1890年の秋、ジョン・H・ワトスンがベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れると、彼は燃えるような赤毛の初老の男性ジェイベス・ウィルスン(Jabez Wilson)から相談を受けている最中であった。
ジェイベス・ウィルスンは、ロンドンの経済活動の中心地であるシティー(City → 2018年8月4日 / 8月11日付ブログで紹介済)近くにあるザクセンーコーブルクスクエア(Saxe-Coburg Square → 2016年1月1日付ブログで紹介済)において質屋(pawnbroker)を営んでおり、非常に奇妙な体験をしたと言うので、ホームズとワトスンの二人は彼から詳しい事情を聞くことになった。
ジェイベス・ウィルスンが、フリートストリート(Fleet Street → 2014年9月21日付ブログで紹介済)の「Pope’s Court 7号室」にある「赤毛組合」の事務所において、毎日午前10時から午後2時までの4時間の間、「大英百科事典(Encyclopedia Britannica)」を書写する高給の仕事(週4ポンド)を始めてから、8週間が順調に過ぎて行ったが、1890年10月9日の朝、ジェイベス・ウィルスンが、いつも通り、「赤毛組合」の事務所にやって来ると、入口のドアには鍵が掛かっている上に、ドアには貼り紙があり、そこには、「1890年10月9日 赤毛組合は解散した。(The Red-Headed League is Dissolved 9 October 1890)」と書かれていたのである。
どうすればよいのか、途方に暮れたジェイベス・ウィルスンは、ホームズのところへ、赤毛組合がなぜ突然解散してしまったのか、その理由の調査依頼にやって来たのである。
ジェイベス・ウィルスンの話に興味を覚えたホームズは、彼が約3ヶ月前から質屋の店員として雇っているヴィンセント・スポールディング(Vincent Spaulding)のことについて質問した。彼の説明を聞いたホームズには、何か思い当たる節があるようだった。
ジェイベス・ウィルスンが辞去した後、ワトスンは、ホームズに尋ねた。すると、ホームズは、あの有名なセリフの一つを発する。
「これから、どうするつもりなんだ?」と、私は尋ねた。
「パイプさ。」と、ホームズは答えた。「この問題を解き明かすには、優に三服分は必要だ。だから、50分は、僕に話し掛けないでほしい。」彼は、痩せた両膝を鷹のような鼻に近づけるように、椅子の上で身体を丸めた。そして、彼は、目を閉じ、黒いクレーパイプをある種の奇妙な鳥の嘴のように突き出して、座っていた。私は、彼が眠ってしまったものと思った。実際のところ、私自身も、うとうとしていたのだが、ホームズが突然椅子から跳び下りると、意を決したような態度で、パイプを暖炉の上に置いたのである。
‘What are you going to do, then?’ I asked.
’To smoke,’ he answered. ‘It is quite a three-pipe problem, and I beg that you won’t speak to me for fifty minutes.’ He curled himself up in his chair, with his thin knees drawn up to his hawk-like nose, and there he sat with his eyes closed and his black clay pipe thrusting out like the bill of some strange bird. I had come to the conclusion that he had dropped asleep, and indeed was nodding myself, when he suddenly sprang out of his chair, with the gesture of a man who has made up his mind, and put his pipe down upon the mantelpiece.
そして、ホームズはワトスンを誘って、地下鉄でシティー近くのアルダースゲート駅(Aldersgate → 2017年1月1日付ブログで紹介済)まで行き、ジェイベス・ウィルスンが営む質屋へと向かった。ホームズは質屋のドアをノックし、応対に出て来たヴィンセント・スポールディングに対して、ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)への道を尋ねると、その場を立ち去った。
質屋の前の敷石をステッキで数回叩き、そして、ヴィンセント・スポールディングの膝の汚れを確認したホームズがワトスンに告げた内容は、「あの男(ヴィンセント・スポールディング)は、ロンドンで4番目に狡賢く、3番目に大胆な奴だ。」だった。
ホームズとワトスンの二人が質屋の裏の大通りへ出ると、そこには、タバコ屋、新聞販売所、レストランや馬車製造会社の倉庫等の他に、銀行(City and Surburban Bank)の支店(City branch)が建ち並んでいた。
セントジェイムズホール(St. James's Hallー2014年10月4日付ブログで紹介済)でサラサーテ(パブロ・マルティン・メリトン・デ・サラサーテ・イ・ナバスクエス Pablo Martin Meliton de Sarasate y Navascuez:1844年ー1908年 スペイン出身の作曲家兼ヴァイオリン奏者)の演奏会を楽しんだ後、ホームズは、ワトスンに対して、「今夜仕事を手伝ってほしい。」と頼む。
一旦自宅に戻ったワトスンが夜再度ベイカーストリート221Bを訪れると、そこには、ホームズの他に、スコットランドヤードのピーター・ジョーンズ(Peter Jones)とザクセンーコーブルクスクエアに支店がある銀行の頭取であるメリーウェザー氏(Mr Merryweather)が居た。
ホームズは、「自分とワトスンを含めた4人で、これからジョン・クレイ(John Clay)という犯罪者を捕まえるんだ。」と言う。また、ピーター・ジョーンズによると、ジョン・クレイは、彼が以前から追っている重罪犯とのこと。ホームズも、ジョン・クレイとは1~2度関わりを持ったことがあるらしい。ホームズ達4人は、2台の馬車に分かれて、ベイカーストリート221B からザクセンーコーブルクスクエアの質屋の裏側にある銀行へと向かった。
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