大英図書館から2019年に出版された マイケル・ギルバート作「殺されたスモールボーン氏」の表紙 (Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library) |
英国の推理作家であるマイケル・フランシス・ギルバート(Michael Francis Gilbert:1912年ー2006年)は、リンカンシャー州(Lincolnshire)出身で、ロンドン大学(London University)において、法学を専攻した。彼は、一時的に、教師として働いた後、1947年にリンカーンズ・イン・フィールズ(Lincoln’s Inn Fileds → 2016年7月3日付ブログで紹介済)にある法律事務所(Trower, Still and Keeling)に勤め始め、1953年には当該法律事務所の共同経営者(partner)となり、1983年に引退するまで、弁護士として働いた。
彼は、弁護士として働く一方、推理作家として、長編30作や短編185作を発表するとともに、ラジオ、TV や舞台等用の作品も手掛けている。また、彼は、英国の推理作家協会(Crime Writers’ Association)の創設メンバーの一人でもある。
大英図書館から2019年に出版された マイケル・ギルバート作「殺されたスモールボーン氏」の裏表紙 (Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library) |
「殺されたスモールボーン氏(Smallbone Decreased)」は、マイケル・ギルバートが1950年に発表した4作目の長編で、それまでの長編3作と同様に、スコットランドヤードのヘーゼルリッグ主任警部(Chief Inspector Hazelrigg)が探偵役を務める。
リンカーンズ・イン・フィールズに所在する有名な弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」の創設メンバーの一人で、共同経営者でもあるアベル・ホーニマン(Mr. Abel Horniman)が亡くなり、彼の息子であるボブ・ホーニマン(Mr. Bob Horniman)が跡を継ぐことになった。
アベル・ホーニマンからボブ・ホーニマンへの引継作業の過程で、オフィス内にある巨大な書類保管金庫(large deed box)が開けられた。すると、開封された書類保管金庫の中から、男性の死体が転がり出た。なんと、その死体は、亡くなったアベル・ホーニマンと一緒に、「Ichabod Trust」という信託基金を運営していたマルカス・スモールボーン氏(Mr Marcus Smallbone)だったのである。
当初、信託基金を不当に運用して、それを不法に懐に入れていたアベル・ホーニマンが、それを見つけたマルカス・スモールボーン氏を殺害の上、自分のオフィス内の書類保管金庫に隠していたものと思われたが、その後、秘書の一人であるシシー・チタリング(Miss Cissie Chittering - 共同経営者の一人であるバーリー氏の秘書)が、休日の弁護士事務所内において、絞殺されるに及び、疑惑の目は、弁護士事務所の経営者やスタッフに向けられることになった。
本作品「殺されたスモールボーン氏」の舞台となる 弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」のオフィスレイアウト図 |
主要な容疑者は、以下の通り。
(1)ボブ・ホーニマン(アベル・ホーニマンの息子である弁護士で、新しい共同経営者)
(2)バーリー氏(Mr. Birley - 共同経営者の一人)
(3)トリストラム・クレイン(Mr. Tristram Craine - 共同経営者の一人)
(4)エリック・デュクフォード(Mr. Eric Duxford - 弁護士)
(5)ジョン・コーブ(Mr. John Cove - 見習い弁護士)
(6)エリザベス・コーネル(Miss Elizabeth Cornel - アベル・ホーニマンの秘書で、彼の死後、ボブ・ホーニマンの秘書)
(7)アン・ミッドメイ(Miss Anne Midmay - トリストラム・クレインの秘書)
(8)フローリー・ベルバス(Miss Florrie Bellbas - エリック・デュクフォードとジョン・コーブの秘書)
(9)ポーター夫人(Mrs. Porter - 秘書)
(10)チャーリー・コッカーリル(Sergeant Charlie Cockerill - 事務員 / 記録係)
弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」に新たに入った弁護士で、素人探偵であるヘンリー・ボーン(Henry Bohun)の手助けを受けて、スコットランドヤードのヘーゼルリッグ主任警部が、マルカス・スモールボーン氏と秘書のシシー・チタリングの2人を殺害した真犯人を捕まえるべく、捜査を進めていく。
本作品「殺されたスモールボーン氏」は、1950年に発表された以降、特に顧みられていなかったが、2019年に大英図書館(British Library → 2014年5月31日付ブログで紹介済)から再出版されている。
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