2022年5月2日月曜日

ソフィー・ハナ作「3 / 4 の謎」(The Mystery of Three Quarters by Sophie Hannah) - その1

英国の HarperCollinsPublishers 社から2018年に出版された
ソフィー・ハナ作「3 / 4 の謎」の表紙(ハードカバー版)
      Jacket Design : Holly Macdonald / HarperCollinsPublisher Ltd
       Jacket Illustration : Shutterstock.com


本作品「3 / 4 の謎(The Mystery of Three Quarters)」は、英国の詩人で、小説家でもあるソフィー・ハナ(Sophie Hannah:1971年ー)が、アガサ・クリスティー財団(Agatha Christie Limited)による公認(公式認定)の下、エルキュール・ポワロ(Herucule Poirot)の正統な続編として執筆の上、2018年に発表された。

本作品は、「モノグラム殺人事件(The Monogram Murders → 2021年12月11日 / 12月18日 / 12月26日付ブログで紹介済)」(2014年)と「閉じられた棺(ひつぎ)(Closed Casket → 2022年1月1日 / 1月8日 / 1月15日付ブログで紹介済)」(2016年)に続く第3作目に該る。


1930年2月のある日、満足がいくまで昼食を堪能した名探偵エルキュール・ポワロが、ホワイトヘイヴンマンションズ(Whitehaven Mansions)まで戻って来ると、建物の玄関には、60歳位の女性が、怒りを押し隠しながら、誰かを待っていた。

戻って来た人物がポワロだと判ると、シルヴィア・ルール(Sylvia Rule)と名乗る女性は、ポワロに対して、「今朝、貴方から手紙を受け取った。その手紙によると、私がバルナバス・パンディー(Barnabas Pandy)なる人物を殺害したと糾弾しているが、これは、一体、どういうことなのか?」と、怒り心頭だった。シルヴィア・ルール自身、バルナバス・パンディーという人物を全然知らなかった。

ところが、ポワロには、そのような手紙を出した覚えが、全くなかった。


訳が分からないポワロが部屋へと戻ると、そこには、ジョン・マックローデン(John McCrodden)と名乗る40歳位の男性が、彼を待っていた。

驚くことに、ジョン・マックローデンも、シルヴィア・ルールと同様に、「今朝、貴方から、私がバルナバス・パンディーなる人物を殺害したと糾弾する手紙を受け取った。」と告げる。ジョン・マックローデンも、バルナバス・パンディーという人物に全く心当たりがなかった。

ポワロとしては、出した覚えがない手紙を受け取った人物が、早くも、2人目となったのである。


不可思議なことは、まだ続いた。翌日の午後3時、アナベル・トレッドウェイ(Annabel Treadway)と名乗る女性が、ポワロを訪ねて来た。

なんと、彼女も、ポワロに対して、「貴方から、バルナバス・パンディーを殺害したと糾弾する手紙を受け取った。」と告げるのであった。これで、3人目である。

ただし、これまでの2人とは違い、彼女は、バルナバス・パンディーなる人物を知っていた。彼女によると、バルナバス・パンディーは、彼女の祖父だった。彼女の両親が火事で亡くなった後、当時、7歳だった彼女と姉であるレノーレ(Lenore)の2人は、祖父であるバルナバス・パンディーに引き取られ、それ以降、一緒に暮らしていた、とのこと。ところが、3ヶ月前に該る昨年(1929年)の12月7日の夜、バルナバス・パンディーは、浴室で溺死していた。享年94歳。

その時、屋敷(Combingham Hall)内に居たのは、アナベル、彼女の姉であるレノーレ、レノーレの娘であるアイヴィー(Ivy)、そして、執事のキングスベリー(Kingsbury)の4人だけと、アナベルは証言する。また、祖父のバルナバス・パンディーが浴室で溺死しているのを発見したしたのは、キングスベリーで、アナベル、レノーレとアイヴィーの3人は、ずーっと一緒に居て、片時も誰もその場を離れたことはなかった、とのこと。

昨日までは判らなかったバルナバス・パンディーなる人物のことが、ハッキリとしてきた。しかしながら、誰が、ポワロの名を騙って、3人の人物に対して、糾弾の手紙を送っているのだろうか?


その翌日、午前11時40分まで待って、新たな訪問客がないことを確認すると、ポワロは、カフェ「Pleasant’s Coffee House」へと出かけた。

ポワロがカフェに居ると、50歳近い男性から声をかけられた。ヒューゴ・ドッカーリル(Hugo Dockerill)と名乗る男性は、ターヴィルカレッジ(Turville College - 男子の全寮制学校)の寮監を務めている、と言う。ヒューゴ・ドッカーリルによると、ホワイトヘイヴンマンションズを訪ねたものの、ポワロが不在だったため、執事のジョージ(George)に、カフェ「Pleasant’s Coffee House」へ行ってみるよう、勧められた、とのことだった。

ヒューゴ・ドッカーリル自身も、「貴方から、バルナバス・パンディーを殺害したと糾弾する手紙を受け取った。」と告げる。遂に、これで、4人の人物が、ポワロの名を騙る謎の人物から、糾弾の手紙を受け取ったことになる。


しかし、今のところ、アナベル・トレッドウェイを除くと、シルヴィア・ルール、ジョン・マックローデンとヒューゴ・ドッカーリルの3人には、バルナバス・パンディーとの関連性は、全くないように思われた。

謎の人物は、何故、アナベル・トレッドウェイに加えて、バルナバス・パンディーとの関連性がないと思われる3人に対しても、糾弾の手紙を出しているのか?謎の人物の目的は、一体、何なのか?バルナバス・パンディーは浴室で溺死したことになっているが、謎の人物が糾弾する通り、本当に、彼は、4人のうちの誰かに殺害されたのだろうか?


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