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HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の グラフィックノベル版の表紙 (Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)- 表紙と裏表紙の両方で、兵隊島に集まった招待客8人と召使夫婦の計10人が、 一人また一人と、正体不明の何者かによって殺害されていくことが暗示されている。 |
アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」を英国の BBC(British Broadcasting Corporation)が映像化した英国 TV ドラマ版の場合、アガサ・クリスティーの原作にかなり忠実に反映しているが、細かい点において、原作対比、以下のような違いがある。
今回は、2015年12月28日に放映された「エピソード3(最終エピソード)」にかかる部分について、述べたい。
(1)
<原作>
老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent)が青酸カリが入った皮下注射器で首の横を刺されて殺された後、医師のエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong)のスーツケースから注射器が、また、元陸軍大尉のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard)のベッドの横のテーブルの引き出しから隠してあったピストルが紛失しているのを受けて、残った5人の身体検査と手荷物検査が行われる。
<英国 TV ドラマ版>
秘書のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne)が、
*アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston):ブランデー(brandy)が入ったグラスに投与された青酸カリによる中毒死
*エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers):睡眠薬クロラールの過剰摂取による中毒死
を元に、エドワード・ジョージ・アームストロングのことを疑い始める。そして、各人の手荷物検査を主張し、その時点で、各人の身体検査と手荷物検査が既に行われている。
(2)
<原作>
元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave)は、他の全員が無罪だと思っていたエドワード・シートン(Edward Seton)に対して、有罪判決を下し、絞首刑に処している。
<英国 TV ドラマ版>
更に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、エドワード・シートンの絞首刑執行の場に立ち会っている。また、エドワード・シートンも、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴに見せつけるように、顔を覆うフードなしで、絞首刑になっている。
(3)
<原作>
夕食を済ませた後、午後6時20分に、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、自分の部屋へと戻る。他の4人は、居間に残ったまま。
彼女は、天井からぶら下げられた幅の広い海藻が自分の喉に触れた際、じっとりと湿った冷たい誰かの手に触られたものと勘違いして、悲鳴を上げる。
彼女の悲鳴を聞いて、エドワード・ジョージ・アームストロング、フィリップ・・ロンバードと巡査部長(Detective Sergeant - 原作の場合、元警部(Detective Inspector))のウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore)の3人が、彼女の部屋へと駆け付ける。その後、彼らは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが一緒に来ていないことに気付く。
<英国 TV ドラマ版>
夕食を済ませた後、まず最初に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが、自分の部屋へと退く。続いて、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンも、自分の部屋へと下がる。他の3人は、食堂に残ったまま。
自分の部屋に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンが顔を洗っていると、溺死させたシリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton - 家庭教師をしていた子供)が鏡に映っている幻影をみて、気絶する。
彼女の悲鳴を聞いて、エドワード・ジョージ・アームストロング、フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの3人が、彼女の部屋へと駆け付ける。その後、彼らは、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが自分の部屋から出て来ていないことに気付く。
(4)
<原作>
居間から一緒に来なかったローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかった場所は、応接間(1階)。
エドワード・ジョージ・アームストロングが、他の3人に近付かないように合図して、「ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、頭を撃ち抜かれている。即死だ。」と告げる。
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴを2階にある彼の部屋へと運んだのが、誰なのかについては、明記されていない。おそらく、エドワード・ジョージ・アームストロング、フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの3人だと思われる。
<英国 TV ドラマ版>
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの悲鳴を聞いて出て来なかったローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかった場所は、彼の部屋(2階)。
エドワード・ジョージ・アームストロングが、自分のジャケットを脱いで、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの身体を覆っている。
(5)
<英国 TV ドラマ版>
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、食堂へ行って、人形の数が4個に減っていることを確認。他の3人も、彼女に付いて来て、これを確認している。
<原作>
原作の場合、このような記述はない。
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HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の グラフィックノベル版の裏表紙 (Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara) |
(6)
<英国 TV ドラマ版>
残ったエドワード・ジョージ・アームストロング、フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの4人は、1階の部屋において、アルコールやコカイン(アンソニー・ジェイムズ・マーストンが持参したものと思われる)等を使い、乱痴気騒ぎを始める。
フィリップ・・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人が抱き合って踊っている様子を見て、エドワード・ジョージ・アームストロングは、2人に対して、不信感を覚える。
その後、4人とも、自分の部屋へと戻るが、フィリップ・・ロンバードがヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋を訪れて、2人は肉体関係を結ぶ。
<原作>
原作の場合、このような場面はない。
(7)
<原作>
その日の夜、フィリップ・・ロンバードが自分の部屋に戻り、ベッドの横のテーブルの引き出しを開けると、紛失していたピストルが元に戻っていることを発見。
<英国 TV ドラマ版>
翌日の朝、フィリップ・・ロンバードが、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋から自分の部屋に戻った際、ベッドの上にピストルが置かれているのを見つける。
(8)
<原作>
夜中の午前1時過ぎ、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、誰かが自分の部屋の前を通り、玄関のドアから出て行く人影を見かける。
そして、彼は、エドワード・ジョージ・アームストロングの返事がないことを確認した後、フィリップ・・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人を起こす。
フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを部屋に残したまま、外へ出て行った人物の後を追うが、その追跡は失敗に終わる。
<英国 TV ドラマ版>
夜中に、ウィリアム・ヘンリー・ブロアは、エドワード・ジョージ・アームストロングが部屋から出て階段を降りて行くのを見かけて、フィリップ・・ロンバードの部屋をノックするが、返事がない。フィリップ・・ロンバードとは、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋から出て来る。
フィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンを部屋に残したまま、外へ出て行ったエドワード・ジョージ・アームストロングの後を追うが、その追跡は失敗に終わる。
(9)
<原作>
追跡が失敗に終わって、屋敷に戻って来たフィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、食堂へ行って、人形の数が3個に減っていることを確認。
<英国 TV ドラマ版>
英国 TV ドラマ版の場合、このような場面はない。
すみませんが、分量が長くなるので、次回に続きます。

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