2025年10月1日水曜日

アガサ・クリスティー作「秘密機関」<小説版>(The Secret Adversary by Agatha Christie )- その3

2015年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「秘密機関」の
ペーパーバック版の裏表紙
(Cover design : 
HarperCollinsPublishers Ltd. /
Agatha Christie Ltd. 2015
)

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の長編第2作目で、かつ、トマス・ベレズフォード(Thomas Beresford - 愛称:トミー(Tommy))とプルーデンス・カウリー(Prudence Cowley - 愛称:タペンス(Tuppence))の記念すべきシリーズ第1作目に該る「秘密機関(The Secret Adversary)」(1922年)の場合、1915年5月7日の午後2時、アイルランド(Ireland)沖15㎞ の地点である大西洋(Atlantic Ocean)上において、米国ニューヨーク(New York)から英国リヴァプール(Liverpool)へと向かっていた旅客船ルシタニア号(RMS Lusitania → 2025年7月22日 / 7月23日付ブログで紹介済)が、ドイツ帝国海軍(Imperial Germany Navy)の潜水艦 Uボート(U-boat)から2発の魚雷攻撃を受けて、沈没の危機に瀕していた場面から、その物語が始まる。


HarperCollins Publishers 社から2008年に出ている
アガサ・クリスティー作「秘密機関」の
グラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
ドイツ帝国軍の U ボート(U-boat)が放った魚雷2発を受けて、
沈没していく旅客船ルシタニア号が描かれている。
また、画面右下に浮かんでいる救命浮き輪には、
ルシタニア号(LUSITANIA)の名前が表記されている。


そして、月日が流れ、第一次世界大戦(1914年ー1918年)が終わり、世界が復興へと向かう中、ロンドンの地下鉄ドーヴァーストリート駅(Dover Street Tube Station → 2025年7月30日 / 8月5日付ブログで紹介済)のドーヴァーストリート(Dover Street → 2025年7月28日 / 7月29日付ブログで紹介済)出口において、昔馴染みのトミーとタペンスは、偶然出くわした。


地下鉄ドーヴァーストリート駅の出口があった
ドーヴァーストリート5−7番地の建物外観
<筆者撮影>


二人は、お互いに戦後の就職難に悩まされていた。トミーの方は、大戦中の1916年に負傷しており、一方、タペンスの方は、大戦中ずーっと、ボランティアとして、様々な形で働いていたのである。


HarperCollins Publishers 社から2008年に出ている
アガサ・クリスティー作「秘密機関」のグラフィックノベル版 -
第一次世界大戦後、タペンスこと、プルーデンス・カウリーと
トミーこと、トマス・ベレズフォードの2人は、
ロンドンの地下鉄ドーヴァーストリート駅のドーヴァーストリート出口において、数年ぶりに再会する。


久々の再会を果たしたトミーとタペンスは、ドーヴァーストリートを下って、ピカデリー通り(Piccadilly → 2025年7月31日付ブログで紹介済)へと向かう。


ドーヴァーストリート5−7番地の建物の右側には、現在、パブが建っている。
画面奥で左右に延びる通りが、ピカデリー通り。
<筆者撮影>


ピカデリー通り -
画面中央奥に見える建物が、ホテル「リッツ ロンドン」。
<筆者撮影>


カフェ「リオンズ(Lyons)」に腰を落ち着けた2人は、お互いの近況を語り合う。

日々のお金に困っていたトミーとタペンスは、「青年冒険家商会(The Young Adventurers, Ltd.)」を設立して、2人で報酬を獲得する術を話し合った。

その際、トミーは、タペンスに対して、「今日、通りで2人の男性がジェーン・フィン(Jane Finn)について話しているのを耳にした。」と言う少し変わったことを告げる。


翌日の昼12時に、地下鉄ピカデリー駅(Piccadilly Tube Station)で待ち合わせて、「青年冒険家商会」の内容を更に詰めることを約束した2人は、カフェ「リオンズ」を出る。

トミーは、ホテル「リッツ ロンドン(The Ritz London → 2025年7月2日 / 7月14日付ブログで紹介済)」辺りまで、ブラブラと散策するつもりだった。一方、タペンスの方は、サウスベルグラヴィア(South Belgravia)の寄宿寮へ真っ直ぐに帰ることにした。


ピカデリー通り沿いにある地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の入口から
リッツ ロンドンの建物を見上げたところ
<筆者撮影>


タペンスが、サウスベルグラヴィアの寄宿寮へと帰るべく、セントジェイムズパーク(St.

James’s Park)を通り抜けようとしていた時、ある男性に呼び止められる。

エストニアグラスウェア会社(Esthonia Glassware Co.)の社長であるエドワード・ウィティントン(Edward Whittington)と名乗った男性は、タペンスに対して、「仕事を依頼したいので、明日の午前11時に、オフィスに来てほしい。」と告げた。

トミーと「青年冒険家商会」の話をした直後、タペンスは、早くも依頼人に出会った訳である。


翌日の午前11時に、エストニアグラスウェア会社のエドワード・ウィティントンの元を訪れた際、奇妙な依頼をする彼から名前を尋ねられたタペンスが、トミーから聞き覚えのある「ジェーン・フィン」と言う名前を偽名として名乗ると、その場の雰囲気が一変した。

急に顔色を変えたエドワード・ウィティントンは、タペンスに対して、50ポンドを渡すと、「明日、サイド、オフィスに来てほしい。」と告げる。

ところが、タペンスが、翌日、オフィスを再訪すると、驚くことに、エストニアグラスウェア会社は既に閉鎖されていたのである。


タペンスがエドワード・ウィティントンに使った偽名の「ジェーン・フィン」とは、1915年5月7日、アイルランド沖の大西洋上で、ドイツ帝国海軍の潜水艦 Uボートからの魚雷攻撃を受けて、沈没寸前の旅客船ルシタニア号において、米国の諜報員から極秘文書を託された女性の名前だったのだ。

英国情報局員の協力を得て、ジェーン・フィンの捜索と極秘文書の確保を乗り出したトミーとタペンスの2人であったが、彼らの前に、謎の組織の首領である「ブラウン氏(Mr Brown)」とその配下達が立ちはだかるのであった。

果たして、トミーとタペンスは、「青年冒険家商会」として、ジェーン・フィンの捜索と極秘文書の確保を無事成し遂げることができるのか?


           

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