2024年8月10日土曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その3

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2024年に発行されている「ミス・マープルの世界(The World of Miss Marple)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズの登場人物や各作品に関連した68個の手掛かりについて、前回(ミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple))に引き続き、順番に紹介していきたい。


(2)レイコック(Laycock)

ジズソーパズルの右下で、
魚のタラ(haddock)を両手で抱えているのが、庭師のレイコック。


レイコックは、ミス・マープルの庭を剪定する年配の庭師で、週に3回、ミス・マープルのコテージへやって来る。

レイコックは、ミス・マープルシリーズの長編第8作目「鏡は横にひび割れて(Mirror Crack’d from Side to Side)」(1962年)に登場する。


「鏡は横にひび割れて」の冒頭、「週に三度きてくれるレイコック爺さんも最善を尽くしてくれてはいた。ところがその最善なるものが、本来大したことではないうえに、彼の能力に応じた最善で、雇い主の標準からはほど遠いものだった。ミス・マープルは自分のしてほしいことも、それを実行に移してほしい時期についても、はっきりした考えを抱いていて、そのとおりに指図もした。すると、レイコック爺さんはいかにもわが意をえたように賛成はするものの、実行はしないという、彼独特の才能を発揮するのだった。」(橋本福夫訳)と述べられており、残念ながら、レイコックに対するミス・マープルの評価は、あまり高くないのである。


(3)チェリー・ベイカー(Cherry Baker)


ジズソーパズルの右下で、
左手にダイキリ(daiquiri)を持ち、
右手を上着のポケットに入れている女性が、
チェリー・ベイカー。


ミス・マープルシリーズの長編第8作目「鏡は横にひび割れて」(1962年)の冒頭、気管支炎に罹患して、身体がひどく衰弱したミス・マープルのことを心配したヘイドック医師(Dr. Haydock)の進言もあり、甥のレイモンド・ウェスト(Raymond West)が手配したミス・ナイト(Miss Knight)が、ミス・マープルに対して、付き添いの介護をしている。


ミス・ナイトに加えて、セントメアリーミード村(St. Mary Mead)の新住宅地へ、夫のジム・ベイカー(Jim Baker)と一緒に引っ越して来たのが、チェリー・ベイカーが、通いのメイドとして働いている。

チェリー・ベイカーが、ミス・マープルのコテージ内の清掃を、また、彼女の夫のジム・ベイカーが、その他諸々の雑事を担当する。


物語の冒頭、「チェリーは若くもあり気の優しい女」(橋本福夫訳)や「チェリーは料理人としてはてきぱきと仕事をやってのけるほうだったし、頭もよくて、電話も正確に聞きとるし、掛売りの帳面に間違いがあればすぐに指摘した。」(同訳)と述べられており、チェリー・ベイカーに対するミス・マープルの評価はそれなりに高い。

ただし、その後、「もっとも、マットレスをひっくりかえしたりする仕事は好きなほうでなく、彼女が皿を洗っているときなどには、台所のそばを通りかかっても、ミス・マープルは顔をそむけて、そちらを見ないようにしていた。チェリーのやり方ときたら、なんでもみさかいなしに流しにほうりこんで、吹雪のように洗剤をふりかけるのだから。ミス・マープルは時代のついたウスターの茶器をこっそり隅の食器棚にしまいこみ、特別の場合以外には使わないことにした。その代わりに、流しに入れて洗っても金粉が剥げ落ちたりする心配のない現代式の白地に薄灰色の模様がついた茶器を買った。」と記述されているので、チェリー・ベイカーのことを、ミス・マープルが手放しで評価している訳では、必ずしもないのである。


(4)ルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)


ジズソーパズルの右下で、
右手にカクテル(Planter's Punch)を持ち、
左手で自分の口元を押さえている女性が、
ルーシー・アイルズバロウ。


ルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)は、ミス・マープル旧知の家政婦で、若いベテラン料理人である。


ミス・マープルシリーズの長編第7作目「パディントン発4時50分(4:50 from Paddington)」(1957年)の冒頭、ロンドン市内でクリスマス用の買い物を終えたエルスペス・マギリカディー夫人(Mrs. Elspeth McGillicuddy)は、セントメアリーミードに住む友人のミス・マープルに会いに行くために、パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)発午後4時50分の列車に乗る。彼女が乗った列車は、隣りの線路を同じ方向へ走る列車に並ぶ。並走する列車のある車窓のブラインドが上がっており、マギリカディー夫人は、そこに驚くべき瞬間を目撃した。なんと、こちらに背中を向けた男が、金髪の女性の首を絞めている現場だったのである。すぐさま、マギリカディー夫人は、車掌に対して、今目撃した内容を報告した。

ミス・マープルの家を訪れたマギリカディー夫人は、彼女にも、列車内で目撃した内容を話した。マギリカディー夫人から経緯を聞いたミス・マープルは、彼女の話を信じたが、翌日の朝刊には、それらしき記事が載っていなかった。


ミス・マープルとマギリカディー夫人の2人は、地元の警察を訪ねて、事件の経緯を話したものの、警察による捜査の結果、列車内にも、線路周辺にも、該当する女性の死体は発見されなかった。

上記の結果を受けて、ミス・マープルは、殺人犯は列車内で絞殺した女性の死体を列車から投げ落としたものと考えた。そうすると、ブラックハンプトン駅の手前で線路が大きくカーブしている地点にあるラザフォードホール(Rutherford Hall)が、正にその場所だと思われた。ラザフォードホールは、現在、クラッケンソープ家(Crackenthorpe family)が所有していた。


そこで、ミス・マープルは、ルーシー・アイルズバロウ(Lucy Eyelesbarrow)に対して、クラッケンソープ家の家政婦として潜入して、マギリカディー夫人が目撃した女性の死体を探すよう依頼するのであった。

ミス・マープルの依頼に興味を覚えて、クラッケンソープ家の家政婦として採用されたルーシー・アイルズバロウは、数日後、ラザフォードホールの納屋の中にある石棺内に、マギリカディー夫人が目撃した女性の死体を発見することになる。


          

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