2023年6月7日水曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その23

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(68)カボチャ(pumpkin)


アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左側にある窓から、
ダート川(River Dart)を望むことができるが、
その手前の芝生の上に、カボチャが1つ置かれている。

本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左側にある窓の外の芝生の上に、カボチャが1つ置かれている。

これから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1969年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第60作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第31作目に該っている。


英国の Harper CollinsPublishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「ハロウィーンパーティー」のペーパーバック版の表紙

女性推理作家として有名なアリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs. Ariadne Oliver)は、ロンドンから30ー40マイル程離れた町ウッドリーコモン(Woodleigh Common)に住む友人のジュディス・バトラー(Judith Butler)宅に滞在していた。

ウッドリーコモンの中心的な存在であるロウィーナ・ドレイク夫人(Mrs. Rowena Drake)が、学校の生徒達のために、ハロウィーンパーティーを主催することになり、オリヴァー夫人も参加する運びとなった。


ハロウィーンパーティーを晩に控えた午後、ドレイク夫人宅「リンゴの木荘(Apple Trees House)」において、学校の生徒達が準備の手伝いをしていた。その際、生徒の一人である13歳のジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)が、突然、「ずっと前に殺人を目撃したことがある。ただ、当時は、それが殺人だと判らなかった。(I witnessed a murder once, when I was little. I didn’t understand what was going on at the time.)」と言い出した。

ジョイスの話を聞いた他の生徒達は、日頃からジョイスが人の関心を惹くために、いろいろと嘘をつくので、彼女を全く相手にしない。ドレイク夫人宅に準備の手伝いに来ていたオリヴァー夫人も、ジョイスが推理作家である自分の気を引こうとしているものと思い、彼女の話を本気にしなかった。


ドレイク夫人宅において、ハロウィーンパーティーが行われた日の翌日、オリヴァー夫人が、ロンドンのエルキュール・ポワロ宅に電話をかけてきた後、慌ててやって来た。オリヴァー夫人は、ポワロに対して、ヒステリー気味に話を始める。

ハロウィーンパーティーが終わった後、以前殺人を目撃したことがあると言っていたジョイスが、ドレイク夫人宅の図書室において、リンゴが浮かぶブリキのバケツに頭を押し込まれて、溺死しているのが見つかったのである。


オリヴァー夫人から話を聞いて、ハロウィーンパーティー前の発言のために、ジョイスが口封じされたものと考えたポワロは、早速、行動に移った。

ポワロは、古い友人であるスペンス元警視(ex Superintendent Spence)の元を訪れる。偶然にも、スペンス元警視は、引退後、ジョイスが殺害された町ウッドリーコモンに住んでいた。

ポワロは、スペンス元警視に、過去数年間にウッドリーコモン周辺で殺された人物、あるいは、殺害された可能性のある人物のリストを作成してもらい、一つ一つ捜査を進める。

果たして、この中に、ジョイスが目撃したと言う殺人事件が含まれているのだろうか?


2023年6月6日火曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その10

英国の The Orion Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピアによる複数の戯曲に登場する陽気でほら吹きの肥満騎士のサー・ジョン・フォールスタッフ(Sir John Falstaff)である。

サー・ジョン・フォールスタッフの場合、臆病者、大酒飲み、強欲、狡猾で、その上に好色と欠点ばかりであるが、非常な機知に富み、深遠な警句を発する憎めない人物として、ウィリアム・シェイクスピアによって描かれている。


グローブ座(Globe Theatre → 2023年5月8日付ブログで紹介済)の
右側に建っている居酒屋(tavern)の屋根の上に、
陽気でほら吹きの肥満騎士であるサー・ジョン・フォールスタッフが居て、
酒が入った瓶を両手に掲げている。


サー・ジョン・フォールスタッフは、


(1)史劇「ヘンリー4世 第1部(The First Part of Henry the Fourth)」(1596年-1597年)

(2)史劇「ヘンリー4世 第2部(The Second Part of Henry the Fourth)」(1598年)

(3)史劇「ヘンリー5世(The Life of Henry the Fifth)」(1599年)

(4)喜劇「ウィンザーの陽気な女房たち(The Merry Wives of Windsor)」(1602年頃)


に登場する。


サー・ジョン・フォールスタッフは、は、史劇「ヘンリー4世」の2部作において、後にヘンリー5世(Henry V:1387年ー1422年 在位期間:1413年ー1422年)として即位するハル王子(Prince Hal)の放蕩仲間として登場するが、第2部の最後、ランカスター朝第最初のイングランド王であるヘンリー4世(Henry IV:1366年ー1413年 在位期間:1399年ー1413年)の後を継いで、ランカスター朝第2代のイングランド王に即位したヘンリー5世によって、追放されてしまう。


続編の「ヘンリー5世」において、サー・ジョン・フォールスタッフが、ヘンリー5世による追放後、失意の中、亡くなったことが、仲間の口から語られる。

当時より、サー・ジョン・フォールスタッフは人気が高かったため、作者の許可なく、彼を勝手に登場させた戯曲等が上演されたことを憂慮したウィリアム・シェイクスピアが、自分の戯曲内で、サー・ジョン・フォールスタッフを死んだことにすることで、今後、自分以外の第三者によって、彼が無断で使われないようにしたのだと言われている。


「ウィンザーの陽気な女房たち」において、サー・ジョン・フォールスタッフは、勝手な思い込みから、2人の夫人に恋を仕掛ける愉快な好色漢として登場する。

テューダー朝第5代にして、最後のイングランド王であるエリザベス1世(Elizabeth I:1533年-1603年 在位期間:1558年-1603年)が、サー・ジョン・フォールスタッフを大層気に入って、「彼の恋物語が見たい。」と所望したことを受けて、ウィリアム・シェイクスピアが、サー・ジョン・フォールスタッフを主人公にした喜劇「ウィンザーの陽気な女房たち」を執筆したのではないかと唱える説がある。


ナショナルポートレイトギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
エリザベス1世の肖像画
(Unknown English artist / 1600年頃 / Oil on panel
1273 mm x 997 mm) 


なお、ウィリアム・シェイクスピアが生み出したサー・ジョン・フォールスタッフは、中世イングランドの騎士で、ヘンリー5世の盟友でもあったサー・ジョン・オールドカースル(Sir John Oldcastle:1378年ー1417年)が、モデルだと考えられている。

史劇「ヘンリー4世」の初演時、ウィリアム・シェイクスピアが、サー・ジョン・フォールスタッフに該る登場人物として、サー・ジョン・オールドカースルの名前をそのまま流用したため、子孫から抗議を受けてしまった。

そこで困ったウィリアム・シェイクスピアは、実際に百年戦争において活躍した中世イングランドの軍人で、彼の史劇「ヘンリー6世(Henry VI)」の第1部(1588年頃ー1590年頃)にも登場するサー・ジョン・ファストルフ(Sir John Fastolf:1378年頃ー1459年)の姓を綴り変えて、「フォールスタッフ」と言う架空の姓を使用したのである。


2023年6月5日月曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<小説版>(The Valley of Fear by Conan Doyle )- その6

国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第6章「夜明けの光明(A Dawning Light)」

ジョン・ダグラスと思われる男性が殺害された

バールストン館書斎内にあるサイドテーブルの下に、

ダンベル(鉄亜鈴)が一つしかなかったことが、

シャーロック・ホームズには、非常に気になった。

そこで、ホームズは、ワトスンから大きな傘を借りると、

「あの書斎で、一晩、一人で過ごせば、非常に得るものが多い。」と言うと、

バールストン館へと戻って行った。

ホームズが宿屋へ戻って来たのは、夜遅くで、

ジョン・H・ワトスンは、既に寝ていたが、ぼんやりと目を覚ました。

蝋燭を片手に持って、黙って側に立っているホームズに対して、

ワトスンは、「何か見つかったのか?」と尋ねたが、

ホームズは、その夜、何も話してくれなかった。

画面左側の人物がワトスンで、画面右側の人物がホームズ。
挿絵:フランク・ワイルズ


サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)のバールストン館(Birlstone House)において、館の主人であるジョン・ダグラス(John Douglas)らしき男性が、銃身が切り詰められた散弾銃で至近距離から射殺された事件について、シャーロック・ホームズ、スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)とサセックス州刑事部長(chief Sussex detective)のホワイト・メイスン(White Mason)の3人には、調べることがまだ山程あった。そこで、ジョン・H・ワトスンは、ホームズ達3人をバールストン館に残して、宿泊する予定の宿屋「ウェストヴィル アームズ(Westville Arms)」へ徒歩で帰った。


ワトスンが、バールストン館の庭を取り巻くイチイ並木の生垣まで歩いて来た時、生垣の反対側にある石でできたベンチの方から、男性の低い声と女性の笑い声が聞こえてきた。

そして、ベンチで談笑しているジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー(Cecil James Barker)とダグラス夫人(Mrs. Douglas)の姿が、ワトスンの目に入った。セシル・バーカーの話を聴いて、愉快そうに笑うダグラス夫人は、夫が惨殺されたことを全く気にしていないようだった。

ワトスンの姿を認めたセシル・バーカーとダグラス夫人の2人は、慌てて厳粛な仮面を纏った。


ダグラス夫人の美しさに感嘆するマクドナルド警部は、彼女に横恋慕したセシル・バーカーが、彼の友人でもあるジョン・ダグラスを殺害したのではないかと推測しているようだったが、庭で談笑するセシル・バーカーとダグラス夫人の姿を見たワトスンも、同じ疑惑を深めざるを得なかった。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第7章「解決(The Solution)」
その翌日、シャーロック・ホームズは、
アレック・マクドナルド警部に依頼して、
ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー宛に、
「捜査の関係で、バールストン館の周囲の堀の水を抜く必要がある」旨の
手紙を書かせた。
その夜、ホームズ達は、バールストン館の庭に潜んで、
殺人事件が発生した書斎の窓を見張った。
ホームズ達が見張りを続けていると、
誰かが書斎の窓を開けると、
窓の外の堀を覗き込んでいるようだった。
暫くすると、その人物は、手に持った何かで堀を掻き回すと、
漁師が魚を陸揚げするように、堀の中から何かを手繰り寄せたのである。

挿絵:フランク・ワイルズ

ホームズは、その日の午後一杯、バールストン館に居て、午後5時頃、やっと宿屋へと戻って来た。

ホームズが戻って来ると、早速、ワトスンは、彼に対して、庭で談笑するセシル・バーカーとダグラス夫人のことを報告する。ワトスンの話を聞いたホームズは、「セシル・バーカーとダグラス夫人の2人は、殺人犯について、何か真実を知っていて、それを隠すために、共謀して嘘をついているんだ。」と返答した。

ホームズが今一番気になっているのは、殺人が発生した書斎内にあるサイドテーブルの下に、ダンベル(鉄亜鈴)が一つしかなかったこと、つまり、もう一つのダンベルの行方だった。


ホームズは、ワトスンから大きな傘を借りると、「あの書斎で、一晩、一人で過ごせば、非常に得るものが多い。」と言うと、バールストン館へと戻って行った。ホームズは、何かを探そうとしているようだった。


ホームズが宿屋へ戻って来たのは、夜遅くだった。ワトスンは、既に寝ていたが、ぼんやりと目を覚ました。

蝋燭を片手に持って、黙って側に立っているホームズに対して、ワトスンは、「何か見つかったのか?」と尋ねたが、ホームズは、その夜、何も話してくれなかった。


ホームズは、探していたものを既に見つけていた。事件の解決は、まもなくだった。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第7章「解決」
シャーロック・ホームズの発言を受けて、
壁の中から、男が姿を表した。
それは、書斎で殺害されたと思われていたジョン・ダグラス本人であった。
ダグラス夫人は、振り返ると、彼の身体に腕を回した。
また、セシル・ジェイムズ・バーカーは、
ジョン・ダグラスが伸ばした手を握り締めた。
画面左側から、セシル・バーカー、
スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部、
ジョン・ダグラス(背中を向けている人物)、ダグラス夫人、
ホームズ、そして、ジョン・H・ワトスン。
挿絵:フランク・ワイルズ

サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)によるシャーロック・ホームズシリーズの長編第4作目である「恐怖の谷(The Valley of Fear)」は、第1長編「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」(1887年)や第2長編「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」(1890年)と同様に、2部構成を採っており、第1部では、バールストン館の主人であるジョン・ダグラスと思われる男性が、銃身を切り落として短くした散弾銃によって、至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺された事件の発生から、ホームズの推理により、事件の解決に至るまでが描かれる。そして、第2部では、その事件の背景となった「恐怖の谷」と呼ばれる米国ペンシルヴァニア州ヴァーミッサ峡谷(Vermissa Valley)にある炭鉱街で発生した事件が語られている。第1部と第2部の分量は、大体同じ位である。


第1部において発生した事件の黒幕として、ホームズの終生のライヴァルで、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)が暗躍する。

また、本作品のエピローグにおいて、モリアーティー教授は、ホームズ達に対して、更に、彼の恐ろしさを見せ付けるのであった。


国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第7章「解決」
サセックス州バールストンの
バールストン館の主人である

ジョン・ダグラスによる告白が続く
問題の夜、彼が寝間着の上にガウンを羽織って、
邸内の見回りに行った際、書斎において、
米国から彼を追ってきたテッド・ボルドウィン(Ted Baldwin)に襲われる。
テッド・ボルドウィンは、コートから銃を取り出すと、撃鉄を起こした。
ジョン・ダグラスは、相手が発砲する前に、その銃身を握り締めると、
二人は、銃を奪い合って、格闘した。
画面左側の人物がテッド・ボルドウィンで、
画面右側の人物がジョン・ダグラス。
挿絵:フランク・ワイルズ


第2部において語られる事件について、コナン・ドイルは、米国ペンシルヴァニア州の炭鉱で起きた労働闘争とピンカートン探偵社(Pinkerton agent)の活躍を描いた「モリー・マグワイヤーズと探偵達(The Mollie Maguires abd the Detectives)」(1877年)を題材にしている可能性が高いと言われている。


第1部 / 第2部ともに、人物の入れ替わりトリックが鍵となるが、本作品がベースとなり、人物の入れ替わりトリックは、ミステリー用語として、「バールストン ギャンビット(Birlstone Gambit)」と呼ばれるようになった。


ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett:1933年ー1995年)を主人公のシャーロック・ホームズ役に据えて、英国のグラナダテレビ(Granada Television Limited)が TV ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1984年ー1994年)を制作しているものの、残念ながら、「恐怖の谷」に関しては、映像化されていない。


2023年6月4日日曜日

ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」(Hope painted by George Frederic Watts)

現在、テイト・ブリテン美術館に所蔵 / 展示されている
ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」(1886年)

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1943年)は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第32作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第21作目に該っている。

なお、タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡(5匹の子豚が登場する数え歌 → 2023年6月2日付ブログで紹介済)に因んでいる。


この子豚は、市場へ行った。(This little pig went to market.)

この子豚は、家に居た。(This little pig stayed home.)

この子豚は、ローストビーフを食べた。(This little pig had roast beef.)

この子豚は、何も持っていなかった。(This little pig had none.)

この子豚は、「ウィー、ウィー、ウィー」と鳴く。(And this little pig cried, Wee-wee-wee.)

帰り道が分からない。(I can’t find way my home.)


エルキュール・ポワロは、カーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)から再調査を依頼された事件(=彼女の母親カロリン・クレイル(Caroline Crale)が画家の夫アミアス・クレイル(Amyas Crale)を毒殺したと考えられている事件)の重要関係者である5人を順番に訪れて、当時の事情や経緯等を尋ねる。


ポワロが4番目にコンタクトするのは、セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams - 事件当時、カロリン・クレイルの異母妹であるアンジェラ・ウォレン(Angela Warren)の家庭教師)で、彼女には、マザーグースの童謡のうち、「この子豚は、何も持っていなかった。」と言う歌詞が割り当てられている。


ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」の横に掛けられている
テイト・ブリテン美術館による作品解説

アガサ・クリスティーの原作によると、ポワロがセシリア・ウィリアムズを訪れた際、彼女の部屋の壁に、「オレンジの上に座る目隠しされた少女(blind girl sitting on an orange)」の絵画が掛けられていると言う記述が見受けられる。

この絵画は、英国ヴィクトリア朝時代の画家 / 彫刻家であるジョージ・フレデリック・ワッツ(George Frederic Watts:1817年ー1904年)による「希望(Hope)」(1886年)だと思われる。


ジョージ・フレデリック・ワッツ作「希望」は、現在、テイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)に所蔵 / 展示されている。

本作品は、1889年に開催されたパリ世界万博に出品された後、テイト・ブリテン美術館のオープン年に該る1897年に、画家本人によって寄贈されている。


テイト・ブリテン美術館の作品解決によると、アガサ・クリスティーの原作で書かれている「オレンジ」とは、「地球(globe)」とのこと。地球の上に座っている少女は、目隠しされている上に、弦が1本しか残されていない竪琴を抱えているが、それでも竪琴を奏でることをまだ諦めていない姿が描かれているのである。


2023年6月3日土曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その9

英国の The Orion Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。

グローブ座(Globe Theatre → 2023年5月8日付ブログで紹介済)の
右側に建っている居酒屋(tavern)の前に、
オセロー(画面右側の人物が)と
イアーゴー(画面左側の人物)が佇んでいる。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピア作の悲劇「オセロー(Othello)」(1603年ー1604年)である。

全5幕で構成される「オセロー」の副題は、「ヴェニスのムーア人(The Moor of Venice)」で、四大悲劇の一つとなっている。

また、「オセロー」は、ボードゲームのオセロの名前の由来となっている。


居酒屋の前に居るイアーゴーは、オセローに対して、
「(オセローの)武官であるキャシオーが、(オセローの妻である)デズデモーナと不義密通している。」と、
嘘の情報を讒言している。
画面左側から、イアーゴー、オセロー、キャシオー、そして、デズデモーナ。

誇り高いムーア人(イスラム教徒)で、ヴェニスの軍隊の指揮官であるオセロー(Othello)は、デズデモーナ(Desdemona)と愛し合い、彼女の父親で、ヴェニス議会の議員でもあるブラバンショー(Brabantio)の反対を押し切って、彼女と結婚する。


オセローのことを嫌っている旗手のイアーゴー(Iago)は、オセローに気に入られた結果、自分よりも先に武官へと昇進したキャシオー(Cassio)がデズデモーナと不義密通をしていると、オセローに対して、讒言した。イアーゴーは、自分の讒言に真実味を加えるために、オセローがデズデモーナに贈ったハンカチを盗み出して、キャシオーの部屋に置き去ったのである。


イアーゴーの奸計に引っ掛かったオセローは、妻デズデモーナの貞操を疑い、嫉妬に怒り狂うと、イアーゴーに対して、キャシオーを殺すように命じる一方、デズデモーナの命を自らの手で絶ってしまう。


すると、イアーゴーの妻で、デズデモーナの召使いであるエミリア(Emilia)は、「デズデモーナのハンカチを盗んだのは、夫のイアーゴーである」ことを告白したため、怒ったイアーゴーは、妻のエミリアを刺し殺して、逃走を図った。

後に、イアーゴーは捕えられるが、真実を知って、自らの行いを深く後悔したオセローは、デズデモーナに口付けをしながら、自殺をするのであった。


ウィリアム・シェイクスピア作「オセロー」の元ネタは、ツィンツィオの「百物語(Gli Hecatommithi)」第3篇第7話にあり、


(1)

「百物語」:デズデモーナのみ、固有名が与えられているが、オセローに該る人物は「ムーア人」、また、イアーゴーに該る人物は「旗手」と呼ばれている。

「オセロー」:各人、デズデモーナ、オセロー、そして、イアーゴーと言う固有名が与えられている。


(2)

「百物語」:デズデモーナは、オセローによって、事故死に見せかけて殺される。

「オセロー」:デズデモーナは、オセロー自らの手で殺される。


(3)

「百物語」:デズデモーナを殺したことで錯乱したオセローは、イアーゴーを解職するが、後にこの罪を問われて追放されると、デズデモーナの親戚によって殺害される。

「オセロー」:真実を知って、自らの行いを深く後悔したオセローは、デズデモーナに口付けをしながら、自殺をする。


(4)

「百物語」:オセローを奸計に陥入れさせたイアーゴーは、拷問の末に死亡。

「オセロー」:イアーゴーは、真実を告白した妻のエミリアを刺し殺すと、逃亡するものの、後に捕らえられる。


等の違いはあるものの、基本的な筋は同じと言える。


バンケティングハウス入口上の外壁に設置されている
ステュアート朝第2代国王であるチャールズ1世
(Charles Ⅰ:1600年ー1649年 在位期間:1625年ー1649年
→ 2017年4月29日付ブログで紹介済)
のレリーフ -
清教徒革命(Puritan Revolution:1642年ー1649年)を経て、
1649年1月30日、バンケティングハウスの前において、
チャールズ1世の公開処刑が行われた。


ウィリアム・シェイクスピア作「オセロー」が上演された最も古い記録は、1604年11月1日にロンドンのホワイトホール宮殿(Palace of Whitehall)で行われたものである。

ホワイトホール宮殿は、英国王室の居住地として使用されていたが、1698年の火災で大半が焼失した結果、今でも現存しているのは、バンケティングハウス(Banqueting House → 2015年10月3日付ブログで紹介済)のみ。


バンケティングハウス内(上階)で
晩餐会等が開催される場所の天井から吊り下げられているシャンデリア


バンケティングハウスは、晩餐会や舞踏会等の目的で使用されているが、通常は、一般の見学者に開放されている。

バンケティングハウスは、イタリア遊学中にイタリア・ルネッサンス建築の影響を大きく受けた英国の建築家イニゴー・ジョーンズ(Inigo Jones:1573年ー1662年)が設計し、1622年に建築された。また、晩餐会や舞踏会等が開催される部屋の天井画は、フランドルの画家で外交官でもあったピーテル・パウス・ルーベンス(Peter Paul Rubens:1577年ー1640年)によって描かれている。


ルーベンスによって描かれた天井画


2023年6月2日金曜日

マザーグース「この子豚は、市場へ行った」(Mother Goose - This little pig went to market.)

アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1943年)は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第32作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズに属する長編のうち、第21作目に該っている。

なお、タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡(5匹の子豚が登場する数え歌 - 以下を御参照)に因んでいる。


タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡に因んでいる。
そして、エルキュール・ポワロが訪ねる事件の重要関係者である5人に対して、
上記の5つの歌詞が割り当てられている。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版
(→ 2020年10月25日付ブログで紹介済)から抜粋)

この子豚は、市場へ行った。(This little pig went to market.)

この子豚は、家に居た。(This little pig stayed home.)

この子豚は、ローストビーフを食べた。(This little pig had roast beef.)

この子豚は、何も持っていなかった。(This little pig had none.)

この子豚は、「ウィー、ウィー、ウィー」と鳴く。(And this little pig cried, Wee-wee-wee.)

帰り道が分からない。(I can’t find way my home.)


エルキュール・ポワロに対して、再調査を依頼したカーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)の母親カロリン・クレイル(Caroline Crale)が画家の夫アミアス・クレイル(Amyas Crale)を毒殺したと考えられている事件の重要関係者である5人は、以下の通り。


(1)フィリップ・ブレイク(Philip Blake)ーアミアス・クレイルの親友で、カロリン・クレイルに振られた過去がある。現在は、株式仲買人をしている。


画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がフィリップ・ブレイク。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(2)メレディス・ブレイク(Meredith Blake)ーフィリップの兄で、カロリン・クレイルに秘かに恋愛感情を抱いていた。現在は、隠居して、薬草の研究をしている。


画面左側から、メレディス・ブレイク、エルキュール・ポワロ、そして、カーラ・ルマルション。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(3)エルサ・ディティシャム(Elsa Dittisham)ー旧姓は、エルサ・グリヤー(Elsa Greer)。事件当時、アミアスの絵のモデルで、彼の愛人でもあった。現在は、ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)となっている。


画面左側の人物がエルサ・ディティシャム(旧姓:エルサ・グリヤー)で、
画面右側の人物がエルキュール・ポワロ。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(4)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)ー事件当時、カロリン・クレイルの異母妹であるアンジェラ・ウォレン(Angela Warren)の家庭教師だった。


画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がセシリア・ウィリアムズ。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


(5)アンジェラ・ウォレンーカロリン・クレイルの異母妹。事件当時、クレイル家に同居しており、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていた。赤ん坊の頃、カロリンがカッとなったため、片目を失明。現在は、考古学者をしている。


最初のコマにおける画面左側の人物がエルキュール・ポワロで、画面右側の人物がアンジェラ・ウォレン。
(英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」のグラフィックノベル版から抜粋)


カーラ・ルマルションからの依頼を受けて、事件の再調査を行うべく、ポワロは、上記の5人を訪れ、当時の事情や経緯等を尋ねるが、その際、各人に対して、5つの歌詞が割り当てられている。


(1)フィリップ・ブレイク: 市場へ行った(Went to Market)

(2)メレディス・ブレイク: 家に居た(Stayed at Home)

(3)エルサ・グリヤー: ローストビーフを食べた(Had Roast Beef)

(4)セシリア・ウィリアムズ: 何も持っていなかった(Had None)

(5)アンジェラ・ウォレン: ウィー、ウィー、ウィーと鳴く(Cried 'Wee Wee Wee')


「市場へ行った」とは、事件後、フィリップ・ブレイクが株式仲買人になったことを、「家に居た」とは、事件後、メレディス・ブレイクが隠居して、薬草の研究をしていることを、「ローストビーフを食べた」とは、アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人でもあったエルサ・グリヤーが、事件後、貴族と結婚して、ディティシャム卿夫人となっていることを、「何も持っていなかった」とは、事件後、セシリア・ウィリアムズが一人寂しく生活していることを、そして、「ウィー、ウィー、ウィーと鳴く」とは、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていたアンジェラ・ウォレンが、事件発生当時、彼に対して、いろいろと悪戯を仕掛けて、彼を閉口させていたことを指すのではないかと思われる。


2023年6月1日木曜日

チャールズ3世戴冠式の記念切手(His Majesty King Charles III : A New Reign)

2023年5月6日、ウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)において、英国のウィンザー朝第5代国王であるチャールズ3世(Charles III:1948年ー 在位期間:2022年ー)の戴冠式が行われ、同日、英国のロイヤルメール(Royal Mail)から、「His Majesty King Charles III : A New Reign」と言う記念切手4種類が発行されているので、今回、それらについて、紹介致したい。

The Coronation : representing the monarchy, continuity, longevity, heritage and tradition

Diversity and Community : reflecting a multi-faith community, cohesion
and the people of modern Britain


The Commonwealth : depicting an outward-looking Britain, global trade,
cooperation, democracy and peace
 

Sustainability and Biodiversity : highlighting the importance of conservation,
biodiversity and a society that works with nature