2025年7月6日日曜日

ロンドン ヴァレーエッジ通り211番地(211 Valley Edge)

ハムステッド地区内のホーリーヒル通り(南側)の坂を下っているところ -
画面左手には、ホーリーヒルガーデン(Holly Hill Garden)が整備されている。


米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が1935年に発表した推理小説で、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)が登場するシリーズ第5作目に該る「死時計(Death-Watch → 2025年4月30日 / 5月4日付ブログで紹介済)」の場合、9月4日、風が吹くひんやりした夜の12時近く、ギディオン・フェル博士とメルスン教授(Professor Melson - 歴史学者で、ギディオン・フェル博士の友人)が、ホルボーン通り(Holborn → 2025年5月6日付ブログで紹介済)を歩いていところから、その物語が始まる。


ホルボーン通りの東端(ホルボーン通りは、ここから右手(西方面)へと向かって延びている)- 
ホルボーンサーカス内に建つのは、アルバート公(Albert, Prince Consort)のブロンズ像 。

アルバート公は、ヴィクトリア女王(Queen Victoria:1819年―1901年
在位期間:1837年ー1901年)の夫君である。
ホルボーンサーカスの南西の角に建つビル(画面奥の建物)には、
スーパーマーケットを全国的に展開しているセインズベリーズ(Sainsbury's)の本社が入居している。


ホルボーン通りの西端(ホルボーン通りは、左手(東方面)からここまで延びている)-
ここがシティー・オブ・ロンドンの北西の境界線に該り、
この交差点を過ぎると、ハイホルボーン通りとなり、
ロンドンの特別区の一つであるロンドン・カムデン区ホルボーン地区内へ入る。


2人は、劇場で映画を観た帰りで、メルスン教授が宿泊する予定のリンカーンズ・イン・フィールズ(Lincoln’s Inn Fileds → 2016年7月3日付ブログで紹介済)へと向かっていた。メルスン教授は、当初、ブルームズベリー地区(Bloomsbury)に宿泊しようとしたが、生憎と、どこも満員だったため、居心地が悪そうではあったものの、リンカーンズ・イン・フィールズ15番地(15 Lincoln’s Inn Fields → 2025年6月17日付ブログで紹介済)に寝室兼居間を見つけていた。

その日の午後、メルスン教授は、フォイルズ書店(Foyles → 2025年5月7日 / 5月9日付ブログで紹介済)において、中世ラテン語の写本辞書を見つけており、これは正真正銘の掘り出し物のため、ギディオン・フェル博士は、メルスン教授の宿でそれを見せてもらおうと考えていたのである。


現在、チャリングクロスロード107番地(107 Charing Cross Road)に所在する
フォイルズ書店(本店)の外観


リンカーンズ・イン・フィールズ15番地へ向かう途中、ギディオン・フェル博士から、


(1)1週間程前にガムリッジデパートの貴金属宝石売場において発生した事件(女性の万引き犯による売場監督の殺害+懐中時計の盗難)のこと


(2)万引き犯の女性がガムリッジデパートの貴金属宝石売場から盗んだ懐中時計は、有名な時計師(clockmaker)であるジョハナス・カーヴァー(Johannus Carver)が所蔵していたものであること / ガムリッジデパートは、ギルドホールアートギャラリー (Guildhall Art Gallery → 2025年5月13日付ブログで紹介済)からも借り出していたこと


(3)時計師のジョハナス・カーヴァーは、リンカーンズ・イン・フィールズ16番地(16 Lincoln’s Inn Fields → 2025年6月22日付ブログで紹介済)に住んでおり、それは、メルスン教授の宿であるリンカーンズ・イン・フィールズ15番地の隣りの建物であること


を知らされたメルスン教授は、言葉を失う。


ギルドホールアートギャラリーの建物正面外壁


我に戻ったメルスン教授は、ギディオン・フェル博士に対して、今朝の出来事を話し出す。

メルスン教授は、朝食後の午前9時頃、外へ出ると、ベンチに腰かけて、タバコをふかしていた。

すると、ジョハナス・カーヴァーの家のドアが開いて、家政婦のミセス・ゴースンが怖い顔をして階段を降りて来ると、舗道を歩いて来た警官に対して、泥棒に押し入れられたと訴えた。

ミセス・ゴースンによると、ジョハナス・カーヴァーは、個人的な知り合いである貴族からの依頼を受けて、田舎の本邸の塔にはめ込む大時計を製作している最中、とのこと。昨夜、その時計が漸く出来上がったので、ジョハナス・カーヴァーが塗料を塗り、乾かすために、奥の部屋に置いたのだが、何者かが家に押し入り、その時計の針を外して、盗み去ったのである。

後から、ジョハナス・カーヴァーの養女であるエリナー・カーヴァー(Eleanor Carver)が出て来た。そして、「多分、悪戯だろう。」と言って、ミセス・ゴースンを宥めると、エリナー・カーヴァーは彼女を連れて、家の中へ戻って行った。なお、ジョハナス・カーヴァー本人は、姿を見せなかった。


リンカーンズ・イン・フィールズ内の広場 


ギディオン・フェル博士とメルスン教授の2人は、リンカーンズ・イン・フィールズの北側へ出た。


リンカーンズ・イン・フィールズ12番地の建物 -
サー・ジョン・ソーンズ博物館の一棟


リンカーンズ・イン・フィールズ13番地の建物 -
サー・ジョン・ソーンズ博物館の一棟


リンカーンズ・イン・フィールズ14番地の建物 -
サー・ジョン・ソーンズ博物館の一棟


2人がサー・ジョン・ソーン博物館(Sir John Soane’s Museum - 現在の住所:リンカーンズ・イン・フィールズ12-14番地 / 12 - 14 Linclon’s Inn Fields → 2025年5月22日 / 5月30日 / 6月3日 / 6月13日付ブログで紹介済)の手前まで歩いて来ると、その隣りは、メルスン教授の宿であるリンカーンズ・イン・フィールズ15番地で、更にその向こうは、時計師のジョハナス・カーヴァーの家であるリンカーンズ・イン・フィールズ16番地だった。


左側から、リンカーンズ・イン・フィールズ12番地 / 13番地 / 14番地
(サー・ジョン・ソーンズ博物館)、
リンカーンズ・イン・フィールズ15番地(メルスン教授の宿泊先)、そして、
リンカーンズ・イン・フィールズ16番地(時計師であるジョハナス・カーヴァーの住居)。


その時、ギディオン・フェル博士が、ジョハナス・カーヴァーの家の玄関のドアが空いているのに気付いた。また、メルスン教授は、家の真ん前の木の下に、ひときわ黒い影を見てとった。問題の家から呻き叫ぶ声が聞こえると、木の下の人影がその場を離れると、家の玄関前の石段を上がって行った。その人物の頭に、警官のヘルメットが黒く浮かび上がるのを見て、メルスン教授は思わずホッとした。


日本の出版社である東京創元社から創元推理文庫として出版された
ジョン・ディクスン・カー作「死時計」の裏表紙
カバーイラスト:山田 維史

現在のリンカーンズ・イン・フィールズ16番地の建物には、
ジョン・ディクスン・カー作「死時計」の裏表紙に描かれたような
地面から家の玄関までの長めの石段は存在していない。
また、リンカーンズ・イン・フィールズ16番地の場所として、
リンカーンズ・イン・フィールズの北西(左上)の角に
① が表示されているが、
実際には、もっと右側の位置、
リンカーンズ・イン・フィールズの北側の真ん中辺りが正しい。


ギディオン・フェル博士が、その警官に追い付くと、彼は、スコットランドヤードのディヴィッド・ハドリー主任警部(Chief Inspector David Hadley)の部下であるピアスだった。

ギディオン・フェル博士、メルスン教授とピアス警官の3人が、ジョハナス・カーヴァーの家の玄関ホールに入ると、奥に一続きの階段があり、2階から射している明かりが階段下まで届いていた。3人が階段を上がり、2階の奥にある両開きのドアへと向かった。


その部屋では、2人の人間が入口の敷居を見つめており、もう一人は椅子に座って両手で頭をかかえていた。更に、その敷居のところには、一人の男が右脇をやや下にして仰向けに倒れていた。

最初の2人は、ジョハナス・カーヴァーの養女であるエリナー・カーヴァーとカーヴァー家の同居人であるカルヴィン・ボスコーム(Calvin Boscombe)で、カルヴィン・ボスコームは手にピストルを持っていた。

椅子に座って両手で頭をかかえていたのは、カルヴィン・ボスコームの友人で、スコットランドヤード犯罪捜査部(CID)の元主任警部(former Chief Inspector)であるピーター・E・スタンリー(Peter E. Stanley)だった。


そして、敷居のところに倒れていた男は、ピストルで撃たれた訳ではなく、背後から喉を貫き、胸の中へ突き刺されて殺されていた。被害者の体から突き出ている凶器を見たギディオン・フェル博士は、ジョハナス・カーヴァーがある貴族のために製作していた大時計から盗まれた長針だと推測する。

更に、驚くことに、後に判明した被害者の身元は、なんと、ガムリッジデパートの貴金属宝石売場において発生した事件を担当していたジョージ・フィンリー・エイムズ警部(Detecive-Inspector George Finley Ames)だったのである。

非常に不可思議な事件だと言えた。


ホーリーヒルガーデン内に設置されている木の彫刻

ふいにピアスがボスコームのほうを向いて、

「このホトケさんは、ひょっとしてあなたの親戚の人じゃありませんか?」

ボスコームは心底びっくりした。いささかショックを受けたらしい。

「とんでもない! わたしの親戚だなんて! いったい - いったいどうしてそんなことを?」

彼はためらい、そわそわした。こいつは殺人の嫌疑と同じくらいカルヴィン・ボスコームを狼狽させたらしい、とメルスンは思った。「お巡りさん、事態はますますとっぴょうしもないものになってきたようですな! わたしは知りませんよ、この男が何者だか。どんなことがあったのか知りたいんですか? なにもありゃしませんでしたよ! つまり、正確に言うと、わたしは友人と…」と、身じろぎもせず立っている大男のほうへ顎をしゃくって、「わたしは友人と居間で腰をおろして話していたんです。二人で寝酒をやって、友人が帰ろうとして帽子を手にしたときー」

「ちょっと待ってください」警官はさっと手帳を構えて、「あなたの名前は?」

「ピーター・スタンレー」と、大男は答えた。なにか奇妙な記憶が心のなかでうごめいたかのような、重苦しい沈んだ声だった。「ピーター・E・スタンレー」意地悪く教え諭してでもいるように、白目を見せて、「ハムステッドのヴァレー・エッジ通り二一一番地。わたしは - えー - この家の住人じゃありません。それに、わたしもホトケさんを知りません」

(吉田 誠一訳)


ホーリーヒル通り(南側)の坂の中腹から
ホーリーヒル通り(北側)の家並みを望む(その1)。

殺人現場に居合わせることになったスコットランドヤード犯罪捜査部の元主任警部であるピーター・E・スタンリーは、警官のピアスに対して、「自分の住所は、ハムステッド地区(Hampstead → 2018年8月26日付ブログで紹介済)のヴァレー・エッジ通り211番地(211 Valley Edge)だ。」と答えている。


ホーリーヒル通り(南側)の坂の中腹から
ホーリーヒル通り(北側)の家並みを望む(その2)。

ハムステッド地区は、ロンドンの特別区の一つであるロンドン・カムデン区(London Borough of Camden)内にある地区で、ハムステッドヒース(Hampstead Heath → 2015年4月25日付ブログで紹介済)とハムステッドハイストリート(Hampstead High Street)を中心とした緑が非常に多い場所である。また、古くから文化人が多く住んでいて、現在は高級住宅街の一つとして知られている。


ホーリーヒル通り(南側)の坂から
坂下を見たところ -
地下鉄ハムステッド駅は、画面中央奥に見える車がある場所を
左へ曲がった位置に所在している。

ただし、現在の住所表記上、ハムステッド地区には、ヴァレー・エッジ通り211番地は存在しておらず、架空の住所である。


ホーリーヒル通り(南側)の坂の麓から
ホーリーヒル通りを見上げたところ


スコットランドヤード犯罪捜査部の元主任警部であるピーター・E・スタンリーが住むヴァレー・エッジ通り211番地は架空の住所のため、地下鉄ハムステッド駅(Hampstead Tube Station)に近いホーリーヒル通り(Holly Hill)が坂になっていることに加えて、通りの両側にかなりの高低差があり、「谷(Valley)」のようになっているので、そこで撮影した写真を使用している。


2025年7月5日土曜日

コナン・ドイル作「高名な依頼人」<小説版>(The Illustrious Client by Conan Doyle )- その4

英国で出版された「ストランドマガジン」
1925年2月号 / 3月号に掲載された挿絵(その4)-
シャーロック・ホームズは、
彼の協力者である情報屋のシンウェル・ジョンスンから紹介されたキティー・ウィンターを伴って、
1902年9月4日の午後5時半に、
バークリースクエア104番地に住む
ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の元を訪れた。
生憎と、
ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の態度は頑なで、
ホームズ達の説得には、全く耳を傾けず、
ホームズの計画は不調に終わってしまった。
画面左側から、シャーロック・ホームズ、キティー・ウィンター、
そして、
ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢。
挿絵:ハワード・ケッピー・エルコック
(Howard Keppie Elcock:1886年ー1952年)


1902年9月3日の午後4時半に、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)において、サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery)の訪問を受けた後、ジョン・H・ワトスンは、本業の医師として急ぎの仕事があったため、その晩、シンプソンズ(Simpson’s → 2014年11月23日付ブログで紹介済)でシャーロック・ホームズと会い、彼からデマリー大佐との会見以降の経過を聞いた。


ローストビーフが有名なシンプソンズは、
ストランド通り沿いに立っている。


デマリー大佐が帰った後、ホームズは、早速、キングストン(Kingston)近くのヴァーノンロッジ(Vernon Lodge)まで馬車で出かけて、オーストリアの貴族であるアデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Gruner)に会っていた。

残念ながら、ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢であるヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville)との婚約破談にかかるホームズとアデルバート・グルーナー男爵の交渉は不調に終わった。また、ホームズが男爵邸を辞去する際、紳士的な態度を崩さなかったものの、アデルバート・グルーナー男爵は、ホームズに対して、本件から手を引くように伝えるとともに、フランスの探偵(French agent)のル・ブラン(Le Brun)を引き合いに出して、明確な「警告」を与えたのだった。


ホームズがワトスンを連れて、シンプソンズからベイカーストリート221B に戻ると、ロンドンの裏社会に通じた情報屋で、ホームズの協力者であるシンウェル・ジョンスン(Shinwell Johnson)が、一人の女性と一緒に、ホームズの帰りを待っていた。

彼女の名前は、キティー・ウィンター(Kitty Winter)で、アデルバート・グルーナー男爵の元愛人で、被害者でもあり、今回の件で、ホームズに協力することを喜んで確約する。

キティー・ウィンター曰く、アデルバート・グルーナー男爵は、蝶や蛾の収集家のように、女性を収集する人物で、今までに弄んだ女性の情報(スナップ写真、名前やその他の詳細)を記した手帳を、奥の書斎の古い引き出しの整理箱の中に隠してある筈、とのことだった。


バークリースクエアガーデンズ(Berkeley Square Gardens)の内部 -
なお、シャーロック・ホームズとキティー・ウィンターが訪ねた
ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の住まいであるバークリースクエア104番地は架空の住所であり、
同スクエアには3桁の番地は存在していない。


翌日(9月4日)の午後5時、キティー・ウィンターにベイカーストリート221B に来てもらうと、ホームズは、彼女を連れて、同日の午後5時半に、ド・メルヴィル将軍とヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢が住むバークリースクエア104番地(104 Berkeley Square → 2014年11月29日付ブログで紹介済)を訪問した。

生憎と、またもや、ワトスンは、本業の医師としての仕事があったため、ホームズ達に同行することは叶わなかった。


ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢は、ホームズの訪問は既に判っていたようで、落ち着き払った冷淡な態度を全く崩さなかったが、キティー・ウィンターの同席は全く想定していなかったのか、少し驚いた表情を見せた。

しかしながら、ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢は、ホームズによる説得、そして、キティー・ウィンターによる暴露にも、全く聞く耳を持たず、アデルバート・グルーナー男爵に対する妻殺害疑惑を濡れ衣だと思い込んでいる彼女の態度は非常に頑なで、どんな説得にも耳を貸そうとはしなかったのである。

ド・メルヴィル将軍をはじめ、ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の周りの者が、彼女に対して、アデルバート・グルーナー男爵との結婚を思いとどまるよう言い含めるものの、彼らの説得が全く無意味だったのと同様だった。

感情が激した結果、ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢の方へ思わず飛び出したキティー・ウィンターであったが、ホームズがすかさず手首を掴むと、キティー・ウィンターを扉の方へ引き摺っていき、馬車に戻して、なんとか事無きを得たのである。


地下鉄チャリングクロス駅(Charing Cross Tube Station)の構内にある地図 -
チャリングクロス交差点(Charing Cross → 2016年5月25日付ブログで紹介済)から東へ向かって、
ストランド通りは始まる。


本業の医師の仕事を終えたワトスンは、その日の夜、ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)のレストラン(シンプソンズだと思われる)において、ホームズから、ヴァイオレット・ド・メルヴィル嬢との会見の結果を聞いた。

その際、ホームズは、ワトスンに対して、「こちらが次の一手を指す前に、向こうが次の一手を打ってくる可能性がありうる。(it is possible that the next move may lie with them rather than with us.)」と告げる。


不幸なことに、後日、ホームズの読みは的中したのである。


2025年7月4日金曜日

コナン・ドイル作「高名な依頼人」<英国 TV ドラマ版>(The Illustrious Client by Conan Doyle )- その1

英国の俳優であるジェレミー・ブレットが主人公のシャーロック・ホームズを演じた
英国のグラナダテレビジョン制作の「シャーロック・ホームズの冒険」の
「高名な依頼人」における1場面 -
シャーロック・ホームズ博物館(Sherlock Holmes Museum)において、絵葉書として販売されていた。

シャーロック・ホームズは、
アデルバート・グルーナー男爵が放った2人組の暴漢に襲われて、大怪我を負ってしまう。
仕事で外出先に居たジョン・H・ワトスンは、
「シャーロック・ホームズ氏 襲撃される」と言う新聞売りの声を聞き、
新聞を買い、その記事を読んで、非常に驚くのだった。

コナン・ドイルの原作の場合、ホームズが襲撃された場所は、
カフェロイヤル(Cafe Royal → 2014年11月30日付)の外の
リージェントストリート(Regent Street)の路上で、
襲撃された時間は朝だった。
一方、英国 TV ドラマ版の場合、ホームズが襲撃された場所は、
夕食を一緒に食べたワトスンと別れた後、
一人でベイカーストリート221B へと戻る途中の路上で、
襲撃された時間は夜だった。

「シャーロック・ホームズ氏が暴漢の襲撃に遭う!」と言う新聞の見出しは、
原作の場合、「MURDEROUS  ATTACK UPON SHERLOCK HOLMES」となっているが、
英国 TV ドラマ版の場合、「MURDEROUS  ATTACK ON SHERLOCK HOLMES」となっている。
また、原作の場合、新聞の見出しは、黄色の地に黒色の文字で書かれているが、
英国 TV ドラマ版の場合、白色の地に黒色の文字で書かれている。

なお、英国 TV ドラマ版において、
ワトスンは、道の中央に立っていた新聞売り(画面右奥の人物)から、新聞を買っているので、
厳密に言うと、映像上、このような場面は存在していない。

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「高名な依頼人(The Illustrious Client → 2025年6月18日 / 6月23日 / 6月27日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、50番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1925年2月号と同年3月号に、また、米国の「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1924年11月8日号に掲載された。

同作品は、1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Case-Book of Sherlock Holmes)」に収録されている。


本作品は、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が制作した「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)において、TV ドラマとして映像化された。具体的には、第5シリーズ(The Case-book of Sherlock Holmes)の第5エピソード(通算では第31話)として、英国では1991年に放映されている。


配役は、以下の通り。


(1)シャーロック・ホームズ → ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)

(2)ジョン・H・ワトスン → エドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke:1932年ー2011年)


(3)ハドスン夫人(Mrs. Hudson)→ Rosalie Williams


<事件関係者>

(4)アデルバート・グルーナー男爵(Baron Adelbert Gruner:オーストリアの貴族で、現在、英国のキングストン(Kingston)近くのヴァーノンロッジ(Vernon Lodge)に居住)→ Anthony Valentine

(5)グルーナー男爵夫人(Baroness Gruner:アデルバート・グルーナー男爵の妻)→ Carol Noakes

(6)サー・ジェイムズ・デマリー大佐(Colonel Sir James Damery:今回の事件の表向きの依頼人)→  David Langton

(7)ヴァイオレット・ド・メルヴィル(Violet de Merville:ド・メルヴィル将軍(General de Merville)の令嬢で、アデルバート・グルーナー男爵の婚約者)→ Abigail Cruttenden

(8)ジャーヴィス(Jarvis:アデルバート・グルーナー男爵の執事)→ John Pickles

(9)キティー・ウィンター(Kitty Winter:アデルバート・グルーナー男爵の元愛人で、被害者)→ Kim Thomson

(10)シンウェル・ジョンスン(Shinwell Johnson:ロンドンの裏社会に通じた情報屋で、ホームズの協力者)→ Roy Holder


(3)

ハドスン夫人は、原作には登場しないが、英国 TV ドラマ版には登場している。


(5)

グルーナー男爵夫人は、原作の場合、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)を訪れたサー・ジェイムズ・デマリー大佐とホームズ / ワトスンの間で、言及されているのみだが、英国 TV ドラマ版の場合、物語の冒頭において、映像として登場する。


(8)

アデルバート・グルーナー男爵の執事は、原作の場合、登場するものの、名前については、言及されていない。英国 TV ドラマ版の場合、「ジャーヴィス」と言う名前が与えられている。


2025年7月3日木曜日

アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」<小説版(愛蔵版)>(Dumb Witness by Agatha Christie )- その2

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の
愛蔵版(ハードカバー版)の裏表紙
(Cover design and 
illustration
by Sarah Foster / 
HarperCollinsPublishers Ltd. ) -
小緑荘の女主人であるエミリー・アランデルの
飼い犬であるボブ(Bob)と犬の遊び道具のボールが描かれている。
また、
エミリー・アランデルが転落して、
寝込む原因となった階段が、画面左手に描かれている。
表紙に描かれたボブは、階段下に居て、
こちらに顔を向けているが、
裏表紙に描かれたボブは、
階段下ではなく、階段を昇っており、
画面内にあるのは、下半身だけで、上半身は画面の外にある。

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」(1937年)の場合、1936年6月28日、エルキュール・ポワロが、エミリー・アランデル(Emily Arundell - なお、フルネームは、エミリー・ハリエット・ラヴァートン・アランデル(Emily Harriet Laverton Arundell))と名乗る老婦人から、自分の命に危険が迫っていることを示唆する内容の手紙を受け取るところから、物語が始まる。奇妙なことに、手紙の日付は、その年の4月17日になっており、手紙が書かれてから2ヶ月後も経ってから投函されているのだった。

ポワロの相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Capitain Arthur Hastings)は、「老婦人のとりとめのない妄想ではないか?」と疑問を呈したが、手紙が差し出された経緯について興味を覚えたポワロは、ヘイスティングス大尉を伴って、事実を確かめるために、エミリー・アランデルが住むバークシャー州(Berkshire)のマーケットベイジング(Market Basing)へと赴くことにした。


ポワロとヘイスティングス大尉の二人が、エミリー・アランデルの住所である小緑荘(Littlegreen House)を訪れると、屋敷の前には、「売家」の札が掲げられていた。疑問を抱いた二人が地元で尋ねると、エミリー・アランデル本人は、1ヶ月以上も前の1936年5月1日に亡くなっていたのである。


2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「もの言えぬ証人」の
愛蔵版(ハードカバー版)の見返し部分 -
小緑荘の女主人であるエミリー・アランデルの
飼い犬であるボブの足跡でデザインされている。


亡くなったエミリー・アランデルは、長女マチルダ(Matilda - なお、フルネームは、マチルダ・アン・アランデル(Matilda ann Arundell))、三女アラベラ(Arabella)、長男トマス(Thomas)および四女アグネス(Agnes - なお、フルネームは、アグネス・ジョルジーナ・メアリー・アランデル(Agnes Georgina Mary Arundell))の五人兄弟の次女で、ただ一人存命中だった。

彼女は、父親のアランデル将軍からかなりの財産を相続しており、非常に裕福であった。彼女は、生涯未婚の上、自分の財産を遺す子供が居なかったため、以下の姪と甥が将来彼女の遺産を分け合うものと思われていた。


(1)ベラ・タニオス(Bella Tanios):三女アラベラの娘   

(2)チャールズ・アランデル(Charles Arundell):長男トマスの長男で、テリーザの兄

(3)テリーザ・アランデル(Theresa Arundell):長男トマスの長女で、チャールズの妹


なお、ベラ・タニオスは、ジャコブ・タニオス(Dr. Jacob Tanios - ギリシア人の医者)と結婚して、2人の間には、2人の子供(娘+息子)を設けていた。

また、テリーザ・アランデルは、マーケットベイジングに住むレックス・ドナルドスン(Dr. Rex Donaldson - 医者)と婚約していた。


ところが、エミリー・アランデルは、亡くなるわずか数日前に、遺言書を書き換えていて、新しい遺言書により、彼女の全財産は、彼女の相手役(コンパニオン)であるウィルへルミナ・ロウスン(Wilhelmina Lawson - 通称:ミニー(Minnie))に遺贈され、彼女の本当の肉親である姪2人と甥1人に対しては、何も残されなかったのである。そのため、地元マーケットベイジングの住人達の間では、その噂でもちきりだった。


エミリー・アランデルの遺族の間で憤懣がつのる中、彼女の愛犬であった「もの言えぬ証人(Dumb Witness)」のテリア犬ボブ(Bob)は、彼女の死の真相究明に乗り出したポワロとヘイスティングス大尉に対して、何かを伝えようとしていたのである。


2025年7月2日水曜日

ロンドン リッツ ロンドン(The Ritz London)- その1

ピカデリー通り沿いにある地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の入口から
リッツ ロンドンの建物を見上げたところ


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」の場合、1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island)に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれるところから、物語が始まる。

彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。



招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。謎の声による告発を聞いた以下の10人は戦慄する。


(1)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong)

医師で、酔って酩酊したまま手術を行い、患者を死なせたと告発された。

(2)エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent)

信仰心の厚い老婦人で、使用人の娘に厳しく接して、その結果、彼女を自殺させたと告発された。

(3)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore)

元警部(Detective Inspector)で、偽証により無実の人間に銀行強盗の罪を負わせて、死に追いやった告発された。

(4)ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne)

体育教師の若い女性で、家庭教師をしていた子供に無理な距離を泳がせることを許可し、その結果、その子供を溺死させたと告発された。

(5)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard)

元陸軍中尉で、東アフリカにおいて先住民族から食料を奪った後、彼ら21人を見捨てて死なせたと告発された。

(6)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur)

退役した老将軍で、妻の愛人だった部下を故意に死地へ追いやったと告発された。

(7)アンソニー・ジェームズ・マーストン(Anthony James Marston)

遊び好きの上、生意気な青年で、自動車事故により二人の子供を死なせたと告発された。

(8)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave)

高名な元判事で、陪審員を誘導して、無実の被告を有罪として、死刑に処したと告発された。

(9)トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers)

(10)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers)

仕えていた老女が発作を起こした際、彼らは必要な薬を投与しないで、老女を死なせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面
(HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋)


ウォーグレイヴ判事が話の進行役になり、応接間は即席の法廷の様相を呈した。

判事が言った。

「さて、ロジャーズ、今度のことの真相を、明らかにしなければならない。このオーエンというのは、どういう人なんだ」

ロジャーズは判事を見つめた。

「このお屋敷の持ち主でございます」

「それは分かっている。その人について知っていることを話してもらいたいのだ」

ロジャーズは首をふった。

「無理でございます。わたくしはまだ一度もお目にかかっておりませんので」

部屋の中がちょっとざわついた。

マッカーサー将軍が言った。

「会ったことがないだと? それはどういうことだ」

「わたくしどもー家内もわたくしも、ここに来て、まだ一週間にならないのでございます。職業紹介所の紹介で手紙をもらって、雇われました。プリマスのレジャイナ・エージェンシーです」

ブロアがうなずいた。

「古くからある紹介所ですね」と、彼は言った。

「その手紙を今、持っているか」ウォーグレイヴが尋ねた。

「わたくしどもを雇うという手紙でございますか。いいえ、判事さま、取っておきませんでした」

「先を続けてくれ。手紙をもらって雇われた、ということだな」

「さようでございます。これこれの日に来るようにということでした。ですから、そのようにいたしました。ここには、なにもかもそろっておりました。食料品はたっぷり買いおきがありましたし、なにからなにまで、すばらしく整っていて、しなければならなかったのは、ほこりを払うぐらいでした」

「で、それから」

「それだけでございます。また、お手紙が来まして、泊まりがけのお客さまがたが来られるので、お部屋を準備するように、というお指図をいただきました。そして昨日の午後の配達で、またオーエンさまからお手紙が来たのです。オーエンさまと奥さまは、すぐにはいらっしゃれない、お客さまにくれぐれも失礼のないようにとのことでした。そしてお夕食とコーヒーのこと、それにレコードをかけるようにとの、お指図がありました」

判事がすかさず言った。

「その手紙は、取ってあるんだろうね」

「はい、ございます。ここに持っております」

ロジャーズはポケットから、手紙を出した。判事は手紙を手に取った。

「ふむ、ホテル・リッツからか。タイプライターで打ってあるな」

(青木 久惠訳)


ピカデリー通り沿いのリッツ ロンドンの回廊

雇い主のオーウェン氏から執事のトマス・ロジャーズ宛の手紙が出された「ホテル・リッツ」とは、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London)」のことである。


開業は、1906年5月24日で、開業後、約120年が経っている。


「リッツ ロンドン」は、ピカデリーライン(Piccadilly Line)、ジュビリーライン(Jubilee Line)とヴィクトリアライン(Victoria Line)の3線が乗り入れる地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の直ぐ真横に建っており、徒歩1分と言う利便性を誇る。


2025年7月1日火曜日

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の英国 TV ドラマ版(エピソード3)に使用された童謡「10人の子供の兵隊」(And Then There Were None by Agatha Christie - Ten Little Soldiers)- その4

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」を英国の BBC(British Broadcasting Corporation)が映像化した英国 TV ドラマ版として映像化しているが、2015年12月28日に放映された「エピソード3」において使用された童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers)」の続きは、以下の通り。


(8)

Three little soldier boys walking in the zoo; A big bear hugged one and then there were Two.

(3人の子供の兵隊さんが、動物園内を歩いていた。一人が大きな熊に抱き締められて、残りは2人になった。)


原作の場合、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。

それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。

英国 TV ドラマ版の場合、屋敷内において、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、

胸をナイフで刺されて、倒れており、彼の上には、白熊の毛皮が載せられていた。

それは、まるで彼は白熊に襲われたかのようだった。-

Harper Collins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版
(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。

*被害者:ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore - 元警部(Detective Inspector)/ 英国 TV ドラマ版の場合、巡査部長(Detective Sergeant))

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor)を死に至らせたと告発された。

原作の場合、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ロンドン商業銀行が襲われた事件の捜査を担当しており、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを犯人として逮捕。その実績を買われて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、昇進を果たしている。なお、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは、終身刑となり、1年後にダートムーア刑務所で死亡。

英国 TV ドラマ版の場合、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーが拘留されている留置場を訪れると、留置場のドアを閉め、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーを床に倒して、何度も踏み付ける等の暴行を加えている。この暴行によって、ジェイムズ・スティーヴン・ランドーは死亡したものと思われる。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1928年10月10日」と明記されている。


原作の場合、その日の午前中、フィリップ・ロンバードの提案に基づき、

残った3人は、兵隊島の一番高いところから、鏡で日光を反射させて、対岸へ信号を送る努力を続けた。

午後2時になると、腹をすかしたウィリアム・ヘンリー・ブロアは、屋敷へと戻る。

フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、そのまま残る。

英国 TV ドラマ版の場合、フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人は、

兵隊島の断崖で、火を燃やして、対岸へ信号を送ろうとする。

一方、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、火かき棒を持ち、周囲を警戒しつつ、屋敷内を歩き廻っている際、

謎のオーウェン氏に襲われて、殺される。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。

*死因:熊の形をした時計の落下による頭蓋骨骨折

原作の場合、フィリップ・ロンバード(Philip Lombard - 元陸軍中尉)とヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne - 秘書)の2人が屋敷に戻ると、東側の石のテラスにおいて、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、大の字になって倒れており、頭を大きな白大理石の固まりで打ち砕かれていた。それは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の暖炉の上に置かれていた熊の形をした時計だった。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが屋敷に戻ると、一足先に戻っていたフィリップ・ロンバードが、彼女に対して、拳銃を向ける。ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、胸をナイフで刺されて、倒れており、彼の上には、白熊の毛皮が載せられていて、まるで彼は白熊に襲われたかのようだった。


(9)

Two little soldier boys sitting in the sun; One got frizzled up and then there was One.

(2人の子供の兵隊さんが、日光浴をしていた。一人が焼け焦げになって、残りは1人になった。)



*被害者:フィリップ・ロンバード

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、東アフリカの部族民21名を死に追いやったと告発された。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1932年2月のある日」と明記されている。



原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、

彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。

つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、

フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼と揉み合っている時に、彼の左膝を1発撃つ。

その後、彼の胸に向けて、2発発射。彼が波打ち際に倒れた後も、彼女は、更に2発撃った。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードに向けて、
拳銃を3発発射しているので、原作とも、英国 TV ドラマ版とも、内容が異なる。


*死因:射殺

原作の場合、海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong - 医師)の溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼が飛び掛かった際、反射的に引き金を引いて、彼の心臓を打ち抜いてしまう。つまり、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンが、フィリップ・ロンバードに向けて発射した拳銃は、1発のみ。

英国 TV ドラマ版の場合、海岸において、エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体を発見したヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、フィリップ・ロンバードから拳銃を奪い取ると、彼と揉み合っている時に、彼の左膝を1発撃つ。その後、彼の胸に向けて、2発発射。彼が波打ち際に倒れた後も、彼女は、更に2発撃った。


(10)

One little soldier boy left all alone; He went and hanged himself … And then there were None.

(1人の子供の兵隊さんが、後に残された。彼は自分で首を括って、そして、誰もいなくなった。)


原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、

自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。

英国 TV ドラマ版の場合、原作と同様に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、

天井のフックからぶら下がっているロープの輪に、自ら首を一旦かける。

その時、彼女の部屋のドアが開いて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが部屋に入って来る。

驚いた彼女は、椅子を蹴って、首吊りの状態になってしまうが、

横倒しになった椅子の上で、辛うじてバランスを保つ。

そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによる独白が始まる。

ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに対して、

フィリップ・ロンバードに全ての罪をなすりつけることで決着させようと説得するが、

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の足元から椅子を取り去り、彼女を縊死させる。

彼女の死亡を確認したローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の部屋から立ち去る。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。

*被害者:ヴェラ・エリザベス・クレイソーン

*告発された罪状:アガサ・クリスティーの原作の場合、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton - 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。

原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。また、溺れた彼を助けようと、彼女は、彼の後を追って、泳いでいるふりをする。シリル・オギルヴィー・ハミルトンが溺死した後、ヒューゴ(Hugo - シリル・オギルヴィー・ハミルトンの叔父 / 事件当日、外出していた)は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンに対して、見ず知らずの他人を見るような視線を向けた。その後、ヒューゴーとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの恋愛関係は、終わりを迎えている。

英国 TV ドラマ版の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、シリル・オギルヴィー・ハミルトンに対して、彼が望む通り、岩まで泳がせている。また、溺れた彼を助けようと、彼女は、海岸まで走って行くが、途中で歩き出し、ゆっくりと上着を脱ぎ、サングラスを外す。そして、背泳ぎでゆっくり進むが、途中で溺れるふりをする。シリル・オギルヴィー・ハミルトンの検死法廷が終わった後、ヒューゴーがヴェラ・エリザベス・クレイソーンの元へとやって来て、彼女の罪状を厳しく糾弾した後、彼女の元から去って行った。

*犯罪発生時期:英国 TV ドラマ版の場合、具体的な時期については、言及されていないが、アガサ・クリスティーの原作の場合、「1935年8月11日」と明記されている。


原作の場合、フィリップ・ロンバードを射殺した後、

屋敷に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、食堂に立ち寄り、

テーブルの上に置かれた3体の人形のうち、2体を取って、窓から外へ放り投げる。

そして、3体目の人形を手に取る。

英国 TV ドラマ版の場合、このような場面はない。-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。
グラフィックノベル版の内容は、原作通り。


*死因:絞首(縊死)

原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。

英国 TV ドラマ版の場合、原作と同様に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪に、自ら首を一旦かける。その時、彼女の部屋のドアが開いて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave - 元判事)が入って来る。驚いた彼女は、椅子を蹴って、首吊りの状態になってしまうが、横倒しになった椅子の上で、辛うじてバランスを保つ。そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴによる独白が始まる。ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに対して、フィリップ・ロンバードに全ての罪をなすりつけることで決着させようと説得するが、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の足元から椅子を取り去り、彼女を縊死させる。彼女の死亡を確認したローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、彼女の部屋から立ち去る。