2024年5月19日日曜日

H・G・ウェルズ作「宇宙戦争」<グラフィックノベル版>(The War of the Worlds by H. G. Wells

フランスの Editions Glenat 社から、
「La guerre des mondes」というタイトルを以って、
2016年と2017年に2分冊で出版された後、
2018年に米国の Insight Editions 社から英訳版が発行された
H・G・ウェルズ作「宇宙戦争」のグラフィックノベル版の表紙


米国の作家であるマンリー・ウェイド・ウェルマン(Manly Wade Wellman:1903年ー1986年)と息子のウェイド・ウェルマン(Wade Wellman)の共作による SF 小説「シャーロック・ホームズの宇宙戦争(Sherlock Holmes’s War of the Worlds → 2024年5月8日 / 5月10日 / 5月14日付ブログで紹介済)」(1975年)は、シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンの2人が、英国の作家であるハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells:1866年ー1946年)が1898年に発表した SF 小説「宇宙戦争(The War of the Worlds → 2024年5月x日付ブログで紹介済)」に遭遇した事件が描かれている。


フランスの Editions Glenat 社から、
「La guerre des mondes」というタイトルを以って、
2016年と2017年に2分冊で出版された後、
2018年に米国の Insight Editions 社から英訳版が発行された
H・G・ウェルズ作「宇宙戦争」のグラフィックノベル版の裏表紙

今回は、H・G・ウェルズ作「宇宙戦争」のグラフィックノベル版について、紹介したい。


「宇宙戦争」のグラフィックノベル版は、元々、Dobbs が構成を、そして、スペイン人のイラストレーターである Vicente Cifuentes(1979年ー)が作画を担当し、フランスの Editions Glenat 社から、「La guerre des mondes」というタイトルを以って、2016年と2017年に2分冊で出版された後、2018年に米国の Insight Editions 社から英訳版が発行されている。


左側の人物が、主人公の「私」で、
右側の人物が、天文学者であるオーグルビー教授(Professor Ogilvy)。

当該グラフィックノベル版の場合、基本的に、H・G・ウェルズ作「宇宙戦争」の内容に忠実に、物語が展開しており、非常に良くまとまっているが、以下の差異が見受けられる。


天文学者であるオーグルビー教授は、火星から落下して来た
金属製の巨大な円筒を発見する。

(1)

<原作>

火星人による地球侵略に危険を感じた主人公の「私」は、近くの店で馬車を借りると、妻を連れて、彼女の従兄弟が住むレザーヘッド(Leatherhead - サリー州(Surrey)内に所在)へと逃げる。妻を彼女の従兄弟に預けた「私」は、借りた馬車を返しに戻る途中、第三の円筒が地面に落下。円筒の中から姿を現した3本脚の戦闘機械(tripod)は、破壊の限りを尽くし、「私」が馬車を借りた店の主人も亡くなり、出動して来た英国軍も全滅してしまった。

<グラフィックノベル版>

借りた馬車を返しに戻る途中だった「私」は、突如現れた3本脚の戦闘機械に襲われて、馬車が炎に包まれた。「私」は、川に飛び込んで、難を逃れる。更に、戦闘機械は、川を横切る陸橋を破壊して、走って来た機関車が川へと転落して、兵士や一般人を問わず、全員が命を落とす。ただ、「私」が馬車を借りた店の主人が亡くなる場面はない。


地球征服を開始した火星人の姿。

(2)

<原作>

なんとか自宅へと辿り着いた「私」であったが、3本脚の戦闘機械によって全滅させられた英国軍の生き残りの砲兵が、「私」の自宅へと逃げ込んで来た。

翌朝、「私」と砲兵の2人は、ロンドン方面へと避難を始める。途中、テムズ河(River Thames)畔に、戦闘機械5体が現れるが、増援の英国軍による砲撃で1体を撃破して、一時的に撃退に成功。その戦闘の混乱の中、「私」は砲兵と逸れてしまう。

<グラフィックノベル版>

「私」はなんとか自宅へと辿り着くが、英国軍の生き残りの砲兵は登場しない。

自宅を出た「私」は、増援の英国軍に合流する。増援の英国軍は、砲撃により、戦闘機械1体を撃破するが、そこに現れた戦闘機械2体が、増援の英国軍を全滅させ、更に、避難民達を虐殺した。


地面に落下した金属製の巨大な円筒から姿を現した3本足の戦闘機械は、
天文学者であるオーグルビー教授を初めとする代表団の3人を
熱線により焼き払ってしまった。


(3)

<原作>

火星人のロンドン侵攻情報を聞いたロンドン市民は、パニック状態に陥る。

ロンドン在住の「私」の弟も避難を始める。途中、彼は、暴漢に襲われた女性達を助け、一緒に馬車で英仏海峡を目指した。

彼らが乗った蒸気船が出港すると、3体の戦闘機械が出現。沖合いに居た英国の駆逐艦であるサンダーチャイルド(HMS Thunder Child)は、砲撃により、1体目の戦闘機械を撃破する。サンダーチャイルドは、2体目の戦闘機械の熱線を受けて、大爆発をするが、体当たりを行い、2体目も撃破。それを見た3体目の戦闘機械は逃げ去ったため、「私」の弟達は、無事に英国から脱出できた。

<グラフィックノベル版>

原作通り、ロンドン在住の「私」の弟によるロンドン脱出行が描かれており、暴漢に襲われた女性達を助ける顛末も、原作通り。なお、グラフィックノベル版の場合、彼が「私」の弟であることは、特に言及されていない。

また、原作の場合、英国の駆逐艦と火星人の戦闘機械の戦闘は、英仏海峡で展開されるが、グラフィックノベル版の場合、この戦闘は、テムズ河において、行われている。原作の場合、英国の駆逐艦と戦う火星人の戦闘機械は「3体」であるが、グラフィックノベル版の場合、「1体」のみ。

更に言うと、原作の場合、英仏海峡を目指して出港した蒸気船に、「私」の弟達が乗っているが、グラフィックノベル版の場合、テムズ河を下る蒸気船に、「私」の弟達が乗船できたのか否かは、描かれていない。


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