英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2016年に出版された ステュアート・ダグラス作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 偽者の探偵」の表紙(一部分) |
読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆☆半(2.5)
本作品を読み始めた当初、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの二人が、ニューヨークに居る偽者のホームズの正体を暴く物語かと単純に予想していたが、物語の背後には、後に勃発する第二次ボーア戦争(Second Anglo-Boer War:1899年10月12日 - 1902年5月31日)の火種があることが、物語の終わり間近で判明する。ただし、このことは、ホームズの口から語られるだけで、物語の流れから推理することは不可能。英国の歴史、それも特に、ヴィクトリア朝時代のことを詳細に判っていないと(筆者も後で勉強した)、本当の意味が充分に理解できない。
(2)物語の展開について ☆☆(2.0)
ホームズとワトスンの二人が英国から米国へと向かう船内で、殺人事件が発生する。この殺人事件自体は、ニューヨークに居る偽者のホームズとは全く関係がないため、(A)船内で何も事件が発生しないと、物語の展開上、面白くないこと、また、(B)船内での事件を挿入して、物語の分量を膨らませることが目的かと思ったが、物語の終盤、展開上、ある程度意味があるものと判った。
ただ、ニューヨークに到着した後、偽者のホームズとその協力者が全く姿を見せず、更に、事件の関係者達も重い口を開こうとしないため、物語が遅々として進まず、終盤になって、やっと動きがある程度。文章自体は読み易いが、物語自体は全然面白くない。
(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆(2.0)
ホームズとワトスンの二人にとって、米国(ニューヨーク)は異邦の地である上に、スコットランドヤードのトビアス・グレッグスン警部(Inspector Tobias Gregson)の元同僚であるニューヨーク警察のシメオン・ブロック警部(Inspector Simeon Bullock)にいろいろと助力を依頼しなければならないという不利な点が多々あることを考慮したとしても、事件の関係者達を訪れて、話を聞くものの、彼らの重い口をなかなか開かせることができず、堂々巡りをしている感が否めず、物語をあまり楽しめない。
(4)総合評価 ☆☆(2.0)
ホームズとワトスンの二人によるニューヨークに居るホームズの偽者捜索の話は、あまりパッとしない。
また、偽者のホームズの背後には、この後勃発する第二次ボーア戦争がある。第一次ボーア戦争(First Anglo - Boer War:1880年12月16日 - 1881年3月23日)と第二次ボーア戦争を通し、大英帝国は積極的な帝国主義を遂行して、その支配圏の強化・拡大に努めており、本物のシャーロック・ホームズは、兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からの指示を受けて、実際のところ、その片棒を担いでいた訳で、現在を生きて居る我々からすると、正直ベース、気分の良いものではない。できれば、本作品から政治的な色合いを排除して、本物のホームズには、ニューヨークに居るホームズの偽者を退治するだけの話にしてもらった方が、後味が悪くなかったと言える。
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