2025年12月28日日曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その18B

英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「エッジウェア卿の死」の
ペーパーバック版の表紙 -
壁紙のような背景が、リージェントゲートにある
エッジウェア卿の邸のシャンデリアの形に切り取られている。


米国からロンドン/パリ公演ツアーに来ている女芸人カーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)の舞台を観に出かけたエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)とアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings / アルゼンチンから一時帰国中 → 2025年10月12日付ブログで紹介済)の2人は、背景や衣装等を必要とせず、一瞬で顔つきや声音等を変えて、その人自身になりきる彼女の「人物模写演技」に深く感銘を受ける。第4代エッジウェア男爵ジョージ・アルフレッド・セント・ヴィンセント・マーシュ(George Alfred St. Vincent Marsh, 4th Baron Edgware)/ エッジウェア卿(Lord Edgware)と結婚している米国出身の舞台女優ジェーン・ウィルキンスン(Jane Wilkinson)の物真似に関しても、見事の一言だった。

更に、驚くことには、ポワロとヘイスティングス大尉の真後ろの席には、ジェーン・ウィルキンスン本人が、映画俳優のブライアン・マーティン(Bryan Martin)と一緒に、カーロッタ・アダムズによる自分の人物模写演技を楽し気に観劇していたのである。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


アーサー・ヘイスティングス大尉は、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ
エルキュール・ポワロの左斜め後ろに居る。

<筆者撮影>


女芸人カーロッタ・アダムズによる舞台が終わった後、ポワロとヘイスティングス大尉は、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)へと移動して、夕食をとる。その夕食の途中、ブライアン・マーティンと一緒に居たジェーン・ウィルキンスンが、ポワロの席を訪れて、内密の会話を求めた。


ストランド通り(Strand → 2015年3月29日付ブログで紹介済)に面したサヴォイホテルの玄関上部
<筆者撮影>


ジェーン・ウィルキンスンが宿泊している同ホテル3階にある彼女の部屋へと移動した後、彼女から「離婚話に応じない夫を説得してもらいたい。」という依頼を受けたポワロが、その2-3日後、リージェントゲート(Regent Gate → 2025年3月23日付ブログで紹介済)にあるエッジウェア卿の邸を訪問したところ、彼の返答は「6ヶ月も前に、離婚に同意する旨を彼女宛に手紙で既に伝えた。」とのことだった。話のくい違いに納得がいかないポワロであったが、そのまま帰宅せざるを得なかった。


エッジウェア卿こと、
第4代エッジウェア男爵ジョージ・アルフレッド・セント・ヴィンセント・マーシュの邸宅とも見間違う
ハノーヴァーテラス(Hanover Terrace)の外壁)-
リージェンツパークの西側にあり、
リージェンツパークを周回するアウターサークル(Outer Circle)沿いに建っている。
なお、リージェントゲートは、現在の住所表記上、架空の場所である。
<筆者撮影>


エッジウェア卿邸を出たその足で、ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、サヴォイホテルへと赴き、ジェーン・ウィルキンスンと面会するものの、彼女曰く、「夫からそのような手紙を受け取っていない。」とのこと。

更に、ポワロ達は、ジェーン・ウィルキンスンから、「夫との離婚が成立でき次第、現在交際しているマートン公爵(Duke of Merton)との再婚を考えている。」と告げられる。


その翌朝(6月30日の午前9時半)、スコットランドヤードのジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部(Inspector James Harold Japp)が、ポワロの元を訪れる。


ジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部は、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ
エルキュール・ポワロの右斜め後ろの位置に立っている。

<筆者撮影>


ジャップ警部から、ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、「前夜、エッジウェア卿が、リージェントゲートの自邸の書斎において、頸部を刺され、殺害された。」と知らされる。

エッジウェア卿の執事であるアルトン(Alton)と秘書であるミス・キャロル(Miss Carroll)は、「事件があった当夜の午後10時頃、ジェーン・ウィルキンスンがエッジウェア卿を訪ねて来たので、書斎へと通した」ことを証言する。

ところが、ジェーン・ウィルキンスンは、「夫が殺された当夜、テムズ河(River Thames)畔のチジック地区(Chiswick → 2016年7月23日付ブログで紹介済)内に邸宅を所有しているサー・モンタギュー・コーナー(Sir Montague Corner)が開催した盛大な晩餐会に出席していた。」と答え、また、その晩餐会に出席していた他の客達も、彼女がその場に居たことを認めた。つまり、妻で、一番疑わしいジェーン・ウィルキンスンには、アリバイがあったのだ。


筆者がチジックハウス(Chiswck)で購入した
イングリッシュヘリテージ(English Heritage)のガイドブック


ジェーン・ウィルキンスン以外にも、エッジウェア卿を嫌っていた人物は、複数居た。

一人目が、エッジウェア卿の甥であるロナルド・マーシュ(Ronald Marsh)で、 お金に困っている上に、エッジウェア卿のタイトルを狙っていた。

二人目は、エッジウェア卿の先妻の娘であるジェラルディン・マーシュ(Geraldine Marsh)で、 父親であるエッジウェア卿に追い出された後、不遇の死を遂げた母親のことで、父親を恨んでいた。


ポワロは、人物模写演技を得意とする女芸人のカーロッタ・アダムズであれば、事件当夜にリージェントゲートにあるエッジウェア卿の自邸を訪れたと執事と秘書が証言したジェーン・ウィルキンスンに成り済ますことができたのではないかと考えるが、今度は、スローンスクエア(Sloane Square → 2025年5月25日付ブログで紹介済)に住むカーロッタ・アダムズが、睡眠薬のヴェロナール(veronal)の過剰摂取により亡くなっていることが発見される。


スローンスクエアに面したホテル -
地下鉄スローンスクエア駅(Sloane Square Tube Station)の近くに建っている。
<筆者撮影>


何者かの指示に基づき、カーロッタ・アダムズは、ジェーン・ウィルキンスンに成り済まして、リージェントゲートにあるエッジウェア卿の自邸を訪れ、彼を殺害したのだろうか?

そして、それを隠そうとする何者かによって、カーロッタ・アダムズは、過剰のヴェロナールを服用させられて、殺されたのか?


(34)魚の目を切るナイフ(corn knife)



ジェーン・ウィルキンスンの依頼を受けたポワロがリージェントゲートにあるエッジウェア卿の邸を訪問した日の夜、エッジウェア卿は、自宅の書斎において、首の後ろをひと突きされて死んでいるのを、メイドによって発見される。

スコットランドヤードのジャップ警部は、ポワロに対して、「医者が言うには、普通のペンナイフによる傷ではなく、何かペンナイフに類するものの、ものすごく鋭い刃物による傷です。」と告げる。「剃刀ではないですか?」と問い掛けるポワロに対し、ジャップ警部は「ずっと小さいものです。」と答える。

ポワロが事件の関係者達の話を聞いた結果、エッジウェア卿の殺害に使用された凶器は、魚の目を切るナイフだと判明した。


(35) 鼻眼鏡(pince-nez)



スローンスクエアの住居において死亡しているのが見つかったカーロッタ・アダムズのバッグの中には、その死亡原因となったヴェロナールの箱(本人の頭文字をルビーで飾った金の小箱)と一緒に、本人の頭文字を隅に縫い取った綺麗なハンカチ、パフ、口紅、1ポンド紙幣に小銭が少々、そして、鼻眼鏡が入っていた。


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