英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2015年に出版された ステュアート・ダグラス作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / アルビノの財宝」の裏表紙 |
とりあえず、自分一人で問題の事件現場(英国首相を務めたソールズベリー卿(Lord Sailsbury)の肖像画は、既に壁から取り外されており、辺りも清掃済)を見回った後、ワトスンは美術館の館長(Secretary of the Gallery)であるドナルド・ペトリー(Donald Petrie)の部屋を訪ねた。ドナルド・ペトリー館長は、ホームズとワトスンの二人が、スコットランドヤードからの依頼を受けて、本件の捜査に携わっていることを聞くと、非常に喜び、事件の経緯について、ワトスンへの説明を始めた。
ちょうどその時、修復業者がチャールズ・オドネルに傷つけられた肖像画を引き取りにやって来たことを告げる若い女性が、館長室に入って来た。思わず、その女性に見とれてしまうワトスンに、ドナルド・ペトリー館長は、ローデス嬢(Miss Rhodes)を紹介する。
ローデス嬢が退出すると、ドナルド・ペトリー艦長は、事件の続きに関する説明を再開した。彼によると、チャールズ・オドネルは警備員二人に捕まるのを逃れるため、周辺の作品を手当たり次第に壊してまわったと言う。特に、彼は、清教徒革命(Puritan Revolution:1642年ー1649年)時に、議会派を率いて、王党派を破り、時の英国王チャールズ1世(Charles I:1600年-1649年 在位期間:1625年ー1649年)を処刑した護国卿( Lord Protector)オリヴァー・クロムウェル(Oliver Cromwell:1599年ー1659年)の胸像を武器として振り回した、とのこと。つまり、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)による説明では、被害を蒙ったのは、ソールズベリー卿の肖像画だけのようであったが、実際には、数々の作品が被害を受けていた訳で、ホームズが自分をナショナルポートレートギャラリーへ派遣したのは、これ(こういった新事実を得るため)が目的だったのではないかと、ワトスンが確信したのであった。
ナショナルポートレートギャラリー (National Portrait Gallery)で販売されている チャールズ1世の肖像画の葉書 (Daniel Mytens / 1631年 / Oil on canvas 2159 mm x 1346 mm) |
ナショナルポートレートギャラリーで販売されている オリヴァー・クロムウェルの肖像画の葉書 (Robert Walker / 1649年頃 / Oil on panel 1257 mm x 1016 mm) |
ワトスンは、「チャールズ・オドネルがこれらの作品を狙った理由について、心当たりはないか?」と訪ねるものの、残念ながら、ドナルド・ペトリー館長の答えは否定的だった。これ以上、ドナルド・ペトリー館長から新たに得られる情報はないと考えたワトスンは、辞去しようとして、席を立った。
ドナルド・ペトリー館長の求めに応じて、ワトスンが(館長が持つ)自分の著作にサインをしていると、ローデス嬢が館長室に慌てて入って来る。彼女は、ワトスンとドナルド・ペトリー館長の二人に対して、驚くべき事実を告げたのであった。
早朝、チャールズ・オドネルが傷つけた作品の一つ、チャールズ1世の肖像画が「贋作(forgery)」であることが判明したと…
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