来りて笛を吹く。(I can bear no more humiliation and disgrace. If this story comes to light, the good name of the Tsubaki family will be cast into the mud. Oh, the devil will indeed come and play his flute.)」と書かれてあったのである。
一方で、椿 美禰子の母親である椿 秌子(Akiko Tsubaki)が、最近、椿 英輔元子爵らしき人物を目撃した、とのこと。
夫である椿 英輔元子爵を目撃した椿 秌子が、何故か、非常に怯えているため、「父が本当に生きているかどうかについて、椿家で砂占い(divination)で確かめることになった。」と、椿 美禰子は、金田一耕助に対して、その「砂占い」への同席を依頼した。
椿 美禰子の依頼に応じて、金田一耕助は、麻布六本木(Azabu Roppongi)に所在する椿家の屋敷へと出向く。それは、翌日の1947年9月29日の午後8時だった。
東京大空襲を受けて、麻布六本木一帯も焼け野原と化していたが、奇跡的に、椿家の屋敷は無傷のまま残っていた。
なお、椿家には、以下の人物が居住していた。
(1)椿 秌子(40歳)
(2)椿 美禰子(19歳)
(3)信乃(Shino - 62歳位):椿 秌子の乳母
(4)三島東太郎(Totaro Mishima - 23歳位):椿家の書生
(5)お種(Otane - 23歳位):椿家の女中
(6)目賀重亮(Jusuke Mega - 52歳位):椿 秌子の主治医
(7)新宮利彦(Toshihiko Shingu - 43歳):椿 秌子の兄で、元子爵
(8)新宮華子(Hanako Shingu - 40歳位):新宮利彦の妻
(9)新宮一彦(Kazuhiko Shingu - 21歳):新宮利彦の息子で、椿 美禰子の従兄
(10)玉虫公丸(Kimimaru Tamamushi - 70歳):新宮利彦 / 椿 秌子の伯父で、元伯爵 / 元貴族院議員
(11)菊江(Kikue - 23歳位):玉虫公丸の小間使いで、妾
その椿家において、計画停電を利用した「砂占い」が行われる。
計画停電が終わると同時に、椿 英輔元子爵が作曲した「悪魔が来りて笛を吹く(The Devil Comes and Plays His Flute)」のフルート演奏が、椿家の屋敷内に響き出した。
「砂占い」に出席した皆が調べたところ、レコードプレーヤーによる仕掛けであることが判明したが、皆が席を外している間に、「砂占い」に出た「火焔太皷(Flaming Drum)」のような模様を目撃した屋敷内の一部の人達は、複雑な表情を見せる。
そのことに気付いた金田一耕助に対して、椿 美禰子は、「その火焔太皷のような模様について、父が残した手帳に、「悪魔の紋章(Devil’s Mark)」と書かれていた。」と告げた。
「砂占い」が終わったその日の深夜3時頃、椿家に居候している玉虫公丸元伯爵が殺害されているのが発見された。
それと時を同じくするように、フルートを持った椿 英輔元子爵と思われる男が屋敷の庭に現れて、フルートを奏でる姿が目撃される。
更に、玉虫公丸元伯爵の殺害現場には、椿 英輔元子爵が「悪魔の紋章」と呼んだ火焔太皷の模様が、血で描かれていたのである。
警察は、椿家の庭から、椿 英輔元子爵のフルートケースを発見したが、その中から、「天銀堂事件」で奪われた宝石が見つかる。
果たして、椿 英輔元子爵は、警察が疑った通り、本当に「天銀堂事件」の真犯人なのか?
また、長野県の霧ヶ峰で見つかった遺体は、椿 英輔元子爵その人だったのか?それとも、その遺体は別の人物で、椿 英輔元子爵は未だ生きていて、何らかの理由で、椿家に対して、復讐を遂げようとしているのか?

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