英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2016年に出版された ステュアート・ダグラス作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 偽者の探偵」の表紙 |
1899年の夏、ニューヨークの「善意の密告者(A Well Wisher)」から「偽者と思われる人物が、ニューヨークにおいて、シャーロック・ホームズの名を騙って活動している。」という手紙を受け取ったシャーロック・ホームズは、その3日後、ジョン・H・ワトスンを伴って、大西洋を渡る「オーシャニック号(RMS Oceanic)」のデッキに居た。「オーシャニック号」は、世界最大の豪華客船で、これがリヴァプール(Liverpool)からニューヨークへの処女航海であった。
ここ最近、ホームズは、兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からの密命を受けて、秘かに何か重要な任務に従事していたこともあり、非常に不機嫌で怒りぽかったものの、ニューヨークまでの6日間の航海が、彼の精神衛生上、良い結果を生むだろうと、ワトスンは期待していた。
ホームズは、スコットランドヤードのトビアス・グレッグスン警部(Inspector Tobias Gregson)に依頼して、ニューヨーク警察のシメオン・ブロック警部(Inspector Simeon Bullock)への紹介を頼んでいた。ニューヨーク警察のブロック警部は、元々、英国のヨーク州(Yorkshire)生まれで、スコットランドヤードに在籍していた際、グレッグスン警部と一緒に訓練を受けた、とのこと。その後、ブロック警部は、米国へ移住したが、彼はグレッグスン警部と定期的に手紙のやりとりをしていて、連絡を絶やさなかったのである。
「オーシャニック号」内で発生した殺人事件を無事解決したホームズとワトスンの二人は、6日後の午前8時前に、ニューヨークに上陸した。ワトスンは、新聞売りの少年から、偽者のホームズが開設している事務所(英国を出発する前に、スコットランドヤードのグレッグスン警部から入手)への道順を尋ねると、幸いなことに、その事務所は徒歩圏内にあった。その事務所へ向かって急ぐホームズとワトスン。
街灯の建物の前に到着した二人は、家主のヴァン・ラールテ夫人(Mrs. Van Raalte)に対して、レストレード(Mr. Lestrade - ホームズの偽名)とジョン・マレー(Mr. John Murray - ワトスンの偽名)と名乗り、「自分達二人は、シャーロック・ホームズの英国側の同僚で、英国から彼を訪ねて来た。」と告げると、女主人に建物内へ入れてもらえた。
建物内の郵便受けには、「諮問探偵シャーロック・ホームズ」という表示があり、確かに、偽者のホームズは、ここに事務所を構えているようである。
ヴァン・ラールテ夫人によると、偽者のホームズは、1年程前からここに事務所を借りている、とのこと。ただし、彼は外出 / 出張していることが非常に多く、不在がちのため、不在時に届いた郵便物は、彼女が彼の友人宛に定期的に転送しているという説明だった。
偽者のホームズは、今のところ、不在のため、ホームズとワトスンの二人は、とりあえず退散するしか、他に手がなかったが、ヴァン・ラールテ夫人は、何かを隠しているように思えてならなかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿