英国の物理学者 / 結晶学者で、DNA の二重螺旋構造の解明で知られているロザリンド・エルシー・フランクリン(Rosalind Elsie Franklin:1920年ー1958年 → 2024年12月30日付ブログで紹介済)が住んでいた家が、ロンドンの中心部にあるケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)のチェルシー地区(Chelsea)内に所在している。
地下鉄サウスケンジント駅(South Kensington Tube Station)から地下鉄ウェストブロンプトン駅(West Brompton Tube Station)へ向かって南西に延びるオールドブロンプトンロード(Old Brompton Road)と、オールドブロンプトンロードの南側を同じく南西に延びるフラムロード(Fulham Road)を南北に繋ぐドレイトンガーデンズ(Drayton Gardens)と言う通りが存在している。
ドレイトンガーデンズとフラムロードが交差する角に近いドレイトンガーデンズ107番地(107 Drayton Gardens)にあるドノヴァンコート(Donovan Court - 107 Drayton Gardens, Chelsea, London SW10 9QS)と言うフラットが、それに該る。
ロザリンド・フランクリンは、1920年7月25日、ロンドンに住むユダヤ人家系の銀行家の家庭に、6人兄妹の長女として出生。
両親が裕福だったため、彼女は9歳から寄宿学校に入学して、可能な限り最高の教育を受けた。
寄宿学校を卒業した後、ロザリンド・フランクリンは、ケンブリッジ大学のニューナムカレッジ(Newnham College)に入学。当時、ケンブリッジ大学は、女性とユダヤ人の入学を認めてから、間もない頃だったが、彼女は、ニューナムカレッジをトップクラスの成績で卒業すると、大学院へと進んだ。
第二次世界大戦(1939年-1945年)中、石炭の結晶構造にかかる研究を進め、1945年(25歳)、ケンブリッジで物理化学の博士号を取得して、1947年には、パリの国立化学研究所へ留学、黒鉛の結晶構造にかかる研究を行った。
フランス留学から帰国したロザリンド・フランクリンは、1950年にロンドン大学(University of London)のキングスカレッジ(King’s College)に研究職を得ると、X線による DNA 構造の解析を研究テーマとして与えられた。
彼女は、この研究に没頭し、1953年に、DNA の螺旋構造の解明に繋がる X線回折写真の撮影に成功、これが「photo51」と呼ばれている。
ロザリンド・フランクリンは、キングスカレッジにおいて、彼女よりも前から、X線回折による DNA の構造研究を進めていたモーリス・ヒュー・フレデリック・ウィルキンス(Maurice Hugh Frederick Wilkins:1916年ー2004年 / 英国の生物物理学者)との間で、DNA の構造研究をめぐり、しばしば衝突。
モーリス・ウィルキンスは、彼女が撮影したX線回折写真を、ケンブリッジ大学キャヴェンディッシュ研究所(Cavendish Laboratory)に在籍していたフランシス・ハリー・コンプトン・クリック(Francis Harry Compton Crick:1916年ー2004年 / 英国の科学者・生物学者 → 2025年1月8日付ブログで紹介済)とジェイムズ・デューイ・ワトスン(James Dewey Watson:1928年ー / 米国出身の分子生物学者 → 2025年1月19日付ブログで紹介済)に見せる。これが、DNA の二重螺旋構造解明の手掛かりへと繋がるが、後に大問題の引き金となる。
ロザリンド・フランクリンが撮影したX線回折写真を元に、 DNA の二重螺旋構造を解明したフランシス・クリック、ジェイムズ・ワトスンとモーリス・ウィルキンスの3人は、1962年にノーベル生理学・医学賞を受賞。
ロザリンド・フランクリン自身は、1958年4月16日に、卵巣癌と巣状肺炎により、37歳で亡くなっていたため、残念ながら、ノーベル生理学・医学賞受賞の栄誉を得ることはできなかった。一説によると、X線による DNA 構造の解析のため、大量のX線を浴びたことが、彼女の癌の原因だと言われている。
ドレイトンガーデンズ107番地ドノヴァンコートの入口の右上に架けられているブループラーク(Blue Plaque)によると、「ロザリンド・フランクリンは、1951年から1958年にかけて、ここに住んでいた」と記されているので、時期的には、フランス留学から帰国した後、ロンドン大学のキングスカレッジにおいて、X線による DNA 構造の解析を始めた頃から、卵巣癌と巣状肺炎により亡くなる頃までの間と言える。

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