2025年10月28日火曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その5

ジグソーパズルの上部のやや左側に、
正装したフィリップ・ロンバードが左手に拳銃を構えている場面が、赤枠で配置されている。
<筆者撮影>

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)

(4)(25)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard)

元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバードは、高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)や体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)と同じく、ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)12時40分発の列車に乗り、オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かっていた。

パディントン駅のコンコースとそれを覆うガラス屋根
<筆者撮影>


ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、一等喫煙車に乗っていたが、フィリップ・ロンバードが乗っていたのは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンと同じ三等車で、それも彼女の向かいの席に座っていたのである。


フィリップ・ロンバードは、ユダヤ人のアイザック・モリス(Issac Morris)から内密の仕事を依頼されて、兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へと赴く途中だった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


それにしても今度の仕事は、いったいどういうことなんだ。ロンバードは不思議でならなかった。あのチビのユダヤ人、やたら謎めいたことを言っていたなあ。

「ロンバード大尉さん、いやならいやで、いいんですよ。」

そう言われて、ロンバードは考えながら言った。

「百ギニーかい」

彼は百ギニーなんて金のうちに入らないような、軽い調子でそう言った。あと一回まともな食事をしたら、財布の中はすっからかんだというのに! でもあのユダヤ人にはそのことが、ちゃんとわかっていたにちがいない。しゃくにさわるのは、そこだ。こと金に関する限り、やつらの目は絶対にごまかせない - すべて、お見とおしだ!

ロンバードは軽い調子のまま、続けた。

「それ以上はなにも教えてもらえないわけかい」

アイザック・モリスは、小さなハゲ頭をきっぱりふった。

「そうです。いまお話ししたことだけです。この話を持ってきたお客さんの話だと、ロンバード大尉さん、あんたはピンチに強いという評判だとか。デヴォン州スティクルヘイヴンに行ってもらえるんなら、百ギニーお払いするように、言いつかっています。オークブリッジ駅まで列車で行ってもらえば、迎えの者がスティクルヘイヴンまで車で送ります。そこから兵隊島には、モーターボートですね。島に着いたら、お客さんの指図に従ってください」

ロンバードはだしぬけに質問した。

「期間は?」

「長くても、一週間以上にはなりません」

短い口ひげをひねって、ロンバード大尉は言った。

「わかっているんだろうね - 不正なことは、いっさいお断りなんだよ」

そう言いながらロンバードは、相手を、チラッと見た。真面目くさって答えるモリスのユダヤ人らしい厚ぼったい唇に、薄笑いがかすかににじんだ。

「不正なことをするように言われたら、もちろんその場で引いてもらって、かまいませんよ」

ネコっかぶりめ、笑いやがった! ロンバードの過去の行動から推して、不正かどうかなんて、ろくに気にしないことを見すかしたような、笑い方だった。

ロンバード自身の唇も、ニヤリと笑いくずれた。

たしかに危ない橋を渡ったことも、一度や二度あったっけな。でもいつも、なんとか切り抜けた。彼があまりこだわらないのは、本当のことだった…

四の五の言う気はない。兵隊島とやら、けっこうおもしろそうじゃないか…

(青木 久惠訳)


兵隊島に建つ邸宅の入口の上にある窓の向こうの廊下を、
右手にロウソクを持ち、左手に拳銃を構えた正装のフィリップ・ロンバードが進んでいる姿が描かれている。
<筆者撮影>


ジグソーパズルの上部のやや左側に、正装したフィリップ・ロンバードが、左手に拳銃を構えている場面が、赤枠で囲まれている。また、兵隊島に建つ邸宅の入口の上にある窓の向こうの廊下を、右手にロウソクを持ち、左手に拳銃を構えた正装のフィリップ・ロンバードが進んでいる姿が見られる。


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた召使と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と召使夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

フィリップ・ロンバードは、東アフリカにおいて先住民族から食料を奪った後、彼ら21人を見捨てて死なせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年6月26日付ブログで紹介済)」に準えて、フィリップ・ロンバードは、9番目の被害者となる。


Two little soldier boys sitting in the sun; One got frizzled up and then there was One.

(2人の子供の兵隊さんが、日光浴をしていた。一人が焼け焦げになって、残りは1人になった。)


画面中央に立つ水色の服を着た人物が、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン。
彼女の左側に横たわる黄色いシャツに焦げ茶色のズボンの人物が、フィリップ・ロンバードで、
彼女の右側に横たわる緑色のスーツを見た人物が、
医師のエドワード・ジョージ・アームストロングである。
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。

*被害者:フィリップ・ロンバード

*告発された罪状:東アフリカの部族民21名を死に追いやったと告発された。

*犯罪発生時期:1932年2月のある日



原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、

彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。

つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版の場合、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードに向けて、
拳銃を3発発射しているので、原作とは内容が異なる。


*死因:射殺

海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong - 医師)の溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。


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