2021年6月23日水曜日

ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / 神の息吹」(Sherlock Holmes : The Breath of God by Guy Adams) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2011年に出版された
ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / 神の息吹」の表紙
(Cover Design : Amazing15.com
Images : Shutterstock)


作者のガイ・アダムス(Guy Adams:1976年ー)は、英国出身で、俳優やコメディアンとして活躍した後、規則的な生活を求めて、作家業へ転身。

本作品「シャーロック・ホームズ / 神の息吹(Sherlock Holmes / The Breath of God)」は、2011年に発表されている。



新世紀幕開け直前の1899年12月27日の夜、宵のうちから降り出した雪が降り続く中、その事件は発生した。

社交界の若き名士の一人であるヒラリー・ド・モンフォール(Hilary De Montfort)は、ロンドン中心部のウェストエンド(West End)内にあるグローヴナースクエア(Grosvenor Square → 2015年2月22日付ブログで紹介済)を囲む通りを恐怖にかられて走っていた。ド・モンフォール本人は、何かに追われていると思っているようだったが、同スクエア内に居た年配の目撃者は、「その通りには、自分とド・モンフォール以外に、誰一人居なかった。」と、後で証言した。

旧米国大使館(ホテルへ改装される予定)側から見た
グローヴナースクエアの広場


翌朝、ド・モンフォールの遺体が、グローヴナースクエア内で発見された。一人の人間による仕業を超える位、身体中の骨が砕け、青痣だらけだった上に、テムズ河(Thames River)の岸に打ち上げられた溺死体のように膨張し、人の形をとどめていなかった。死体への打撃にステッキや棍棒等が使用された形跡はなく、まるで非常に高いところから地面に叩き付けられたかのようであった。ところが、グローヴナースクエアは開けた平坦な場所であり、ド・モンフォールの遺体の周囲には、昨夜降った雪が積もっているだけで、彼以外の足跡は何もなく、彼がどのようにしてなくなったのかについて、全く説明の仕様がなかったのである。

広場内から見たグローヴナースクエアの北側


そんなある日、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のシャーロック・ホームズの元を、ロンドン在住の医師で、「心霊医師(Psychical Doctor)」と巷で呼ばれているジョン・サイレンス博士(Dr. John Silence)が、相談に訪れる。胡散臭げな人物と会うことに、最初は難色を示したホームズであったが、サイレンス博士が語る内容に対して、ホームズは次第に興味をつのらせていくのであった。


サイレンス博士によると、昔治療したことがある水夫シムコックス(Simcox)が訪ねて来て、娘のエルザ(Elsa)が悪霊に取り憑かれているようだと語った、とのことだった。早速、サイレンス博士は、キングスクロス駅(King’s Cross Station)の近くにあるシムコックスのアパートへ赴き、水晶をエルザの額に押し当てて、診療を開始した。

すると、エルザは、可愛らしく無邪気な顔から恐ろしい老婆の顔へと変貌した。サイレンス博士から「君は誰だ?」と尋ねられたエルザは、「どれも自分の名前ではないが、お前に教えてやれる名前は、いくつかある。」と言って、次の3つの名前を告げた。一つ目は「ヒラリー・ド・モンフォール」、二つ目は「ボレスキンの領主(Laird of Boleskine)」、そして、最後の三つ目は「シャーロック・ホームズ」だと…


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