2022年12月14日水曜日

トーキー(Torquay) トーア寺院(Torre Abbey)

筆者が所有している株式会社 昭文社発行の
「マップルマガジン イギリス」から抜粋 -
なお、トーキー出身である
アガサ・クリスティー関連の展示物は、
トーキー博物館(Torquay Museum)移設済で、
現在、トーア寺院内には展示されていない。


米国出身の推理作家であるキャロル・ブッゲ(Carole Bugge:1953年ー)が2000年に発表した「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊(The further adventures of Sherlock Holmes / The Haunting of Torre Abbey → 2022年10月24日 / 12月2日 / 12月6日 / 12月8日付ブログで紹介済)」において、2世紀にわたり、ケアリー家(Care family)が住み、首のない修道士の幽霊が出没するトーア寺院(Torre Abbey)は、実在の場所で、イングランドの南西部にあるデヴォン州(Devon)トーキー(Torquay)内に所在している。


トーア寺院は、元々、1196年にプレモントレ修道会(Premonstratensiabn cannons)の修道院として設立された。


テューダー朝第2代のイングランド王であるヘンリー8世(Henry VIII:1491491年ー1547年 在位期間:1509年ー1547年)は、王妃であるキャサリンと離婚して、彼女の侍女であるアン・ブーリン(Anne Boleyn:1501年頃ー1536年)と結婚することで、ローマ教皇であるクレメンス7世と対立し、英国国教会(Church of England)をカトリック教会から分離させて、イングランドにおける宗教改革を開始した。

ヘンリー8世は、小修道院解散法や大修道院解散法等、相次ぐ修道院解散令(Dissolution of the Monasteries)を発令して、イングランド内に所在した800以上の修道院を解散し、その財産を王室に没収した。当時、イングランドの土地の約 1/5 が、王室へ移動したと言われている。王室に没収された土地は、後に売却 / 賃貸されたので、土地の流動化に繋がったのである。

トーア修道院も、この例外ではなく、1539年に王室に没収されたあと、地元の貴族に対して、賃貸されたのである。


その後、幾人かにわたる所有者を経て、1662年に、トーア寺院は、ケアリー家が所有することになる。

それ以降、2世紀以上にわたって、ケアリー家によって使用された後、1930年に、トーキー自治区議会(Torquay Borough Council)へと売却された。売却後、トーア寺院は、アートギャラリーとして使用されたが、第二次世界大戦中(1939年ー1945年)は、英国空軍(Royal Air Force)によって接収された。


トーア寺院は、現在、トアベイ議会(Torbay Council)が所有の上、管理しており、改修工事後、2008年に再オープンして、当時を再現する文化財として公開されている。


なお、「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」の作者であるキャロル・ブッゲが、本作品の巻末の「Autho’s Note(著者の言葉)」において述べているが、本作品に登場するチャールズ・ケアリー卿(Lord Charles Cary)、ヴィクター・ケアリー(Victor Cary - チャールズの父親で、先代のケアリー卿)、レディー・マリオン・ケアリー(Lady Marion Cary - チャールズの母親)およびエリザベス・ケアリー(Elizabeth Cary - チャールズの妹)は、全員、架空の人物であり、実際にトーア寺院を所有してきたケアリー家内には実在していない。


2022年12月13日火曜日

サム・シチリアーノ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Venerable Tiger by Sam Siciliano)- その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2020年に出版された
サム・シチリアーノ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 尊い虎」の裏表紙


ある年の4月の火曜日の朝、彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)が、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)に住む従兄弟のシャーロック・ホームズの元を訪れたところ、玄関口に立っていた美しい若い女性が、突然、気を失ってしまう現場に遭遇する。

近くに居た人に玄関のベルを鳴らしてもらい、ヘンリー・ヴェルニール医師は、その女性を建物の中へ運び込み、ホームズの居間のソファーの上に、彼女を横たえた。そして、診察のために、彼が彼女の左手首をとると、彼女の白い手首には、まだ新しい青痣があった。それを見たホームズが、「彼女は、虐待されているな。」と、眉を顰める。

気がついた女性は、イザベル・ストーン(Isabel Stone:21歳)と名乗り、「ホームズ氏のところに相談に訪れた。」と話すと、まず最初に、自分の身の上話を始めるのであった。


彼女は、ヒューバート・ストーン少佐(Major Hubert Stone)を父に、メーベル・ストーン(Mabel Stone)を母にして、インドで出生したが、5歳の時に、健康を害した父親を亡くした。

イザベルを連れて、ロンドンの両親の元へと戻った母親のメーベル・ストーンは、インドのボンベイにおいて、妻子を亡くしたため、そこから英国へと戻った夫の戦友だったグリムボルド・プラット大尉(Captain Grimbold Pratt)と再会。妻と娘を亡くしたグリムボルド・プラット大尉と夫を亡くしたメーベル・ストーンの二人は、後に再婚する。


グリムボルド・プラット大尉は、年老いた父親が亡くなると、妻のメーベルと義理の娘のイザベルを連れて、ロンドンから列車で1時間位のところにあるサリー州(Surrey)レザーヘッド(Leatherhead)の近くのストークロイヤル(Stoke Royal)の地所へと引っ越す。

グリムボルド・プラット大尉は、年齢とともに、短気が激しくなってきた。また、彼は、自分の地所において、猿、鸚鵡や孔雀等のインドに生息する動物を飼い始めた。更に、彼は、虎(名前:ルドラ(Rudra))と狼(名前:カンハ(Kanha))も飼っていて、虎と狼が周辺に放牧されている羊達を狙ったため、地元の住民達との間で、大きなトラブルの種となっていた。


イザベルは、ロンドンの近くにある寄宿学校へと送られ、その後、パリへ留学して、そこで4年間を過ごした。彼女の留学が終わりかけた頃、母親のメーベルが、鉄道事故で亡くなった。

イザベルがパリから戻ると、義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉の短気は、更に酷くなっていた。メーベルを鉄道事故で亡くした彼は、同じく、インド帰りの未亡人であるエディス(Edith)と再々婚した。イザベルにとって、エディスは良い義理の母親であったが、1年前に胃炎(Gastritis)が原因で死去した。


義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉の妻となった人には、次々と亡くなるため、何か呪いでもあるのではないかと心配するイザベルであったが、それを聞いたヘンリー・ヴェルニール医師は、「胃炎と心臓麻痺は、不審死が疑われる二大要因です。その場合、ヒ素による毒殺が考えられます。」と答える。

「何故、疑わしい義理の父親の元を出て行かないのか?」と尋ねるヘンリー・ヴェルニール医師に対して、イザベルは、「自分の自由になるお金がないのです。」と返した。


そして、イザベルは、懐から折り畳んだ書類を取り出した。彼女によると、つい最近、母親であるメーベルの遺品を整理していた際に、それらの中から偶然見つけた、とのことだった。その書類には、驚くべき内容が書かれていた。


インドにおけるセポイの反乱の際、イザベルの実の父親であるヒューバート・ストーン少佐と義理の父親であるグリムボルド・プラット大尉は、倒した相手兵士の胸元に隠されていたルビー、エメラルドとダイヤモンドを見つけて、二人で山分けにしたという内容だった。ヒューバート・ストーン少佐は、宝石を二人で山分けすることについて、非常に消極的だったが、戦友のグリムボルド・プラット大尉が、強引に山分けを納得させた、とのことだった。


それらの宝石は、その後、どうなったのか?書類の内容は、更に続くのであった。


2022年12月12日月曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「魔術の殺人(They Do It with Mirrors)」

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第5作目である
「魔術の殺人」の一場面

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の HarperCollinsPublishers 社から出ているミス・ジェーン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、6番目を紹介したい。


(6)「魔術の殺人(They Do It with Mirrors)」(1952年)


「魔術の殺人」は、1952年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第5作目である。なお、本作品が米国で出版された際には、「Murder with Mirrors」という題に変更されている。


ミス・ジェーン・マープルは、寄宿学校時代からの友人で、現在、ロンドンに住む米国人のルース・ヴァン・ライドック(Ruth Van Rydock)を訪ねた。

ミス・マープルは、友人のルースから、


(1)妹のキャロライン(キャリー)・ルイーズ・セロコールド(Caroline (Carrie) Louise Serrocold → 姉のルースと同様に、ミス・マープルの寄宿学校時代からの友人)の様子が変で、彼女のことを非常に心配していること

(2)ミス・マープルに、自分の代わって、キャリーの自宅があるストーニーゲート(Stonygates)を訪問して、彼女の様子を調べてほしいこと


という話を聞いて、ミス・マープルは、ルースからの依頼を快く引き受ける。


ルースから潜入捜査の依頼を受けたミス・マープルは、早速、キャリーの自宅を訪問した。

富豪のキャリーの自宅は、ヴィクトリア朝の邸宅で、彼女は、3番目の夫で、慈善活動家のルイス・セロコールド(Lewis Serrocold)と一緒に経営する非行少年の更生施設が併設されていた。


ミス・マープルがキャリーの邸宅を訪れた際、キャリーと3番目の夫であるルイス以外に、以下の人物が同邸宅に住んだり、あるいは、訪ねて来ていた。


(1)ミルドレッド・ストレット(Mildred Strete)- キャリーと最初の夫であるエリック・グルブランドセン(故人)の娘で、未亡人。

(2)ジーナ・ハッド(Gina Hudd)- キャリーと最初の夫であるエリックの養女であるピッパ(Pippa)の娘で、イタリア人との混血。

(3)ウォルター・ハッド(Walter Hudd)- ジーナの夫で、米国人。

(4)アレックス・リスタリック(Alexis Restarick)- キャリーの2番目の夫であるジョニー・リスタリック(故人)の連れ子で、スティーヴンの兄。

(5)スティーヴン・リスタリック(Stephen Restarick)- キャリーの2番目の夫であるジョニー・リスタリック(故人)の連れ子で、アレックスの弟

(6)エドガー・ロースン(Edgar Lawson)- キャリーの3番目の夫であるルイスの助手で、統合失調症の兆候が見られ、虚言癖があり。

(7)ジュリエット・ベルエヴァー(Juliet Bellever)- キャリーの秘書で、コンパニオン。

(8)マーヴェリック医師(Mr. Maverick)- 精神分析医で、以前、少年院において、非行少年の感化を担当。


姉のルースが心配する通り、妹のキャリーの家族関係や人間関係は、ミス・マープルの目には、なかなか複雑のように見えた。


キャリーの最初の夫であるエリック・グルブランドセン(故人)の連れ子で、生前の父親が築いた財産を以って設立した慈善財団の理事を務めているクリスチャン・グルブランドセン(Christian Gulbransen - キャリーの義理の息子に該るが、実際には、彼女よりも2歳年上)が、突然、キャリーの邸宅を訪ねて来た。

彼の訪問は、一体、何の目的があってのことだろうか?



カレンダーには、キャリーの3番目の夫であるルイス・セロコールドのオフィス内において、彼と「彼(ルイス)は自分の父親で、自分に対して、酷い仕打ちをしてきた。」と、拳銃を持ったまま、訴えるエドガー・ロースンとの間の揉め事が発生する最中、自室に引きこもったクリスチャン・グルブランドセンが、何者かによって、拳銃で撃たれて死亡するシーンが描かれている。

HarperCollinsPublishers 社から出版されている「魔術の殺人」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、鏡の形に切り取られているものが使用されている。


2022年12月11日日曜日

コナン・ドイル作「孤独な自転車乗り」<小説版>(The Solitary Cyclist by Conan Doyle )- その1

シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人が、
グリムズビー・ロイロット博士の魔の手から、
ヘレン・ストーナーを救うべく、
列車でサリー州のレザーヘッドへと向かう途中、
その脇の道を、黒ずくめの男につけられたヴィオレット・スミス嬢の自転車が進んで行く。

チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)が発表したサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」のグラフィックノベル版は、


(1)「プロローグ(Prologue)」

(2)「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)

(3)「まだらの紐(The Speckled Band)」

(4)「ボヘミア国王の名にかけて(In the name of the King)」

(5)「エピローグ(Epilogue)」


の章によって構成されている。


シャーロック・ホームズは、ボヘミア国王(King of Bohemia)からの依頼に基づいて、アイリーン・アドラー(Irene Adler)からの写真奪還に着手する前に、先にヘレン・ストーナー(Helen Stoner)から依頼された「まだらの紐」事件を解決するために、ジョン・H・ワトスンを伴い、サリー州(Surrey)のレザーヘッド(Leatherhead)へと赴く。

その際、ホームズとワトスンを乗せた列車がレザーヘッドへと向かって進む線路の横の道を、若い女性(ヴァイオレット・スミス(Violet Smith))が乗った自転車の後を、黒ずくめの男が乗った自転車がつけている場面が描かれているが、これは、コナン・ドイル作「孤独な自転車乗り(The Solitary Cyclist)」を彷彿させる。「孤独な自転車乗り」事件の舞台も、サリー州のファーナム(Farnham)付近なので、年代的な問題は別にして、地理的には、問題ないと言える。


「孤独な自転車乗り」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、28番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1904年1月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1903年12月26日号に掲載された。

また、同作品は、1905年に発行されたホームズシリーズの第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The  Return of Sherlock Holmes)」に収録された。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1904年1月号に掲載された挿絵(その1) -
1895年4月23日(土)、
ヴァイオレット・スミス嬢が、相談のために、
ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 
2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)のシャーロック・ホームズの元を訪れた。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年)


本作品には、ヴァイオレット・スミス嬢と彼女の後をつける黒ずくめの男の二人の自転車乗りが登場する。本作品のタイトルである「The Solitary Cyclist」とは、どちらを指すのか?今のところ、日本語訳では、定番となっているものがなく、翻訳者や出版社によって、以下の3つのパターンに分かれている。


(1)自転車乗りがどちらを指すのか、不明なパターン → 「孤独な自転車乗り」

このパターンには、河出書房新社版、ハヤカワ・ミステリ文庫版、ちくま文庫版、講談社文庫版や創元推理文庫版等が含まれる。


(2)ヴァイオレット・スミスを指すパターン → 「美しき自転車乗り」

このパターンには、新潮社文庫版、光文社文庫版や角川文庫版等が含まれる。


(3)黒ずくめの男を指すパターン → 「怪しい自転車乗り」

このパターンに属する例は少ないが、コナン・ドイルの原作上、黒ずくめの男の正体であるカラザース氏(Mr. Carruthers)を「a solitary cyclist」と表現する場面があるため、このパターンを補強する要因となって居る。


日本語の訳一つで、本作品のタイトルから受ける印象が微妙に異なってくるので、なかなか面白い。ちなみに、本稿のタイトルは、「solitary」の単語の意味通り、「孤独な自転車乗り」としてある。


「孤独な自転車乗り」事件は、コナン・ドイルの原作によると、1895年4月23日(土)、ヴァイオレット・スミス嬢が、ベイカーストリート221Bのホームズの元を訪れるところから始まる。

なお、実際には、1895年4月23日は、土曜日ではなく、火曜日である。


2022年12月10日土曜日

コナン・ドイル作「ボヘミアの醜聞」<グラフィックノベル版>(A Scandal in Bohemia by Conan Doyle )- その3

結婚して、ベイカーストリート221B221B Baker Street → 
2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)
を出たジョン・H・ワトスンは、
いつまでも美青年のままで居るドリアン・グレイを往診する。


チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)が発表したサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」のグラフィックノベル版には、コナン・ドイルとほぼ同時期に生きた他の作品に登場する人物が、多く客演している。


*「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」


ジョン・H・ワトスンは、メアリー・モースタン(Mary Morstan)と結婚して、ベイカーストリート221B におけるシャーロック・ホームズとの共同生活を既に解消していた。


本章の冒頭、ワトスンは、ドリアン・グレイ(Dorian Grey)という美青年を往診して、健康診断を行なっている。

ドリアン・グレイは、英国の作家であるオスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド(Oscar Fingal O’Flahertie Wills Wilde:1854年ー1900年)唯一の長編小説「ドリアン・グレイの肖像(The Picture of Dorian Gray)」(1890年)に登場する人物である。

「ドリアン・グレイの肖像」の小説版は、2022年9月18日 / 10月8日付ブログを、グラフィックノベル版は、2022年10月10日付ブログを、また、映画版は、2022年10月15日付ブログを御参照願いたい。


往診の帰り道、ジョン・H・ワトスンの横を、
80日間で世界一周を終えたフィリアス・フォッグ達を乗せた馬車が、
最終目的地へと向かって、駆け抜けて行った。


ドリアン・グレイを往診した後、ワトスンは、ホームズが居るベイカーストリート221Bへと向かうが、その際、ワトスンの横を、ジャン・パスパルトゥー(Jean Passepartout)が御者を務める馬車に乗ったフィリアス・フォッグ(Phileas Fogg)とアウーダ嬢(Ms. Aouda)が駆け抜けて行く。

フィリアス・フォッグ(英国人)、アウーダ嬢(インド人)、そして、ジャン・パスパルトゥー(フランス人)は、フランスの小説家であるジュール・ゲイブリエル・ヴェルヌ(Jules Gabriel Verne:1828年ー1905年)作「八十日間世界一周(Le tour du monde en quatre-vingt jours)」(1873年)に登場する人物達である。


*「ボヘミア国王の名にかけて(In the name of the King)」


本章の終盤は、コナン・ドイルの原作とは異なり、ボヘミア国王(King of Bohemia)が送った配下の者達や謎の人物が放った怪物達が、問題の写真を奪うために、アイリーン・アドラー(Irene Adler)宅を襲い、ホームズ、ワトスンやアイリーン・アドラーが彼らと戦う話が追加されている。

ホームズ、ワトスンやアイリーン・アドラーを襲う怪物達とは、「フランケンシュタインの怪物」と「エドワード・ハイド(Edward Hyde)」である。


ボヘミア国王がアイリーン・アドラーと一緒に写った写真を奪うべく、
謎の人物が放った最初の刺客は、
フランケンシュタインの怪物だった。


フランケンシュタインの怪物は、英国の小説家メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー(Mary Wollstonecraft Godwin Shelley:1797年ー1851年)作「フランケンシュタイン、或いは、現代のプロメテウス(Frankenstein; or, the Modern Prometheus. → 2021年3月24日付ブログで紹介済)」(1818年)に登場する人物である。

「フランケンシュタイン、或いは、現代のプロメテウス」の小説版は、2021

年3月24日付ブログを、また、グラフィックノベル版は、2021年3月31日付ブログを御参照願いたい。


フランケンシュタインの怪物をなんとか撃退した
シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスンとアイリーン・アドラーであったが、
第二の刺客であるエドワード・ハイドが襲い掛かる。


エドワード・ハイドは、エディンバラ(Edinburgh)生まれの英国の小説家、詩人で、かつ、エッセイストであるロバート・ルイス・スティーヴンスン(Robert Louis Stevenson:1850年ー1894年)作「ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件(The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde)」(1886年)に登場する人物である。

「ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件」のグラフィックノベル版は、2022年11月25日 / 12月3日付ブログを御参照願いたい。


*「エピローグ(Epilogue)」


ジェイムズ・モリアーティー教授の指示により、
ヘンリー・ジキル博士が、アイリーン・アドラーに対して、
少なくとも、70年間は年をとらない薬を注射する。


本章では、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)やチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton)が登場して、米国へと船で向かうアイリーン・アドラーを拘束して、ある特別な役割を与えている。その際、彼らは、ヘンリー・ジキル博士(Dr. Henry Jekyll)に指示し、アイリーン・アドラーに対して、少なくとも、70年間は年をとらない薬を注射させている。

ヘンリー・ジキル博士は、エドワード・ハイドと同様に、ロバート・ルイス・スティーヴンスン作「ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件」に登場する人物である。


2022年12月9日金曜日

コナン・ドイル作「ボヘミアの醜聞」<グラフィックノベル版>(A Scandal in Bohemia by Conan Doyle )- その2

英国王室メンバーを毒ワインで殺害する計画を防ぐべく、
シャーロック・ホームズは馬車を駆って追い掛ける。

チェコ共和国(Czech Republic)ヴィソチナ州トシェビーチ郡の都市トシェビーチ出身のイラストレーターであるペトル・コプル(Petr Kopl:1976年ー)が発表したサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」のグラフィックノベル版は、以下の章によって構成されている。


(1)「プロローグ(Prologue)」

(2)「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」

(3)「まだらの紐(The Speckled Band)」

(4)「ボヘミア国王の名にかけて(In the name of the King)」

(5)「エピローグ(Epilogue)」


(1)「プロローグ」


コナン・ドイルの原作にはないが、毒が仕込まれたワインで、英国王室のメンバー達を殺害しようとする計画を、シャーロック・ホームズが妨害する話が、ペトル・コプルにより創作の上、挿入されている。


(2)「ボヘミアの醜聞」


仮面を取って、正体を見せたボヘミア国王に対して、
シャーロック・ホームズは、依頼内容を尋ねる。

既にメアリー・モースタン(Mary Morstan)と結婚しているジョン・H・ワトスンが、診療の帰り道に、ベイカーストリート221B((221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済))のホームズの元を訪ねるところから、物語が始まる。

そして、そこへフォン・クラム伯爵(Count von Kram)に扮したボヘミア国王(King of Bohemia)がホームズの元を訪れ、彼がアイリーン・アドラー(Irene Adler)と一緒に写った写真の奪還を、ホームズに対して、依頼する。本章は、概ね、コナン・ドイルの原作通りである。


(3)「まだらの紐」


早朝、事件の依頼人であるヘレン・ストーナーが、
シャーロック・ホームズの元を訪れる。


ホームズは、ボヘミア国王からの依頼に基づいて、アイリーン・アドラーからの写真奪還に着手する前に、先にヘレン・ストーナー(Helen Stoner)から依頼された「まだらの紐」事件を解決するために、ワトスンを伴い、サリー州(Surrey)のレザーヘッド(Leatherhead)へと赴く。


内容的には、概ね、コナン・ドイルの原作通りであるが、本章の終盤は、原作とは異なり、ホームズとワトスンが、グリムズビー・ロイロット博士(Dr. Grimesby Roylott)が飼っていたチーターに襲われるものの、勇敢にも、事件の依頼人であるヘレン・ストーナーが撃退するという話が挿入される。また、原作の場合、事件の解決後、ヘレン・ストーナーが無事結婚できるという完全なハッピーエンドで終わっているが、本作品の場合、事件の解決後、ヘレン・ストーナーが無事結婚できるものの、その後、可哀想な結末に変更されている。


コナン・ドイルの原作とは異なり、
事件の依頼人であるヘレン・ストーナーの部屋は、
グリムズビー・ロイロット博士の部屋や
彼女の双子の姉であるジュリア・ストーナーの部屋とは、別棟になっている。


また、コナン・ドイルの原作の場合、ロイロット博士の部屋、最初の被害者で、ヘレンの双子の姉であるジュリア・ストーナー(Julia Stoner)の部屋とヘレン・ストーナーの部屋の3つは、全て隣り合っているという設定だったと思うが、本作品の場合、ロイロット博士の部屋とジュリア・ストーナーの部屋の2つのみが隣り合っており、ヘレン・ストーナーの部屋だけ、別棟にあり、ゲストルームと隣り合っている設定に変更されている。


(4)「ボヘミア国王の名にかけて」


弁護士であるゴドフリー・ノートン(Godfrey Norton)との結婚式のために、
自宅を出るアイリーン・アドラー。


内容的には、概ね、コナン・ドイルの原作通りであるが、本章の終盤は、原作とは異なり、ボヘミア国王が送った配下の者達や謎の人物が放った怪物達が、問題の写真を奪うために、アイリーン・アドラー宅を襲い、ホームズ、ワトスンやアイリーン・アドラーが彼らと戦う話が追加されている。


(5)「エピローグ」


少なくとも、70年は歳をとらない薬を注射されたアイリーン・アドラーに対して、
ジェイムズ・モリアーティー教授は、ある特別な任務を与える。


本章において、ジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)やチャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン(Charles Augustus Milverton)達が登場して、米国へと船で向かうアイリーン・アドラーを拘束して、ある特別な役割が与える話が挿入され、コナン・ドイルの原作とは異なり、可哀想な結末に変更されている。


2022年12月8日木曜日

キャロル・ブッゲ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Haunting of Torre Abbey)- その4

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2018年に出版された
キャロル・ブッゲ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / トーア寺院に出没する幽霊」の表紙(部分)

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆(3.0)


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が短編「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire → 2021年8月15日 / 8月29日付ブログで紹介済)」(1924年)を発表した頃、精霊や妖精について、彼が熱心に講演をしたり執筆したりしていた時期に符合する。ところが、本作品の冒頭部分で、コナン・ドイルは、シャーロック・ホームズからジョン・H・ワトスンに対して、「This Agency stands flatfooted upon the ground, and there it must remain. The world is big enough for us. No ghosts need apply. (我が探偵局は、しっかりと足を地につけて建っているし、いつまでもそうあるべきだ。この世は、我々にとって、広大過ぎて、幽霊なぞに関わってはいられない。)」というセリフを言わせており、心霊研究家という顔と(推理)作家という顔をうまくバランスさせている。

米国出身の推理作家であるキャロル・ブッゲ(Carole Bugge:1953年ー)による本作品「トーア寺院に出没する幽霊(The Haunting of Torre Abbey)」(2000年)において、ホームズは、デヴォン州(Devon)トーキー(Torquay)に所在するトーア寺院(Torre Abbey)で発生する幽霊事件に取り組むことになる。


(2)物語の展開について ☆☆☆半(3.5)


ホームズが今回取り組む幽霊事件が発生する元修道院だったトーア寺院が所在するトーキーは、コナン・ドイル作「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1901年ー1902年)の舞台となるダートムーア(Dartmoor)に比較的近い。

本作品の場合、幽霊事件で、「バスカヴィル家の犬」の場合、魔犬伝説と、ホームズが取り組む事件の内容は異なっているが、同じデヴォン州内で発生する事件のためか、それとも、事件の裏に潜む犯人の悪意のためか、何故か、同じような雰囲気を湛えたまま、物語が進行する。

こういった幽霊事件においては、幽霊が何度も姿を現わして、細かいことは発生するものの、物語が大きく展開することは、あまりないのだが、本作品の場合も、その例にもれない。ただし、他の作家による作品とは異なり、同じようなことの繰り返しはなく、また、文書自体も読みやすいので、悪い印象を与えない。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆半(3.5)


米国ユタ州ソルトレークシティー出身の作家であるサム・シチリアーノ(Sam Siciliano:1947年ー)による「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日 / 9月19日 / 9月26日付ブログで紹介済)」(2013年)、「白蛇伝説(The White Worm → 2021年10月17日 / 10月21日付ブログで紹介済)」(2016年)やおよび「月長石の呪い(The Moonstone’s Curse → 2022年8月28日 / 9月28日 / 10月1日付ブログで紹介済)」(2017年)も、コナン・ドイル作「バスカヴィル家の犬」、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が執筆したホラー小説「白蛇の巣(The Lair of the White Worm → 2021年12月12日付ブログで紹介済)」(1911年)や英国の小説家 / 推理作家 / 劇作家であるウィリアム・ウィルキー・コリンズ(William Wilkie Collins:1824年ー1889年 → 2022年9月2日 / 9月4日付ブログで紹介済)が執筆した推理小説「月長石(The Monnstone → 2022年9月30日 / 10月13日付ブログで紹介済)」(1868年)をベースにしているが、ホームズは、事件の依頼人である恋人達が恐怖に震える中、手を拱いている上に、堂々巡りを繰り返すばかりで、悪い印象しかないが、本作品の場合、そのようなことはなく、事件の依頼人に振り回されることもなく、キチンと事件の解決に至る。


(4)総合評価 ☆☆☆半(3.5)


他の作家による作品とは異なり、本作品は、とても読みやすいし、内容的にも、非常に手堅いものの、残念ながら、作者の前作品である「インドの星(The Star of India → 2022年6月19日 / 7月13日 / 9月22日付ブログで紹介済)」(1997年)のレベルには達していないという印象である。