日本の出版社である早川書房から クリスティー文庫の1冊として出版されている アガサ・クリスティー作「春にして君を離れ」の表紙(部分) Photograph : CORBIS / amana images Cover Design : Hayakawa Design |
エルキュール・ポワロやミス・ジェイン・マープル等のシリーズ探偵を生み出したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が、メアリー・ウェストマコット(Mary Westmacott)名義で、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中の1944年に発表した長編小説である「春にして君を離れ(Absent in the Spring)」の場合、1930年代、主婦であるジョーン・スカダモア(Joan Scudamore)が、急病になった末娘(次女)を見舞うために、英国のクレイミンスターからバグダッド(当時、英国の勢力圏内)に来ているところから、話が始まる。
ジョーン・スカダモアは、優しい夫と良き子供達(1男2女)に恵まれ、良き妻 / 良き母であると自負するとともに、自分の理想の過程を築き上げたことに、非常に満ち足りていたところだったが、次女が急病になった旨の連絡があり、急いで次女の元へとやって来たのであった。
<ロドニー・スカダモア>
ジョーン・スカダモアの夫で、クレイミンスターにおいて、オルダマン・スカダモア・ウィットニー法律事務所を経営。
法律事務所は、元々、ロドニーの伯父であるハリーが経営していたが、司法試験に合格したロドニーは、ハリー伯父から、共同経営者として迎え入れられた。当時、ロドニーは、自分を弁護士には向いていないと考えており、本当のところは、農場経営を夢見ていたが、ジョーンによる説得を受けて、最終的には、ハリー伯父の法律事務所へと入った。
<トニー・スカダモア>
スカダモア夫妻の初子で、長男。
農科大学を卒業後、アフリカのローデシアにおいて、オレンジ園を経営。
ダーバン出身の娘と結婚。
<エイヴラル・スカダモア>
スカダモア夫妻の長女で、非常に理知的な性格。
以前、妻帯者である年上の男性との間で、激しい恋愛に落ちて、スカダモア夫妻の気を揉ませたことがある。
現在、株式ブローカーで、物静かな、良い人柄で、非常に裕福なエドワード・ハリソン・ウィルモットと結婚して、ロンドンに居住。
<バーバラ・スカダモア>
スカダモア夫妻の末っ子で、次女。
彼女は、スカダモア家を離れたがっており、レディー・ヘリオットを叔母に持つウィリアム・レイと結婚して、現在、バグダットに居住。
夫のウィリアムは、イラクの土木事業局に有力な地位を得ている。
レイ夫妻には、赤ん坊のモプシーが居る。
見舞いに訪れたジョーン・スカダモアの手当で、次女のバーバラは、無事に回復期へ入った。
急病となったバーバラと全く頼りにならないウィリアムの2人により混乱した家庭を、ジョーン・スカダモアは、万事怠り無く立て直したものと満足していた。
ところが、次女のバーバラが急病になった原因が、何故かハッキリとしない上に、バーバラとウィリアムに加えて、彼らの主治医までが、ジョーンに対して、非常に余所余所しい態度をみせる。
更に、バーバラが回復期に入ったため、ジョーンが英国へ引き上げようとするそぶりを見せると、バーバラとウィリアムの2人は、ジョーンを引き留めようとは、全くしなかった。寧ろ、どちらかと言うと、2人は、ジョーンに早く帰って欲しそうだった。それが、ジョーンには、非常に奇妙に思えたのである。
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