英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2022年に出版された デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」の裏表紙 |
1894年4月、シャーロック・ホームズは、無事にロンドンへと帰還し、「空き家の冒険(The Empty House)」事件において、ジョン・H・ワトスンやスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)と協力の上、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の片腕であるセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)の捕縛に成功した。ところが、その翌日の夜、仲間による手助けにより、折角、捕縛したモラン大佐が、スコットランドヤードの牢屋から逃亡したのである。スコットランドヤードによる懸命な捜査とホームズによる調査にもかかわらず、モラン大佐の行方は、杳と知れなかった。
そして、同年6月初旬の晩、エリザベス・コートニー(Elizabeth Courtney)と名乗る年配の女性が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のホームズの元を訪れた。彼女の話は、次の通り。
・彼女は、現在、チジック地区(Chiswick → 2016年7月23日付ブログで紹介済)内にある「アッシュツリーハウス(Ashtree House)」に、15歳年下の弟と一緒に居住(なお、彼女も、彼女の弟も、独身)。
・弟のアーサー・コートニー(Arthur Courtney)は、大変なギャンブル好きな上に、ロンドンのイーストエンド(East End)にあるアヘン窟に頻繁に出入りしており、ここ1週間程、自宅に戻って来ていない。
・昨日の午後、アーサーの身を預かっているという匿名の手紙を受領。3日間の猶予を与えるので、5千ポンドの身代金を準備するよう、手紙は要求。身代金を支払わない場合、アーサーの喉を掻き切って、テムズ河(River Thames)に浮かばせる、とのこと。勿論、警察等への通報は厳禁。
ホームズが本件の調査を引き受けることに安心したエリザベス・コートニーは、ベーカーストリート221Bを後にするが、彼女の後ろ姿を観察したホームズは、ワトスンに対して、「エリザベス・コートニーは、見かけ通りの年配な人物ではなく、もっと若い女性による変そうだ。」と告げる。
何者かによる罠の可能性だと見抜いたホームズは、物乞いに変装の上、当該アヘン窟へ潜入する一方、ワトスンには、チジック地区へと出向いて、「アッシュツリーハウス」に本当にコートニー姉弟が住んでいるかどうかを調べるよう、頼んだ。
ワトスンが、チジック地区に着き、「アッシュツリーハウス」について調査を始めた。隣人によると、「数ヶ月前に、持ち主の医者夫婦がエジンバラ(Edinburgh)へ引っ越した後は、空き家のまま。」とのことだった。ホームズが懸念した通り、コートニー姉弟は、「アッシュツリーハウス」に住んでいなかったのだ。
ワトスンがチジック地区からベーカーストリート221Bへと戻ると、ハドスン夫人が、「ホームズ宛に、非常に大きなトランクが届いている。」と伝えた。
ホームズがアヘン窟から戻って、ナイフでトランクを開けてみると、トランクの中には、男性の死体が入っていた。どうやら、自称エリザベス・コートニーという女性から事前に手渡されていた写真によると、アーサー・コートニー本人と思われた。ワトスンが死体を調べたところ、死後3ー4時間を経過しており、死因はストリキニーネによる毒殺との診断だった。
丁度そこへ、スコットランドヤードのステッド警部(Inspector Stead)とジョンスン巡査(Constable Johnson)が部屋へと入って来て、殺人の罪で、ホームズを逮捕してしまう。
ところが、二人とも偽の警官であることを見破ったホームズは、ワトスンと一緒に、ステッド警部と名乗る男を取り押さえるのだった。残念ながら、ジョンスン巡査は、格闘の際に、取り逃がしてしまった。
ホームズとワトスンに取り押さえられたステッド警部と名乗る男は、「自分は俳優で、ストリーサム地区(Streatham → 2017年12月2日付ブログで紹介済)のパブにおいて、「大佐」と名乗る人物から頼まれたのだ。」と告白する。彼によると、逮捕したホームズを外で待たせてある馬車に乗せて、造船所の倉庫まで連れて行くことになっていた、とのことだった。
ホームズは、ステッド警部と名乗る男に逮捕されたことにして、造船所の倉庫まで出向き、敵の正体を明らかにしようと考えた。そして、ホームズが、ステッド警部と名乗る男と一緒に、ベーカーストリート221Bの外で待っている馬車へ向かおうとしたところ、ステッド警部と名乗る男が、突然、眉間を撃たれて、死亡する。「空き家の冒険」事件において、モラン大佐が使用した空気銃だと思われた。
ホームズを付け狙う敵は、常に彼の一歩先を読んでいるようだった。そして、敵は、次の標的として、彼の兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)を選んでいたのである。
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