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レイルウェイアベニューから見たブルネル博物館 <筆者撮影> |
サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「瀕死の探偵(The Dying Detective → 2025年5月5日 / 5月21日付ブログで紹介済)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、43番目に発表された作品で、英国の「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1913年12月号に、また、米国の「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1913年11月22日号に掲載された。
同作品は、1917年に発行されたホームズシリーズの第4短編集「シャーロック・ホームズ最後の挨拶(His Last Bow)」に収録されている。
ジョン・H・ワトスンが結婚し、シャーロック・ホームズとの共同生活を解消してから、2年が経過していた。
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ロザーハイズ駅(Rotherhithe Station)からブルネル博物館へと至る レイルウェイアベニューに掛けられたブルネル博物館の案内垂れ幕 <筆者撮影> |
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世界最初の海底トンネルに該る「テムズ河トンネル」を完成させた イザムバード・キングダム・ブルネルを称えるブループラークが、 ブルネル博物館の壁に掛けられている。 <筆者撮影> |
11月の霧がかかって薄暗い午後、ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の家主であるハドスン夫人(Mrs. Hudson)が、ワトスンの家を訪れる。
ハドスン夫人曰く、ホームズが何か訳の分からない病に罹患して、「ここ3日間でどんどん衰弱して、瀕死の状態なのだ(’He’s dying, Dr Watson.’)。」と言う。更に、今朝、ハドスン夫人が「ホームズさんの許可があろうとなかろうと、今直ぐ、医者を呼びに行く。」と告げると、ホームズは、「それじゃ、ワトスンを呼んでくれ。」と答えたのだった。
ハドスン夫人からの話を聞いたワトスンは、急いでコートと帽子を身に着けると、ハドスン夫人と一緒に、馬車でベイカーストリート221B へと向かった。
ベイカーストリート221B へと向かう馬車の中で、ワトスンは、ハドスン夫人に詳しい事情を尋ねる。
ハドスン夫人によると、ホームズは、ある事件のため、テムズ河(River Thames)南岸のロザーハイズ(Rotherhithe)へ出かけ、そこで病気を移されて、帰って来たらしい。そして、ホームズは、水曜日の午後から寝たきりで、この3日間、食事も飲み物もとっていないのだった。
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ロザーハイズ地区からテムズ河の上流を見たところ - 画面中央奥に「シャード(Shard)」を望むことができる。 <筆者撮影> |
午後4時頃、ベイカーストリート221B に着いたワトスンは、ホームズの様子を見て、愕然とする。
ベッドに横たわるホームズの顔は、痩せ衰えており、熱で目はぎらぎらとして、頬も紅潮していた。更に、ベッドカバーの上に置かれた細い手は、ひっきりなしに痙攣していたのである。
ワトスンがベッドに近寄ろうとすると、ホームズは、「下がれ!直ぐに下がれ!(Stand back! Stand right back!)」と言って、恐ろしい形相で制止する。
ホームズによると、自分が罹患した病気は、船乗りから感染したスマトラ島(Sumatra)のクーリー病(coolie disease)で、接触感染する、とのことだった。
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ロザーハイズ地区からテムズ河の下流を見たところ <筆者撮影> |
ハドスン夫人によるワトスンへの説明では、ホームズは、ある事件の捜査のために、テムズ河(River Thames)南岸へ出かけ、そこで病気を移されて、帰って来たとのことだが、その場所であるロザーハイズ地区(Rotherhithe → 2025年8月31日 / 9月6日付ブログで紹介済)とは、ロンドンの特別区の一つであるサザーク区(London Borough of Southwark)内にある地区である。
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「Rotherhithe - History, art and the Mayflower」の冊子から抜粋した ロザーハイズ地区とその周辺地図 |
ロザーハイズ地区は、テムズ河(River Thames)の南岸にあり、テムズ河へ半島のように突き出している場所にある関係上、北側、東側と西側の三方はテムズ河に囲まれている。
ロザーハイズ地区の南西部分は、同じサザーク区のバーモンジー地区(Bermonsey)に、そして、南東部分は、ロンドンの特別区であるグリニッジ王立区(Royal Borough of Greenwich)/ ルイシャム区(London Borough of Lewisham)のデップフォード地区(Deptford)に接している。
そして、テムズ河を間に挟んで、ロンドンの特別区の一つであるロンドン・タワーハムレッツ区(London Borough of Tower Hamlets)のワッピング地区(Wapping)に面している。
テムズ河北岸のヴィクトリアエンバンクメント通り (Victoria Embankment → 2018年12月9日付ブログで紹介済)沿いに設置されている 英国の技師であるイザムバード・キングダム・ブルネル (1806年ー1859年)のブロンズ像 <筆者撮影> |
イザムバード・キングダム・ブルネルは、 パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)を初めとする グレイトウェスタン鉄道の施設や車輌等を設計したことで有名である。 <筆者撮影> |
ロザーハイズ地区の場合、以前(ホームズとワトスンが活躍をするヴィクトリア朝時代よりも前)は波止場が主体であったが、18世紀中頃に、フランス生まれの技術者であるマーク・イザムバード・ブルネル(Marc Isambard Brunel:1769年ー1849年)と彼の息子で、英国の技師であるイザムバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel:1806年ー1959年)が「テムズ河トンネル(Thames Tunnell)」を完成させたことにより、テムズ河の北岸(ワッピング地区)と南岸(ロザーハイズ地区)が接続。
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ブルネル博物館を囲む塀に設置されている説明板(その1) <筆者撮影> |
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ブルネル博物館を囲む塀に設置されている説明板(その2) <筆者撮影> |
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ブルネル博物館を囲む塀に設置されている説明板(その3) <筆者撮影> |
テムズ河の川底に初めてトンネルを通したブルネル親子による功績を称えて、ロザーハイズ地区内には、ブルネル博物館(Brunel Museum)が開館し、ブルネル親子が完成させた「テムズ河トンネル」に関する資料を展示している。
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ロザーハイズストリートの北側から見たブルネル博物館 <筆者撮影> |
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ブルネル博物館の入口 <筆者撮影> |
ブルネル博物館は、
*東側:レイルウェイアベニュー(Railway Avenue)
*西側:トンネルロード(Tunnell Road)
*南側:ロザーハイズストリート(Rotherhithe Street)
*北側:トンネルロード
と言う「テムズ河トンネル」に関連した通りに囲まれた敷地内に所在している。
ブルネル博物館が建つ敷地は、ブルネル親子が完成させた「テムズ河トンネル」の南端付近に辺っている。

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