大英図書館(British Library)から2023年に出版された ジョン・ディクスン・カー作「黒眼鏡(英国版タイトル)/ 緑のカプセルの謎(米国版タイトル)」の表紙 (Front cover image : NRM / Pictorial Collection / Science & Society Picture Library) |
「緑のカプセルの謎(The Problem of the Green Capsule → 2019年8月3日 / 8月17日 / 8月28日付ブログで紹介済)」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1939年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズの長編第10作目に該る。
本作品の場合、ソドベリークロス(Sodbury Cross - 架空の場所)と言う村に3軒ある煙草店兼菓子店のうち、ミセス・テリー(Mrs. Terry)が営む一番人気の店において、何者かにより、菓子の中に毒入りチョコレート・ボンボンが混ぜられ、メイドの少女と子供3人に被害が出て、更に、子供の1人が亡くなると言う惨事が発生する。
続いて、村に住む桃栽培の実業家であるマーカス・チェズニー(Marcus Chesney)が、自宅において行った心理学的なテストの最中に殺害されると言う事件も起きる。彼は、フランス窓から室内へと入って来た「透明人間(The Invisible Man)」のような風体の人物によって、緑のカプセルを飲まされると言う寸劇において、緑のカプセルの中に入っていた青酸カリで殺されたのである。
ロンドン警視庁犯罪捜査部(スコットランドヤード CID)の上司であるハドリー警視(Superintendent Hadley)から命じられて、現地へと派遣されたアンドルー・マッカンドルー・エリオット警部(Inspector Andrew MacAndrew Elliot)は、対処に困り、バース(Bath)に滞在していた知り合いのギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)に助力を求めるのであった。
大英図書館(British Library)から2023年に出版された ジョン・ディクスン・カー作「黒眼鏡(英国版タイトル)/ 緑のカプセルの謎(米国版タイトル)」の裏表紙 (Front cover image : NRM / Pictorial Collection / Science & Society Picture Library) |
作者のジョン・ディクスン・カーは、当初、本作品のタイトルを「黒眼鏡(The Black Spectacles)」とした。英国の出版社であるハーミッシュ・ハミルトン社(Hamish Hamilton)は、作者のタイトルをそのまま受け入れて、同タイトルで出版した。一方、米国の出版社であるハーパー社(Harper)の場合、「The Black Spectacles」では、推理小説のタイトルとして判りづらいと考えて、マーカス・チェズニーの殺害に使用された青酸カリ入れの緑のカプセルに焦点を絞り、タイトルを「緑のカプセルの謎(The Problem of the Green Capsule)」へと変更した。日本においては、米国版のタイトルがベースとなっている。
大英図書館(British Library → 2014年5月31日付ブログで紹介済)が2023年に本作品を復刊した際、作者のジョン・ディクスン・カーが付けた「The Black Spectacles」を使用している。
また、本の表紙には、ケント州(Kent)にあるロイヤルタンブリッジウェルズ(Royal Tunbridge Wells → 2023年6月18日付ブログで紹介済)のハイストリートのポスターが使われている。これは、毒入りチョコレート・ボンボン事件が発生したミセス・テリーが営む煙草店兼菓子店が所在するソドベリークロス村のハイストリートを念頭に置いているからではないかと思われる。
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