2025年10月29日水曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その6

ジグソーパズルの上部のやや右側に、
赤い服を着た正装したエミリー・キャロライン・ブレントが顔の前で両手を合わせている場面が、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)

(5)(24)エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent)

信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(65歳)は、高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)や元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)と同じく、ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)12時40分発の列車に乗り、オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かっていた。

パディントン駅のコンコースとそれを覆うガラス屋根
<筆者撮影>

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、一等喫煙車に乗っていたが、エミリー・キャロライン・ブレントが乗っていたのは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンやフィリップ・ロンバードと同じ三等車だった。ただし、彼女は、別の車両(禁煙者)に乗車していた。


エミリー・キャロライン・ブレントは、デヴォン州(Devon)海岸の沖合いの島で旅館を開業しようとしている U. N. O. と言う人物から招待されて、兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へと赴く途中だった。

U. N. O. と名乗る人物によると、数年前の8月、ベルヘイヴンの旅館において、エミリー・キャロライン・ブレントに会ったことがある、とのことだった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


名前は何だったのかしら。名字の部分がいやに読みづらかった。”ひどくくずした字でサインする人が多いから、困るわ” エミリー・ブレントはいらいらした。

ベルヘイヴンで出会った人たちを思い浮かべてみた。ミス・ブレントはそこに、二夏続けて行ったのだ。感じのいい、中年女性がいたっけ - たしか、ミス - ミスなんとか - ああ、なんて名前だったかしら。お父さんが聖堂参事会員だったと言っていたけれど - ほかにもミセス・オルトンとか - オーメンとか - いえ、そうじゃなくて、たしかオリヴァーだったわ! そう、オリヴァーよ。

兵隊島! そう言えば、その島の話が新聞にのっていたわねえ。映画スターがどうのこうの - それとも、大富豪のアメリカ人の話だったかしら。

そういう場所は、きっと値段もぐんと安いのにちがいない。島というのは、万人向けではない。島と聞けば、ロマンティックと思うけれど、実際に住んでみれば、不便とわかり、すぐに売りに出されるのだ。

”とにかく、夏休みをただですごせるんだから”と、エミリー・ブレントは思った。

収入が大幅に減ったうえに、投資の配当金ももらえないことが多かったから、本当に耳よりな話だった。とはいえ、ミセス・オリヴァーのことが - ミスだったかしら - もうちょっと思いだせると、いいんだけれどねえ!

(青木 久惠訳)


ジグソーパズルの上部のやや右側に、赤い服を着た正装したエミリー・キャロライン・ブレントが、顔の前で両手を合わせている場面が、赤枠で囲まれている。また、兵隊島に建つ邸宅の2階の一番右端が、エミリー・キャロライン・ブレントの部屋で、その窓辺に佇む彼女の姿が見られる。


兵隊島に建つ邸宅の2階の一番右端が、エミリー・キャロライン・ブレントの部屋で、
その窓辺に佇む彼女の姿が見られる。
<筆者撮影>


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

エミリー・キャロライン・ブレントは、以前、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor)と言う娘を使っていたが、誰の子か判らない子を身ごもったため、彼女を解雇。また、ビアトリス・テイラーの両親も、娘の不始末を許さなかったので、彼女は、川に身を投げて、自分の命を絶っている。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、エミリー・キャロライン・ブレントは、5番目の被害者となる。


Six little soldier boys playing with a hive; A bumble-bee stung one and then there were Five.

(6人の子供の兵隊さんが、蜂の巣に悪戯をした。一人が蜂に刺されて、残りは5人になった。)


信仰心の厚い老婦人であるエミリー・キャロライン・ブレントは、
他のゲスト達が朝食の後片付けをしている最中、食堂に一人残っていた。
その時、
皮下注射器に入った青酸カリが入った皮下注射器を首筋に刺されて、5番目の犠牲者となる。 -
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:エミリー・キャロライン・ブレント

*告発された罪状:以前、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor)と言う娘を使っていたが、誰の子か判らない子を身ごもったため、彼女を解雇。また、ビアトリス・テイラーの両親も、娘の不始末を許さなかったので、彼女は、川に身を投げて、自分の命を絶っている。



エミリー・キャロライン・ブレントの死亡に伴い、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が6個から5個へと減っていた。
画面左側から、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(秘書)、フィリップ・ロンバード(元陸軍大尉)、
ウィリアム・ヘンリー・ブロア(元警部)、エドワード・ジョージ・アームストロング(医師)、
そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(元判事)
の5人
が立っている。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*犯罪発生時期:1931年11月5日

*死因:皮下注射器に入った青酸カリによる中毒死


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