2022年10月10日月曜日

オスカー・ワイルド作「ドリアン・グレイの肖像」<グラフィックノベル版>(The Picture of Dorian Gray by Oscar Wilde

英国の Metro Media Ltd. から、
Self Made Hero シリーズの一つとして、2008年に出版されている
オスカー・ワイルド作「ドリアン・グレイの肖像」のグラフィックノベル版の表紙 -
画家のバジル・ホールウォードが描いた
ドリアン・グレイの肖像画が表紙となっている。

英国の作家であるオスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Oscar Fingal O’Flahertie Wills Wilde:1854年ー1900年)が、「リピンコット・マンスリー・マガジン(Lippincott’s Monthly Magazine)」の1890年7月号に発表した後、1891年に刊行された唯一の長編小説「ドリアン・グレイの肖像(The Picture of Dorian Gray → 2022年9月18日 / 10月8日付ブログで紹介済)」のグラフィックノベル版が、英国の Metro Media Ltd. から、Self Made Hero シリーズの一つとして、2008年に出版されている。


英国の Metro Media Ltd. から、
Self Made Hero シリーズの一つとして、2008年に出版されている
オスカー・ワイルド作「ドリアン・グレイの肖像」のグラフィックノベル版の裏表紙 -
画面左側から、
(1)奔放な生き方を続けるドリアン・グレイが、
いつまでも若さと美しさを保っているのに反比例して、
醜悪になっていく彼の肖像画、
(2)逆説家のヘンリー・ウォットン卿と
(3)ドリアン・グレイと一旦婚約するものの、
彼に婚約を破棄された上、捨てられてしまい、
最終的には、自殺してしまう
舞台女優のシヴィル・ヴェイン(Sibyl Vane)


本作品のグラフィックノベル版は、作家である Ian Edginton が構成を、そして、イラストレーターである I. N. J. Culbard が作画を担当している。

完成した自分の肖像画をバジル・ホールウォードから見せられた

ドリアン・グレイは、肖像画に描かれた自分の若さと美しさに魅せられ、

「実際の自分ではなく、肖像画の自分の方が、歳をとればいいのに。

そのためには、自分は、全てを、自分の魂さえも捧げる。」と、

自分の願望を吐露する。


彼ら二人は、上記の Self Made Hero シリーズとして、「ドリアン・グレイの肖像」の他に、以下のシャーロック・ホームズシリーズ作品を発表している。

(1)2009年: コナン・ドイル作「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1901年-1902年)

(2)2010年: コナン・ドイル作「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2021年5月11日 / 5月19日付ブログで紹介済)」(1887年)

(3)2010年: コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four)」(1890年)

(4)2011年: コナン・ドイル作「恐怖の谷(The Valley of Fear)」(1914年ー1915年)



月日は流れ、20年後に、話は移る。

ドリアン・グレイによる奔放な生活にかかる噂の真偽を確かめるために、

バジル・ホールウォードは、パリへと向かう前に、ドリアン・グレイの自宅を訪れる。

バジル・ホールウォードを迎えたドリアン・グレイは、不思議なことに、

20年の歳月にもかかわらず、20年前の若さと美しさを保っていた。

ドリアン・グレイは、バジル・ホールウォードが尋ねる噂の内容を全く否定せず、

「自分の正体を見せる。」と言うと、

バジル・ホーリウォードに対して、屋根裏部屋に隠した自分の肖像画を見せた。

あまりにも醜く変貌してしまった肖像画を見て、

バジル・ホールウォードは、非常なショックを受ける。


構成を担当する作家の Ian Edginton と、そして、作画を担当するイラストレーターの I. N. J. Culbard の二人にとって、ホームズシリーズ作品をグラフィックノベル化するのは、「バスカヴィル家の犬」が一番最初であり、残念ながら、ホームズやワトスンの作画が完成化されておらず、やや安定していない。

また、ホームズとワトスンを含む全キャラクターを描く際に、顔のバランスをとるための線の名残なのか、額の中央から片側の頬にかけて、斜めに走る線が多用されており、ほぼ全場面の全キャラクターに適用されていて、読んでいて、非常に気になった。


「バスカヴィル家の犬」の前作に該る「ドリアン・グレイの肖像」についても、主要な登場人物である画家のバジル・ホールウォード(Basil Hallward)と逆説家のヘンリー・ウォットン卿(Lord Henry Wotton - 愛称:ハリー(Harry))の場合、額の中央から片側の頬にかけて、斜めに走る線が多用されているが、主人公であるドリアン・グレイ(Dorian Gray)の場合、ほとんど使用されていないので、あまり気にならない。


醜悪な姿になってしまった肖像画を見たドリアン・グレイは、
この肖像画こそが自分の良心だと知り、ナイフで肖像画を破壊しようとした。
屋根裏部屋からの悲鳴を聞いて、
駆け付けたドリアン・グレイの使用人達がそこに見たのは、
美青年の肖像画と
ナイフで胸を刺されて死んでいる醜悪な老人の姿であった。

また、ホームズシリーズ作品の場合、中身もカラー版となっているが、「ドリアン・グレイの肖像」の場合、中身は白黒版である。実際のところ、原稿自体、カラー版で作成されているように見受けられるが、白黒版で印刷されている方が、オスカー・ワイルドの原作の非常にダークな内容に、非常にうまく合致しているように感じられる。

物語について言うと、オスカー・ワイルドの原作に非常に忠実な上、約130ページの中に手堅くまとめられていて、とても好印象である。

 

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