2024年5月13日月曜日

高木彬光作「能面殺人事件」(The Noh Mask Murder by Akimitsu Takagi)- その3

高木彬光作「能面殺人事件」に登場する事件関係者の系譜
<筆者作成>


鬼女(般若)の面を付けた謎の人物が出現して以来、屋敷の主人である千鶴井泰次郎(Taijiro Chizui - 54歳 / O 型)は、得体の知れない恐怖に怯えて、暮らしていた。


千鶴井泰次郎が当主を務める千鶴井家には、大学の教授で、世界的な放射能化学の権威であった長男の千鶴井壮一郎(Soichiro Chizui - 故人)と彼の妻である千鶴井香代子(Kayoko Chizui - 夫の死後、精神に異常をきたして、現在、荻窪(Ogikubo)にある精神病院に入院中)の子供である


長女:千鶴井緋紗子(Hisako Chizui - 27歳 / A 型 / 狂人)

長男:千鶴井賢吉(Kenkichi Chizui - 14歳 / A 型 / 強度の心臓弁膜症のため、明日もしれぬ状態)


の他に、


*千鶴井園枝(Sonoe Chizui - 千鶴井泰次郎の母親 / 76歳 / O 型 / 中風のため、右半身が不自由)

*千鶴井麟太郎(Rintaro Chizui - 千鶴井泰次郎の長男 / 32歳 / A 型 / 虚無主義者)

*千鶴井洋二郎(Yojiro Chizui - 千鶴井泰次郎の次男 / 30歳 / A 型 / 物欲の塊)

*千鶴井佐和子(Sawako Chizui - 千鶴井泰次郎の長女 / 28歳 / AB 型 / 一家の主婦扱い)


が同居していた。


千鶴井家に居候する柳光一(Koichi Yanagi)と柳光一の父親である柳源一郎(Genichiro Yanagi - 故人)の友人で、現在は、横浜地方検察庁(Yokohama District Prosecutor’s Office)の次席検事を務めている石狩弘之(Hiroyuki Ishikari)の2人が鬼女(般若)の面を付けた謎の人物を目撃した日の2日後の夜(午後8時)、千鶴井泰次郎は柳光一を2階の自室へと呼び、この件を調査してくれる人物を紹介してほしいと頼むであった。

当初、柳光一は、千鶴井泰次郎に対して、石狩検事を推薦したが、千鶴井泰次郎は、「私立探偵の方が良い。」と固執した。

そこで、柳光一は、高校時代の友人で、小さな事件ではあるものの、実際に見事に解決した実績がある高木彬光(Akimitsu Takagi)を紹介することにした。柳光一は、高木彬光を米国の素人探偵であるファイロ・ヴァンス(Philo Vance)に例えた。


納得した千鶴井泰次郎の指示を受けて、柳光一は、高木彬光に電話するために、階下へと向かう。その際、階段で、千鶴井泰次郎の部屋へと向かう長男の千鶴井麟太郎とすれ違った。

階下で、柳光一が、千鶴井家の屋敷から歩いて15分程のところに所在するホテル(Marine Hotel)に滞在している高木彬光に電話をする。高木彬光への電話を終えた柳光一に対して、千鶴井佐和子が「この屋敷内で何か良くないことがこれから起きるので、自分を連れて、一緒に逃げてほしい。」と訴えるが、柳光一は、これに応じなかった。

柳光一が千鶴井泰次郎の部屋へ戻ると、千鶴井泰次郎と千鶴井麟太郎が言い争っているところだったので、千鶴井泰次郎の部屋の隣りにある千鶴井緋紗子 / 千鶴井賢吉の部屋へ行った。千鶴井緋紗子は既に就寝中だったので、柳光一は、千鶴井賢吉と少し話をする。

柳光一が、再度、千鶴井泰次郎の部屋へ戻ると、彼を見た千鶴井麟太郎は席を立って、部屋を出て行ってしまった。柳光一は、千鶴井泰次郎から、高木彬光への依頼状を受け取る。午後8時20分だった。

柳光一は、もう一度、千鶴井緋紗子 / 千鶴井賢吉の部屋に寄った後、高木彬光が宿泊しているホテルへ出発した。


柳光一がホテルに着くと、高木彬光は、S・S・ヴァン・ダイン(S. S. Van Dine - 本名:美術評論家のウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright:1888年ー1939年))が1928年に発表した長編推理小説で、素人探偵であるファイロ・ヴァンス(Philo Vance)シリーズ12長編のうち、第3作目に該る「グリーン家殺人事件(The Greene Murder Case)」を読んでいたところだった。

柳光一が、高木彬光に対して、千鶴井泰次郎からの依頼事項を告げていると、そこに電話がかかった。午後8時50分だった。千鶴井泰次郎と名乗る人物は、「再び、鬼女(般若)の面を付けた奴が現れた。その正体が判ったが、電話では話せない。急を要するので、直ぐに来てほしい。」と訴えた。


柳光一と高木彬光の2人が千鶴井家の屋敷へと急いで戻って、玄関のベルを鳴らしていると、2階から悲鳴が響き渡ったのである。


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