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英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の ペーパーバック版の表紙 - 壁紙の絵が、謎の死を遂げたエミリー・アランデルの愛犬(テリア犬)である ボブの形に切り取られている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が執筆した長編としては、第21作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第14作目に該る「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」(1937年)の場合、1936年6月28日、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)が、エミリー・アランデル(Emily Arundell - なお、フルネームは、エミリー・ハリエット・ラヴァートン・アランデル(Emily Harriet Laverton Arundell))と名乗る老婦人から、自分の命に危険が迫っていることを示唆する内容の手紙を受け取るところから、その物語が始まる。奇妙なことに、手紙の日付は、その年の4月17日になっており、手紙が書かれてから2ヶ月後も経ってから投函されているのだった。
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| エルキュール・ポワロは、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。 <筆者撮影> |
ポワロの相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings → 2025年10月12日付ブログで紹介済)は、「老婦人のとりとめのない妄想ではないか?」と疑問を呈したが、手紙が差し出された経緯について興味を覚えたポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、事実を確かめるために、エミリー・アランデルが住むバークシャー州(Berkshire)のマーケットベイジング(Market Basing)へと赴くことにした。
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| アーサー・ヘイスティングス大尉は、 ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ エルキュール・ポワロの左斜め後ろに居る。 <筆者撮影> |
ポワロとヘイスティングス大尉の二人が、エミリー・アランデルの住所である小緑荘(Littlegreen House)を訪れると、屋敷の前には、「売家」の札が掲げられていた。疑問を抱いた二人が地元で尋ねると、エミリー・アランデル本人は、1ヶ月以上も前の1936年5月1日に亡くなっていたのである。
亡くなったエミリー・アランデルは、長女マチルダ(Matilda - なお、フルネームは、マチルダ・アン・アランデル(Matilda ann Arundell))、三女アラベラ(Arabella)、長男トマス(Thomas)および四女アグネス(Agnes - なお、フルネームは、アグネス・ジョルジーナ・メアリー・アランデル(Agnes Georgina Mary Arundell))の五人兄弟の次女で、ただ一人存命中だった。
彼女は、父親のアランデル将軍からかなりの財産を相続しており、非常に裕福であった。彼女は、生涯未婚の上、自分の財産を遺す子供が居なかったため、以下の姪と甥が将来彼女の遺産を分け合うものと思われていた。
* ベラ・タニオス(Bella Tanios):三女アラベラの娘
* チャールズ・アランデル(Charles Arundell):長男トマスの長男で、テリーザの兄
* テリーザ・アランデル(Theresa Arundell):長男トマスの長女で、チャールズの妹
なお、ベラ・タニオスは、ジャコブ・タニオス(Dr. Jacob Tanios - ギリシア人の医者)と結婚して、2人の間には、2人の子供(娘+息子)を設けていた。
また、テリーザ・アランデルは、マーケットベイジングに住むレックス・ドナルドスン医師(Dr. Rex Donaldson)と婚約していた。
ところが、エミリー・アランデルは、亡くなるわずか数日前に、遺言書を書き換えていて、新しい遺言書により、彼女の全財産は、彼女の相手役(コンパニオン)であるウィルへルミナ・ロウスン(Wilhelmina Lawson - 通称:ミニー(Minnie))に遺贈され、彼女の本当の肉親である姪2人と甥1人に対しては、何も残されなかったのである。そのため、地元マーケットベイジングの住人達の間では、その噂でもちきりだった。
エミリー・アランデルの遺族の間で憤懣がつのる中、彼女の愛犬であった「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」のテリア犬ボブ(Bob)は、彼女の死の真相究明に乗り出したポワロとヘイスティングス大尉に対して、何かを伝えようとしていたのである。
(56)テリア犬のボブ(Bob the dog)
テリア犬のボブは、バークシャー州のマーケットベイジングにある小緑荘の女主人だったエミリー・アランデルの愛犬である。
(57)燐光を発する煙に似たもの(phosphorescent smoke)
ポワロは、調査の過程において、「エミリー・アランデルが亡くなる少し前、小緑荘で降霊会が催された際、彼女の口から光るオーラが出るのを見た。」と言う証言を得た。
その証言を聞いたポワロは、「エミリー・アランデルの命を狙う犯人が、彼女が服用していた肝臓の薬のカプセルの1つを燐(リン)が入ったものにすり替えた」と推理する。燐の毒による死は、肝不全の症状に似ていることを、ポワロは知っていた。つまり、降霊会に出席した人達が目撃したエミリー・アランデルの口から出た光るオーラは、彼女が犯人に摂取させられた燐によるものだった。
(58)階段(stairwell)
小緑荘に住むエミリー・アランデルの元を甥や姪達が訪れた日の夜、彼女は階段から転落して、それが原因で寝込んでしまう。
当初は、彼女の愛犬ボブが遊び道具のボールを階段に置き忘れたままにした結果、彼女がボールに躓いたことが、階段から転落した原因と考えられていた。
ところが、彼女が亡くなった後、小緑荘に赴いたポワロは、階段の上の両側にニスが塗られた釘が打たれているのを発見して、そこに紐が張られていたのではないかと推理する。つまり、エミリー・アランデルが階段から転落したのは、単なる事故ではなく、階段の上に張られた紐に躓いて転落させれた疑いが強まったのである。







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