2022年12月15日木曜日

アガサ・クリスティー マープル 2023年カレンダー(Agatha Christie - Marple - Calendar 2023)- 「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」

ビル・ブラッグ氏が描く
ミス・マープルシリーズの長編第6作目である
「ポケットにライ麦を」の一場面

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の Harper Collins Publishers 社から出ているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズのペーパーバック版の表紙を使った2023年カレンダーのうち、7番目を紹介したい。


(7)「ポケットにライ麦を(A Pocket Full of Rye)」(1953年)


「ポケットにライ麦を」は、1953年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第6作目で、マザーグース(Mother Goose)の童謡の歌詞通りに、殺人事件が発生する「見立て殺人」をテーマにした作品である。


ロンドンにある投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキュー(Rex Fortescue)が、オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝したため、スコットランドヤードのニール警部(Inspector Neele)が、捜査に入った。


検死解剖の結果、レックス・フォーテスキューの体内から、イチイの木(yew tree)から抽出される毒性のアルカロイド(toxic alkaloid)であるタキシン(taxine)が見つかり、死因は、タキシンによる中毒であることが判明した。レックス・フォーテスキューは、朝食でとったマーマレードと一緒に、タキシンを摂取したものと思われた。

更に、レックス・フォーテスキューの着衣を調べたところ、不思議なことに、上着のポケットから、大量のライ麦(rye)が出てきたのである。


当然のことながら、スコットランドヤードによって、レックス・フォーテスキューの後妻であるアディール・フォーテスキュー(Adele  Fortescue)が、第一容疑者と見做された。

ケニア(Kenya)において結婚したばかりの次男のランスロット・ フォーテスキュー(Lancelot Fortescue - 愛称:ランス(Lance))と妻のパトリシア・フィーテスキュー(Patricia Fortescue - 愛称:パット(Pat))の二人は、レックス・フォーテスキューの招待に応じて、丁度、ケニアからロンドンへと向かっている最中で、「翌日、英国に帰国する。」という電報がパリから入ったので、警察が空港まで彼らを出迎えに行った。


ランスロットが、妻のパトリシアをロンドンに残して、サリー州(Surrey)ベイドンヒース(Baydon Heath)にあるフォーテスキュー家の邸宅イチイ荘(Yewtree Lodge)に到着した正にその日、義理の母親アディールが、青酸カリ(cyanide)が混入された紅茶を飲んで、死亡した。

更に、その数時間後、メイドのグラディス・マーティン(Gladys Martin)が、イチイ荘の庭において、絞殺死体で発見された。しかも、彼女の鼻には、洗濯バサミが付けられていたのである。


ニール警部は、ヘイ巡査部長(Sergeant Hay)と一緒に、捜査を進めるものの、残念ながら、何の進展も得られなかった。

そこへ、3件の殺人事件の記事を新聞で読んだミス・マープルが、イチイ荘を訪れる。不思議な縁で、亡くなったメイドのグラディスは、以前、マープルの家でメイドとして働いていたからである。



カレンダーには、投資信託会社の社長であるレックス・フォーテスキューが、オフィスにおいて、朝の紅茶を飲んだ後、急逝する前のシーンが描かれている。
床に伸びた影は、彼の個人秘書であるアイリーン・グローヴナー(Miss Irene Grosvenor)だと思われる。

Harper Collins Publishers 社から出版されている「ポケットにライ麦を」のペーパーバック版の表紙には、ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、紅茶が入ったポットの形に切り取られているものが使用されている。


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